事例に見る連関図法による混沌解明のノウハウ 新QC七つ道具:第3章 連関図法の使い方(その11)

前回の第3章 連関図法の使い方(その10)に続いて解説します。
【目次】
序論   ←掲載済
第1章  混沌解明とN7(新QC七つ道具)←掲載済
第2章  挑戦管理とN7の選択←掲載済
第3章  連関図法の使い方 ←今回
第4章  親和図法の使い方  
第5章  マトリックス・データ(MD)解析法の使い方
第6章  マトリックス図法の使い方
第7章  系統図法の使い方
第8章  アロー・ダイヤグラム法の使い方
第9章  PDPC法の使い方
第10章 PDCA-TC法の使い方
 

新QC七つ道具:第3章 連関図法の使い方

 

 

 
前回に続いて、3.3 事例に見る連関図法による混沌解明のノウハウ、から解説を続けます。
 

3.3 事例に見る連関図法による混沌解明のノウハウ

 

3.3.1 既公表連関図を起点とした創作セミドキュメンタリー事例

 
 前節において、スタッフワークレベルのテーマに対する連関図法の使い方を14のステップに従って詳細に説明しましたが、どうしても文章だけでは伝えきれないものが残ります。その点を補い得るのが事例紹介ですが、前述したようにスタッフワークレベルのテーマの場合は、内容の核心が企業秘密に属するため全貌の紹介がなされず、ここでいう事例紹介の意味をなさないことになります。
 
 そこで今回、既公表連関図を起点とした創作セミドキュメンタリー事例による解説を試みました。創作に当たっては、ノウハウの説明が網羅されることを優先しつつ、内容も実務的にしかるべきレベルを維持するように努めましたが、至らぬ点は、読者のご賢察により真意お汲み取りの上、労を多としてご容赦願います。
 

3.3.2 活用事例の説明

 

(1) 起点とした事例の背景

 
 この事例は、N7研のお手伝いをしていたとき、連関図の宿題に対する研究生の発表会で遭遇したものです。テーマは、“なぜクレームが減らないのか?”で、発表者は素材業界のトップメーカーからの参加者で、肩書きは、生産技術部の課長です。
 

(2) 事例説明の起点として採用した理由

 
 当時(昭和56年ごろ)筆者は、まだスタッフワークに対する連関図法の効用を十分把握しきれておらず、研究会での諸発表も同様でありました。そんな中、この発表には“連関図法によってはじめて問題の核心に触れることができたに違いない”と思わせるものがありました。
 
 というのは、連関図に示されたデータそのものはありふれたものであるにもかかわらず、発表された結論は筆者をさもありなんと思わせるものであり、その結論を聞いたあと改めてデータを見ると、そこにはなるほどと思わせるニュアンスが感じられたのです。
 
 しかし、発表で示された連関図からどのようにして結論が引き出されたのかは説明を聞いても分からず、連関図法の効用に対して半信半疑の念に駆られ、せっかくの結論に疑念が残ったのが残念でした。
 
 そこでその週末、筆者がその連関図のさらなる熟成に挑戦してみたところ、発表者の結論に対して確信を持って納得することができたのです(後年熟成度指数の考えを確立できたときチェックしたところ、オリジナルがk=1.45であったのに対し、筆者が納得を得られた連関図はk=1.95まで熟成度がアップしていました)。
 
 そして、結論と連関図との関連づけについても、後述するように筆者なりにまとめることができたのですが、そこには手法が備えるべき普遍性を伴った説得力は求むべくもなく、悔しい思いをしたことを覚えています。
 
 その思いがその後の課題を生み、最終的に表3-3に示した「連関図からの結論引き出しをガイドする6種類のカード」の開発につながったといういわくつきの事例だったので、今回その後の研究成果を集大成するための起点事例として最適と考えた次第です。
 

(3) オリジナル連関図について

 
 今回の説明の起点となる“オリジナル連関図”を再現したものが、図3-3で、これからだいたい次のことがいえます。
 
 図3-3 連関図「なぜクレームが減らないのか」オリジナルの再現(1次熟成結果)k=1.45           
   【 画 像 ク リ ッ ク で 拡 大 】

① 二重線は01と02が同体であることを示す。(発表者の説明)

 
 筆者が熟成を重ねた結果、最終的には、追加カードで処理した方がふさわしいとの結論に至ったのですが、手法の活用に際し、このように既存のルールにとらわれず、独自のやり方を柔軟にトライする姿勢は共感をもって評価します。
 

② 矢線の交錯が少なく見やすい。

 
 経験的にいって、かなりの時間をかけて何回も描き直さないと、これだけすっきりしたレイアウトにはならないでしょう。おそらくその努力が、k=1.45で核心を突いた結論を導くのにかなり貢献したのではないかと思われ、一見本質から離れているように思える“連関図を見やすくする作業(清書)”の意義を改めて見る思いです。
 

③ 熟成度k=1.45で結論が核心を得ている。

 
 事例のほとんどがk=1.1~1.2であった当時では格段に高い熟成度ですが、前述のガイドライン(k=1.8)には及ばないのです。これは、②で説明した取り組み姿勢あってのこととは思いますが、デ-タの背景を十分把握している解析者の場合、“核心を把握するだけ”なら、この熟成度でも可能ということです。
 

④ テーマカードへの矢線が多過ぎる。

 
 これは、解析者が核心を把握できたと感じた時点で、矢線をテーマカードに結線させてしまい、さらなる追求はなされなかったものと思われます。テーマカードをレイアウトせずにガイドラインk=1.8に挑戦する“Step 6”の必要性が再確認されるところです。
 

⑤ 結論と連関図の関連が分からない。

 
 この点は、当時の筆者にとって、連関図法に関する大きな悩み・疑問でした。ただ、この発表で、連関図法独特の効用を直感できたので...
、この連関図をさらに追求してこの疑問に挑戦してみたいという強い動機づけを受けました。
 
 この上述の強い印象が、その週末の熟成度アップ挑戦を促し、結果としてその後の事例体験を通じて前節でご紹介した14ステップ展開をものにすることができたわけで、その意味で、この出会いは感謝の極みです。
 
 ただ、そのとき強く感じたのは、この作品を見逃がさなかったアンテナの感度の大切さです。そして、それは常日ごろから課題を持ち、その真髄把握を求めてやまぬ探求心があったからこそだと肝に銘じ、その後も心しています。
 
 次回は、(4) オリジナル連関図の筆者による2次熟成から解説を続けます。
 
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