人財育成(その19)当事者意識について クリーン化について(その114)

 

◆ 当事者意識について

当事者意識は、私が最近気になっていることばです。重要な言葉だと思っているので、これまでも時々話題にしてきました。これは、クリーン化だけでなく、企業経営、現場の管理などどこでも重要なことです。また、会社だけで無く、政治や一般社会でも重要な言葉だと思います。

 

1. ある企業のクリーン化教育で学んだ当事者意識

昨年から今年の前半、ある企業から声がかかり、クリーン化の講演会を5回ほど実施した。主には、事例を含めたクリーン化の基礎、考え方ですが、特に大事にしたいことの一つに、“自社、自分の問題として捉える”と言うことを挙げています。つまり、聞いただけで終わりにしないと言うことです。聞いたことを自分に引き寄せて、考える、活用して欲しいのです。でもその表現では訴える力が弱かったと感じました。

 

この企業では、“当事者意識を持つ”とダイレクトに表現していました。なるほどと思いました。より自分の問題だと感じるわけです。インパクトがあるのです。言葉だけですぐに現場が変わるわけではありませんが、管理職などがそのように言うのには、あるいは言えるのには理由があります。これは、自分たちも同じく、そう思っているからです。すると日頃の考え方や行動にも現れてくるのです。あれは言っただけ、私がやるかどうかは別だと言う風になり難いのです。
 
私の言い回しでは、その時そうだと思っても、印象が薄いのではないかと思い、その言葉を使うようになりました。

 

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2.  大企業の不祥事

以前も書きました。またその他の出版物にも記しましたが、最近大企業の不祥事が続きました。また、その説明や対応を見ていると、言い訳だとか、人ごと、よそごとという雰囲気が感じられる場合があります。そして行き詰まり、会社を閉じるところも出てきています。そこには、“何のために、誰のためにものを作るのか”が見えません。ただ作っているだけなのでしょうか。その企業の創始者の思いは何だったのでしょうか。

 

私はこんな風に考えています。

良い製品品質になるよう心を込めて作り込み、お客様の喜ぶ顔が見たい。その実現のために、日頃から知識、技術、技能を磨くと言うことではないでしょうか。そこに当事者意識が芽生え、作る喜び、そして愛社製品の醸成に繋がるのではないか。作る本人(自分)の思いや心を込めることです。品質は人の質、人の質は心の質です。

 

少子化、人不足の中で入社してきた人にきちんと教育もせず、即戦力と言いながら現場に放り込む、そして成果主義で人の質を判断してしまう。これは人財ではなく、人材です。人をきちんと育てる事が、その会社の持続、繁栄に繋がるのだと思います。それで育った人たちが、会社の成長に貢献してくれるのです。これが人財育成だと思います。

 

例えば、ある人に嫌な思いをさせられたというのは、印象強く残ってしまいます。そしてその人だけでなく、その家族とも距離を置いてしまうことになるでしょう。企業の不祥事で、あるいは購入した製品で嫌な思いをすれば、その企業の製品は心理的に購入したくなくなってしまいます。ましてや大企業の場合は多くの会社が集まっています。その個々の企業は良くやっていても、それら全体に影響が出ます。ブランドイメージが連鎖的に低下、信頼を損ねると言うことです。

 

ものづくり(その他の分野でも言えます)では、作業ミスという問題にも苦労されている方も多いでしょう。例えば加工条件を間違えるミスです。

 

間違った入力でも、設備はその通り加工してしまうのです。それが大量不良生産になってしまうかも知れません。その対策として、その作業者以外の人が条件を確認する、いわゆるダブルチェックですが、これでもミスが発生してしまう。そこでもう一人チェック者を用意する。(トリプルチェックと言われます)これだけの人が確認したのだから、ミスは発生しないのだろうと推測してしまう。ところが問題が起きるのです。案外こんなミスもあるのではないでしょうか。作業者の心理では、自分だけでなく他の人もチェックしているのだから大丈夫だと思い、当事者意識から離れてしまうのです。一般に言う、盲印と同じです。結局責任のない仕事になってしまうのです。当事者意識と簡単に言っていますが、難しいことです。でもその事は避けて通らず、考えて見ましょう。

 

話は変わりますが、国民、市民のお手本になるべき公の立場の方であっても、飲酒運転は絶対にだめだと言いながら、自分はそれをしてしまうと言うケースが多いです。

 

記者会見でも、徹底します、管...

理不行き届きです、体制を見直します、などと同じことが言われます。そしてまた同じことが起きてしまうのです。これも当事者意識の欠如ではないかと思います。どうしてそうなったのか、なぜなぜ分析をしてみると、案外不足していることが見えてくるかも知れません。
 
なぜなぜ分析は、なぜを5回繰り返すとなっています。実際にやってみると、なかなか5回まではたどり着けません。でも真因にたどり着けなくても、真因に近づくでしょう。頭の中で考えることに終始せず、実際に書き出してみると、様々な問題点が見えてくるかも知れません。

 

【参考文献】 清水英範 著、「知っておくべきクリーン化の基礎」諷詠社 2023年
         同      電子版「知っておくべきクリーン化の基礎」諷詠社 2023年
         同    「日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!」諷詠社 2012年

 

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