顧客の代弁者になろう クレーム対応とは(その41)

 
  
 
 前回のその40に続いて、解説します。
 

1. 改革の先延ばしは顧客離れを誘発する

 

  【クレーム対応心得】

 
 
 お客さま相談室改革に着手するとき、最初に越えなければならないハードルは、相談室の位置づけを明確にすることです。お客さま相談室とは何か。という問いに、明確な答えを導き出せないようでは、顧客にとって魅力的な相談室など、作れるはずがないのです。
 
 考えてみれば、企業の論理と顧客の論理が最前線で交錯するお客さま相談室は、実に微妙な組織といえるかもしません。相談室が抱える多くの問題は、企業と顧客の「交点」で解決されていきます。
 
 企業と顧客の思惑が複雑に絡み合う交点に立たなければならない相談室のスタッフは、自分たちの軸足の置き場所に、ふと迷うことがあります。問題を顧客寄りに判断すれば、会社に損失を与えるのではないのか。問題を会社寄りに判断すれば、顧客を切り捨てるのではないのか。
 
 相談室の業務をまじめに考えようと努力するスタッフほど、自らのスタンドーポイントが見えなくなってしまいます。だが、相談室及びスタッフが目指すべき姿は、一つしかありません。お客さま相談室は、つねに顧客の代弁者であると認識することです。なぜなら、お客さま相談室の使命は、第一に「顧客満足の創造」にあるからです。
 
 お客さま相談室が、顧客の代弁者であるためには、何をすべきなのか。私は、顧客の声に耳を傾けて、顧客の姿を謙虚に知ることに尽きると確信しています。よく、顧客の声を聞く手段として、マーケットリサーチを活用することがあります。私も企業の経営者に対し、マーケティングの必要性を繰り返し説いてきましたが、臆病な経営者に限って、異口同音に言います。
 
 「マーケットリサーチの必要性は十分理解しているのですが、弊社のような企業規模ではリサーチにかける予算がありません。資金があれば、すぐにでも実行したいのですが……」
 
 「予算がない」のではなく、「やる気がない」と思わせる発言です。昨今の厳しい経営状況を生き残るために、無計画なコストダウンに狂奔する経営者の口癖は、つねに「予算がない」です。しかし、この連載の読者は次に示す鉄則をしっかり理解して、力強く顧客分析に踏み出して下さい。
 

 「顧客の声は500人に集約される」

 
 企業が自社の顧客の声を聞き取るとき、必要な顧客数は、ミニマムで500人です。かつて、リサーチデータを活用した「クイズ100人に聞きました」というTV番組がありましたが、さすがに100人程度のリサーチでは、バランスのとれた顧客の声として基準にすることはできません。
 
 ところが、ミニマムで500人の声を集められれば、統計的に見てほぼ全顧客が抱いている共通認識やウォンツを浮かび上がらせることが可能になります。
 
 何も、特別な予算を計上して、専門機関を動員しながら、大々的に数千人規模のリサーチをする必要はないのです。コツコツと500人の顧客にアプローチして、1人ひとりの声を...
丁寧に拾い集めることで、ほぼ正確な顧客分析ができるのです。
 
 お客さま相談室がキャッチすべき顧客の声は、ミニマム500人。このマーケティングの大鉄則を武器に、優れた「顧客の代弁者」を育成して下さい。
 
 次回に続きます。
 
【出典】武田哲男 著 クレーム対応、ここがポイント  ダイヤモンド社発行
            筆者のご承諾により、抜粋を連載
 

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