クリーン化の進め方 クリーン化について(その41)

 

 

 クリーン化のことを色々解説してきましたが、これらの多くはクリーンルームに関わることです。そのクリーンルームのことを理解していないと、クリーンルームを良い環境にし、維持していくことができません。

 

図1.クリーン化の進め方 クリーンルームとは(定義)

 

 取引先からの依頼で、現場をクリーンルームにしたけれど、お金がかかるのに、品質や歩留まりが向上しないという話を聞きます。クリーンルームにすれば、歩留まりが向上するという神話だけでは効果は出ません。そのクリーンルームにふさわしい管理をすることが重要です。

 【クリーンルームの定義】

 「空気中のゴミ・異物・差圧・温度、湿度・気流の分布とその形状と速さなどを、一定の範囲に制御するために積極的に措置を講じている部屋のこと」です。少し面倒な、理論的な表現ですが、ここに記されている一つ一つに着目し、管理していく必要があります。空気中の、とあるのは、もちろんクリーンルームの中のことです。いくつか拾って説明します。

(1)差圧について

 差圧とは、クリーンルームの室圧とクリーンルーム外の圧の差のことです。一般的なものづくりのクリーンルームは、外よりも室圧を高めに設定しています。室圧が高い(陽圧、正圧とも言います)ということはゴミが寄ってこない。つまりクリーンルーム内にゴミが入りにくいということです。

 参考ですが、これとは逆に設計されているクリーンルームもあります。例えば、怖い病原菌を研究しているところです。ここでは外よりも室圧を下げて(陰圧、負圧とも言います)います。万が一、室圧が高かった場合は、外に流れる気流に含まれた病原菌が、一緒に流れ出て、外にいる人が感染してしまうからです。

 話を戻します。ものづくりのクリーンルームは室圧を高くしています。この状態が保持されていると、室内の気流は外に流れます。パーテーションで簡易にクリーンルーム化したところもいくつか見ましたが、施工の不具合で、接続部分に隙間や穴があるところもありました。

 こうなると、設計以上に空気が漏れるので、エネルギーの損失にもなります。またそれらの箇所は、たとえわずかな空気の漏れであっても、虫にしてみると大きな情報です。その空気を遡って、クリーンルーム内に入ってきます。夜になれば、室内の照明(紫外線*)に向かい、その隙間からクリーンルーム内に入ってしまいます。(*虫の紫外線への直進性:海外の事例—ドアの穴あきのところで触れます)

 そのようなクリーンルームを診断すると、まれに虫も見かけます。例えば、部屋の隅の天井付近にクモの巣があるのを見かけたこともあります。餌がないので、やがては死んでしまうのですが、死骸が粉になって飛散するのです。それらが、クリーンルームを汚すことに繋がります。

 室内の空気は、壁についているダンパーや、ドアの隙間など様々なところから室外に流出します。つまりそこは空気の通り道です。流れ出る空気に含まれている埃などがこのダンパーやドアに付着します。ダンパーやドアの隙間は、外側から観察すると、その汚れが良く見えます。まったく清掃がされないと、埃が固まりに...

なってしまっています。停電などの瞬間的な衝撃で、脱落する場合もあります。

 二次更衣室のドアでは、下の方に空気の換気口のようなものが付いている場合があります。ここも空気の通り道なので、その隙間を布切れなどで拭いてみると汚れ具合がわかります。ドアに付着した埃は外側から懐中電灯で斜光で観察すると、広範囲に付着しているのが確認できる場合もあります。クリーンルーム内は奇麗な部屋ではなく、これだけの埃が発生し、日々様々な隙間を経て、室外に放出されているのです。観察力を高めていくと、様々な発見があるでしょう。

 

 次回に続きます。

                     

◆関連解説『環境マネジメント』

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