顧客の代弁者になろう クレーム対応とは(その44)

 
  
 
 前回のその43に続いて、解説します。
 

1. 改革の先延ばしは顧客離れを誘発する

  【クレーム対応心得】

 
 お客さま相談室のスタッフが間違えやすい認識の一つに、「手段と目的の混同」があります。わかりやすく説明すれば、お客さま相談室が顧客の立場に立って、誠意ある姿勢で速やかに問題を解決することが、相談室の目的ではないということになります。
 
 唐突にそのようなことを言うと、毎日問題解決に奮闘、邁進しているスタッフから自分たちは毎日、顧客が抱えるクレームや問題を解決するために粉骨砕身しているのだ、と。「クレーム」がくるかもしれません。
 
 しかし、少し冷静になって本質を考えて下さい。確かに相談室のスタッフは顧客が抱える問題を解決する重要な使命を負っています。それは、正しいのです。だが、私はこう考えています。
 
 スタッフが顧客の問題を解決するのは、決して目的ではなく、顧客満足の向上をもたらすための手段ではないだろうかということです。相談室のスタッフが目指すべき目的は、あくまでも顧客満足の向上にあるのであって、個々の問題を解決することは、満足度向上の手段なのです。相談室はつねに顧客満足の向上を見据えながら、日々の業務に邁進していかなければならないのです。
 
 顧客満足の向上を目指す業務には、つねに進化が求められます。製品開発と同様に、顧客に提供するサービスやビジネスの実践に終着点はないのです。「我が社は最高のサービスを提供している」と思い込んだ瞬間から、サービス精神は腐り始め、顧客の立場から意識が離れていってしいます。サービスやビジネスは、つねに進化しなければならないのです。
 
 この大原則を理解するとき、忘れてならないことは、進化の状況を客観的に把握する方法を確立するということです。改善・革新結果を数値化しベンチマークする方法は、進化の状況を認識するために極めて有効な取り組みです。
 
 顧客に提供するサービスのレベルを数値化し、何かできて何かできていないのかを一目でわかるように整理すれば、ある日突然問題が起こっても、どのレベルのサービスに欠陥があったのかがたちまち判明します。
 
 判明した欠陥を改善する際にも、改善が完璧になされたか否かは、客観的な数値によって判定できるでしょう。数値化する際のポイントは、評価の差が明確になるように数値化していくことです。
 
 数値化の有効性は、サービス改善だけでありません。お客さま相談室スタッフの教育研修を実施する場合でも、研修目標を数値化して各人の到達度を客観的に表すことができれば、スタッフの学習レベルが容易に判断できます。
 
 たとえば、学習レベルが不十分と判断されたスタッフに対しては、個別の重点教育を施して、一定レベル以上の業務スキルを身につけてもらうことも可能でしょう。ただ感覚的に「彼はまだ仕事に...
慣れていない」とか、「もう少し商品知識が持てるようになればよいのだが」と判断し、漠然と指摘するだけでは、決して個人の業務スキルは向上しません。仕事に慣れるとは、何かどのようにできることなのか。商品知識を身につけるとは、具体的に何をどれだけ知ればよいのか。そうしたスタッフの疑問に対して、客観的に数値目標を示しながらキャリアアップを促していくことで本人の自覚や達成意欲が刺激されます。また、定性データの定点観測を活用することで、前回調査と比較したベンチマークも活きることになります。
 
 次回に続きます。
 
 【出典】武田哲男 著 クレーム対応、ここがポイント  ダイヤモンド社発行
            筆者のご承諾により、抜粋を連載
 

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