収益を決定するサプライチェーンの関係性

1.サプライチェーンの同期化と能力

 個々の業務スピードが高くても、そのスピード自体がバラバラだと在庫が溜まるため、機会損失が発生します。そういった機会損失は同期化の流速制御で避けることができます。企業全体のリズムビート(脈動)に異常があっては、個々が良くても全体はよくなりません。あらゆる年代で最高の人材を揃えても、その会社が必ずしも安泰だとは言えないでしょう。サッカーや野球のチーム力も、メンバー個々人の能力の総和によって決まるわけではありません。ムカデ競争でもチームのスピードは個々のメンバーのスピードの総和にはなりません。

 企業グループでみると、個々の企業の決算が良くても連結して必ずしも良いとは限りません。サプライチェーンにおけるスピード、すなわちキャッシュを生むスピードも同様です。個々の連鎖業務のスピードの総和がキャッシュを生むスピードとはならないのです。企業はサプライチェーンの同期化の促進で、キャッシュを生む仕掛けを多様なやり方で作っています。それらをモデル化し、自社のビジネスモデルを構築することが必要です。

 

2.サプライチェーンにおける自律分散

 各部門は実行するだけで、中央がすべてを計画し、各部門に指示を出すようなビジネスモデルでは組織の力を最大限発揮できません。20世紀を通じて、全体主義や社会主義の組織の弱さが実証されました。それではどんな組織が強靭な組織でしょうか。次の2つのメッセージを比べて見ましょう。

 「すべての頭脳労働は現場から企画部門に位置変えすべきである。君達に考えることを期待していない。考えることで給料をもらっている人は別にいるのだ」。これは科学的経営の元祖、F.W.テーラーが残した名言です。今でも近代的経営を指向している企業では、組織設計の原則となっています。こういったテーラー主義は、ニュートンやデカルトの流れを組み、近代科学方法論の源流である「全体をいくつかの部分に分けて問題を分析するアプローチ」の延長線上にあるのです。 

 「何の警告もなく突然、企業や産業を直撃する変化が起る今日、企業が生き残るには、一人ひとりが目や耳、頭、心を研ぎ澄まして、知識と確信に満ちた行動をするしかない」。これは複雑系のメッカ、サンタフェ研究所のマイク・シモン博士の講演で、トム・ペッツィンジャーの言葉として紹介されたものです。サプライチェーンの成功には、これら集中制御と自律分散制御の2つの考え方を知っておく必要があるのです。

 

3.1%の独立変数が収益を決める

 キャッシュベースの利益を生むためには、数ある要因間の関係性を見つけなければなりません。売上が増えないのは何故かと問うと、販売力が足らない、価格が高い、納期が遅い、...

欠品が多い、などの原因が考えられます。では欠品が多いのは何故かと問うと、生産計画が正確ではないからか、資材の納入遅延が多いからか、熟練が低いからか、などが考えられます。極めて重要なことは、モノが顧客の需要に引っ張られてサプライチェーンを流れる時に、そのスピードを決めるのが何かをみつけることです。

 エジソンは「発明は、99%のパースピレーション(努力)と1%のインスピレーション(ひらめき)である」と言いました。サプライチェーンにおける収益は「99%の従属変数と1%の独立変数によって決まる」のです。

◆関連解説『サプライチェーンマネジメントとは』

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