マグネシウム電池 :新環境経営 (その33)

 新環境経営への取組みについての話題を提供するに当たり、経済成長に邁進してきた中で発生した公害の歴史、CSRの取組の変遷、環境マネジメントシステム、有害物質管理の現状、エネルギーマネジメント、エコを経営に活かす、について紹介しました。その後、省エネ、創エネ、畜エネ、更にそれらをICTの活用により実現したスマート関連の紹介をして前回で終了しましが、畜エネのところでマグネシウム電池の紹介が漏れていたので、今回、解説します。
 

1. マグネシウム空気電池

 マグネシウム空気電池は1次電池であり、充電タイプの2次電池では有りません。マグネシウム電極の間に水や汚水を流すことで発電できる技術です。一次電池のため、創エネの範疇ですが、災害時などに、汚水や水を流し込むことで発電でき、必要な時に電気を取り出すことが出来るオンデマンド(需要対応)の性格を有しています。電池を蓄えておくことが出きる蓄電池ではありませんが、何時でも電気を創れるので、「蓄電」と同等の機能があります。マグネシウム空気電池(燃料電池とも言う)は金属空気電池の一種で、負極にマグネシウム:Mgを、空気中の酸素を正極とする1次電池。Mgが水酸化物イオンと結合し電子を放出する現象を利用しており、使い終わると負極のMgは水酸化Mgとなります。使用済みのMg空気電池を再利用するには、水酸化Mgを還元してMgに戻す必要がありますが、この還元を砂漠の太陽エネルギーを使って熱還元してリサイクルしようという構想があります。
 
 使い終わった水酸化Mgを回収して砂漠でMg電極として使えるよう精錬しようというものです。砂漠の豊富な太陽光を、凹面の反射鏡で集光して高温を得る太陽炉として活用するのです。還元されたMgを日本に運び、再び1次電池として使用します。1200℃程度の温度が得られれば国内でも熱還元は可能です。実際に直径1.5m程度の太陽炉を使って使用済みの水酸化Mgを金属Mg箔として回収する実験を行っています。国内の工場やゴミ焼却場の排熱、バイオマス燃料などでも熱還元できる可能性があります。
 

2. マグネシウム充電池

 マグネシウム充電池の研究開発が進められており、京都大の内本喜晴教授から、安価なマグネシウムを用いて、リチウムイオン充電池の10分の1以下の材料費で、同等以上の電気を蓄えられる充電池の開発に成功したとの発表がありました。既存のリチウムイオン充電池の多くは、高価なレアメタル(希少金属)のリチウムやコバルトを電極に用いるため高価です。リチウムの代わりにマグネシウムを使う試みは以前からありますが、充電時に電極の表面に被膜が...
でき、うまくいかなかったようです。内本教授らは、負極に純粋なマグネシウム、正極にマグネシウムと鉄などの化合物を採用しました。電極間を満たす電解液にもマグネシウムを含む溶液を使うことで、電極に被膜をできなくすることに成功しました。コバルトも不要ということです。電池の電気を蓄える容量は、同じ大きさのリチウムイオン充電池を上回りましたが、取り出せる電圧が低いのが難点で改良が必要のようです。内本教授はリチウム電池に代わる安価な充電池としての実用化を目指されています。
 
 次回は、これまでに紹介してきた基本的な環境経営の話を踏まえ、最新の動きを解説します。
 

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