イノベーションの創出 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その124)

更新日

投稿日

技術マネジメント

 

今回も「切り取った知識の重要部分を発想するフレームワークを使って、イノベーションを発想する」にもとづき、日々の活動の中でどうイノベーションを創出するかについて、解説します。

1. 前提が変われば結論も変わる

前回は、いつも1+2=3が正しいとはかぎらないという解説をしました。もちろん1と2を足せば答えは3ということ自体は、誰にとっても正しいことです。しかし、そもそも今回の結論を出すために、1と2を前提とするということが正しくない場合もあるからです。

 

2. ロジックは誰にとってもいつも正しい

今、ロシアのプーチンが、ウクライナを攻めていることが世界的な問題となっています。大きな災禍をもたら戦争を始めたプーチンは狂人である、などの意見も出ています。しかし、私はプーチンは狂人ではないと思います。戦争を起こせば大きな災禍をもたらし、世界各国から大きな非難の対象となるというロジックは、プーチンにも明確に分っている筈です。

 

しかし、プーチンと西側の人間の思考の違いは、その前提です。プーチンは旧ソ連が持っていた大ロシアの実現が、西側の人間から狂人と言われようと、戦争犯罪人と言われようと、自分の人生にとって極めて重要と考えていることです。しかし、西側の人間にはその重要性は、思考の前提としていません。

 

ここで重要なことは、ロジックは普遍的なもので、いつも誰にとっても正しいものです。しかし、その前提には大きな相違が生まれやすいということです。つまり結論の正しさを評価する上で、多くの場合、問題はそのロジックではなく、その前提にあるということです。

 

3. 前提が正しいかを確認する方法は観察が必要

なぜそのロジックではなく、前提に問題があるのでしょうか。それは、ロジックの方は、筋が通らなければロジカルではないということが自分の思考でわかります。しかし、前提の方は、それが正しいかどうかを判別することは、自分の思考のみでは困難であるからです。

 

たとえば、奈良時代に、日本を構成する大きな島は何かと問われ、明確に蝦夷地、本州、四国、九州であると断言はできなかったと思います。

 

前提が正しいかどうかを判別するには、そこには必ず観察が必要です。この日本を構成する大きな島の例に関しては、周辺地域を探検して観察しなければなりません。

 

4. 小イノベーションを起こすには前提を常に問い直せ

しかし、日々の生活の中で、い...

技術マネジメント

 

今回も「切り取った知識の重要部分を発想するフレームワークを使って、イノベーションを発想する」にもとづき、日々の活動の中でどうイノベーションを創出するかについて、解説します。

1. 前提が変われば結論も変わる

前回は、いつも1+2=3が正しいとはかぎらないという解説をしました。もちろん1と2を足せば答えは3ということ自体は、誰にとっても正しいことです。しかし、そもそも今回の結論を出すために、1と2を前提とするということが正しくない場合もあるからです。

 

2. ロジックは誰にとってもいつも正しい

今、ロシアのプーチンが、ウクライナを攻めていることが世界的な問題となっています。大きな災禍をもたら戦争を始めたプーチンは狂人である、などの意見も出ています。しかし、私はプーチンは狂人ではないと思います。戦争を起こせば大きな災禍をもたらし、世界各国から大きな非難の対象となるというロジックは、プーチンにも明確に分っている筈です。

 

しかし、プーチンと西側の人間の思考の違いは、その前提です。プーチンは旧ソ連が持っていた大ロシアの実現が、西側の人間から狂人と言われようと、戦争犯罪人と言われようと、自分の人生にとって極めて重要と考えていることです。しかし、西側の人間にはその重要性は、思考の前提としていません。

 

ここで重要なことは、ロジックは普遍的なもので、いつも誰にとっても正しいものです。しかし、その前提には大きな相違が生まれやすいということです。つまり結論の正しさを評価する上で、多くの場合、問題はそのロジックではなく、その前提にあるということです。

 

3. 前提が正しいかを確認する方法は観察が必要

なぜそのロジックではなく、前提に問題があるのでしょうか。それは、ロジックの方は、筋が通らなければロジカルではないということが自分の思考でわかります。しかし、前提の方は、それが正しいかどうかを判別することは、自分の思考のみでは困難であるからです。

 

たとえば、奈良時代に、日本を構成する大きな島は何かと問われ、明確に蝦夷地、本州、四国、九州であると断言はできなかったと思います。

 

前提が正しいかどうかを判別するには、そこには必ず観察が必要です。この日本を構成する大きな島の例に関しては、周辺地域を探検して観察しなければなりません。

 

4. 小イノベーションを起こすには前提を常に問い直せ

しかし、日々の生活の中で、いつも周辺を広く観察するなどはできません。従って、大イノベーションの原料となる小イノベーションの質と量を拡大するには、常にその前提を問い続けるという姿勢を持ち、思考を広げることが重要となります。

 

そのためには、以下の4つの点を常に思考することが必要です。

 

  • 正しい前提は何かを問う
  • その前提の変化の可能性を考える
  • その他の前提を考える
  • それら前提の軽重を評価する

 

次回に続きます。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
クレーム率シングルppmをゼロに(8) 【快年童子の豆鉄砲】(その63)

  【連関図法で把握した原因に対する対策実施】(前弾からの続き) 【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その62)へのリンク】 【連...

  【連関図法で把握した原因に対する対策実施】(前弾からの続き) 【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その62)へのリンク】 【連...


活動で考慮すべきこと 1 開発効率を上げる(その6)

【開発効率向上の重要性 連載目次】 製造業の生産性 開発効率向上の重要性 開発効率向上活動の考え方 開発効率向上、活動計画 1  ...

【開発効率向上の重要性 連載目次】 製造業の生産性 開発効率向上の重要性 開発効率向上活動の考え方 開発効率向上、活動計画 1  ...


クレーム率シングルppmをゼロに(10) 【快年童子の豆鉄砲】(その65)

  【連関図法で把握した原因に対する対策のまとめ】 【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その64)へのリンク】 【連載記事】・新Q...

  【連関図法で把握した原因に対する対策のまとめ】 【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その64)へのリンク】 【連載記事】・新Q...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
設計者の流出防止策は 中国企業の壁(その21)

        前回、中国企業の設計者には、設計者としての考え方、知識、経験、どれもが不足している。そのために設計に起因する不良が発生し大きな問題に...

        前回、中国企業の設計者には、設計者としての考え方、知識、経験、どれもが不足している。そのために設計に起因する不良が発生し大きな問題に...


技術系リーダーとして身に付けておくべきスキルとは

        企業の成長のためには、従来の事業の延長線上に留まることなく、積極的に新製品や新規事業の創出、...

        企業の成長のためには、従来の事業の延長線上に留まることなく、積極的に新製品や新規事業の創出、...


設計部門の課題と原因分析(その2)

【設計部門の課題と原因分析 連載目次】 1. 設計部門の現状を正確に特定する 2. 課題分析と課題の根本原因除去 3. 設計部門用に用意したコン...

【設計部門の課題と原因分析 連載目次】 1. 設計部門の現状を正確に特定する 2. 課題分析と課題の根本原因除去 3. 設計部門用に用意したコン...