疲労破壊、残留応力 金属材料基礎講座(その48)

 

 

1. 材料の硬さと疲労破壊

 材料の硬さが疲労破壊に与える影響は大きいものです。

 硬さとは材料表面が異物などによって変形やキズがつく時の変形のしにくさ、キズのつきにくさ、ということができます。つまり表面が硬い材料ほど変形やキズがつきにくく、軟らかい材料ほど変形やキズがつきやすいといえます。

 硬い材料と軟らかい材料の違いを図1に示します。表面の変形やキズは疲労において応力集中につながります。そうすると、軟らかい材料ほど変形やキズによって応力集中を起こしやすく、疲労破壊の起点ができやすくなります。また、硬ければ変形やキズも起きにくくなり、応力集中しづらく、すべり帯も発生しにくくなります。また硬さには、表面の変形やキズだけでなく、割れの進行にも影響します。硬い材料ほど割れの進行が遅く、軟らかい材料ほど割れの進行が速くなります。

 

図1.硬さとキズの深さ

 

2. 疲労と残留応力

 疲労強度を向上させるために圧縮残留応力を付与することは有効です。それは圧縮残留応力が働いていると、材料に割れが発生した時、割れを押さえつけるように材料自身が働くからです。圧縮残留応力を付与する方法として、ショットピーニングや高周波焼入れがあります。これらの方法は圧縮残留応力の付与だけでなく、硬さも向上します。

 そのため、疲労強度向上のためによく使用されます。ここで一つ注意点があります。残留応力には圧縮の他に引張もあります。もし引張残留応力が付与されていたら、割れが発生した時に、割れを自ら広げて破壊しやすくなります...

。圧縮残留応力と引張残留応力の違いについて図2に示します。溶接や塑性加工などで引張残留応力が付与されるときは注意が必要です。引張残留応力の緩和には熱処理によるひずみ除去などが有効です。

 

図2. 疲労と残留応力

 

 次回に続きます。

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

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