失敗しない、ロボット導入の第一歩(その9)

 

【ロボット導入の第一歩 連載記事目次】

第9回 アシストスーツ

1.はじめに

アシストスーツとは、人が装着することで動作や姿勢を補助するものの総称で、作業支援用途での普及が進んでいます。

 

腰に悩みを持つ人は多く、大きな社会問題となっています。その問題の解決手段として、荷物を上げ下ろしする際の腰への負担を軽減するために開発されました。サポートする部位は、腰用タイプが一番多いですが、現在はその他に、腕を補助するタイプもあります。

【この連載の前回:第8回 垂直多関節型ロボットへのリンク】 

 

2.腰用アシストスーツ

荷物を地面から持ち上げるときや、重いものを地面付近の高さまで下げる作業、中腰姿勢や腰の曲げ伸ばしを繰り返す作業などは、いずれも腰に負担がかかります。労働人口が減少するなかで、腰への負担を軽減することができれば、シルバー社員や女性でも、安心して働くことができます。

 

腰用アシストスーツは競技機器などの運搬や、パラリンピックのパワーリフティング競技支援にも使用されています。

 

腰用アシストスーツには、センサーで動作を検出し、コンピューター制御によりモーターを動かす電動タイプと、バネやゴムなどの弾力を利用する非電動タイプがあります。電動タイプは、多種のアシストや自動パワー調整により、さまざまな動作・作業をスムーズに支援します。動力源はバッテリーで、連続稼働時間は4時間程度です。

 

図1 電動タイプアシストスーツ(ATOUN MODEL Y)

 

非電動タイプは、一方向のアシスト力で単純作業を支援するものです。駆動はバネやゴムの反力なので、電池は不要ですが、使用前に空気を入れるなど、準備を要するタイプもあります。

 

図2 非電動タイプシストスーツ(イノフィス Every)

 

図2は、空気入れで空気を注入し、膨らんだ人工筋肉の反発力でアシスト力を発揮します。

 

ソフトフィットとタイトフィットの2種類があり、ソフトフィットは、35度にかがんだ状態から補助力が発生し、少しかがむ作業には不向きですが、荷物の持ち運び作業などには適しています。一方タイトフィットは、少しかがんだ状態から補助力が発生するので、介護でのベッドメイクや清潔介助などの中腰姿勢の保持に向いています。

 

3.腕用アシストスーツ

図3は、図2の腰用アシストスーツに腕アシストユニットを追加したモデルです。指先のセンサーにより、搭載されたモーターがリストホルダーに取り付けたワイヤーを巻き取り、⼿⾸を引き上げます。幅広の板状の荷物や袋状の荷物運搬などでの、腕の筋肉へのアシストをします。

 

図3 腕用アシストスーツ(ATOUN Kote)

 

4.上腕、肩用アシストスーツ

上向き作業による上腕、肩への負担を軽減するためのアシストスーツもあります。労働災害の中で報告事例の多い上肢災害は、完全復帰が難しく、特に肩関節障害は、職業寿命を縮める可能性が大きいため、予防措置が必要です。そこで、腕を上げ続ける作業の補助を目的としたアシストスーツが開発されました。腕を上げる動作をすると、アシストが発生して腕が持ち上がり、上向きで保持されるため上腕作業の負担が軽減されます。

 

図4 上腕、肩用アシストスーツ(レント TASK)

 

5.パワードスーツ

装着することによって、アシストするだけではなく、非常に重いものを持ち上げるなど身体能力や作業能力を高め、通常は不可能なことをできるようにするパワードスーツというものもあります。図5のパワードスーツは、最大200ポンド(約90kg)の荷物を安全に持ち上げられるように補助します。このパワードスーツは、装着者が体を痛めたり怪我をしたりすることなく、重いものを持ち上げることができます。見た目はまるでSF映画のようですが、このようなパワードスーツも、肉体労働が多い建設現場などで実際に使われています。

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ホットスワップ(電源が入ったままでの交換)対応バッテリーを搭載しているため、最大8時間にわたって連続駆動できます。自由度は24あり、装着したまま普通に動けるので、歩いたり、腕を頭の上に上げたり、しゃがみ込んだりしても、動きを妨げることがありません。

 

6.検査作業

高精度なセンサーと高い情報処理能力によって、ロボットを使って製品チェックを行うこともできます。製品の検査も人為的ミスが発生しやすい作業です。センサーを活用すれば、人の目では判別できない要素も検出できます。これまで、人による目視で行っていた製品の検査も、ロボットを導入することによって品質が向上します。

 

図5 パワードスーツ(Sarcos Robotics Guardian XO)

 

次回は、無人搬送ロボットについてご説明します。

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