環境マネジメントシステムに伴う潜在的な利益とは

 環境マネジメントシステム規格のISO14001:2015は、1996年に発行され2004年に小変更があった以降の変更です。品質マネジメントシステム規格など多くの規格と統合して運用できるように、規格の要求事項の並び方が他のマネジメントシステム規格と整合されています。
 
 環境マネジメントシステム規格の「03成功のための要因」において、「中でも戦略及び競争力に関連ある機会を活用することができる」と記載されています。規格要求事項の5.1リーダーシップには、「組織の事業プロセスへの環境マネジメントシステム要求事項の統合を確実にする」とあります。
 
 通常の業務活動に環境マネジメントシステム規格を取り入れるということは、文書や記録作成のためのコピー用紙の管理だけでなく、製品の仕様や特徴に戦略及び競争力をもたらす有益な環境影響を明確にすることが含まれてくるのです。
 
 環境マネジメントシステムを事業プロセスに統合させる為に、規格が定義する“環境”を確認すると注記2に「“とりまくもの”は、生物多様性、生態系、気候又はその他の特性の観点から表されることもある。」と記しています。この“表されることもある”の意味することは、“とりまくもの”は他にもあり、生物多様性、生態系、気候で表されるだけでないことを意味していると読み取ることができます。
 
 その他の表記を探すために広辞苑の“環境”を見ると「自然的環境と社会的環境とがある」と記載されています。規格の定義する“環境”の組織をとりまく大気・水・土地・天然資源・動植物が自然的環境となります。組織をとりまく人及び人と相互に関係する自然的環境が社会的環境といえます。
 
 このことから製品又は活動又はサービスの要素の環境側面は、社会的環境である製品の仕様や特徴及び、業務活動の工程や作業の内容も含まれてきます。顧客に提供するサービスは製品に含まれていると考えるならば、間接業務をサービスに当てることが適切となり社会的環境が生じます。会社と大気や水といった自然的環境も、管理しなければならない場合もあります。
 
 事業プロセスに統合された環境マネジメントシステムは、ISOの為の活動がない、シンプルで効率的なものにすることが期待されます。環境マネジメントシステムは事業活動の3つの要素である、製品や生産活動及び間接業務の優先順位を定めて、目標を設定し、達成していく為の規定を定めているものとなります。
 
 製品の競争優位を得るために仕様・特徴で、例えば市場競争で優位性を確保する為に省エネ性能を向上させると決定することなどがあります。生産活動では、次工程や顧客への納品に影響が大きいクリティカルパス工程を特定したり、製品の性能に与える影響が大きい部品の特定などあります。また、食品加工会社で生じたように、外部からの虫や異物の混入を防止するための工程や活動の決定が該当してきます。
 
 会社を取り巻く人(次工程や顧客並びに消費者)との間にある社会的環境は、「“とりまくもの”は、生物多様性、生態系、気候又はその他の特性の観点から表されることもある。」の他にあるものとなります。食品加工会社で混入した虫や異物は自然的環境とかかわりで生じ、異物が購入した製品に対して消費者のとる行動が社会的環境といえます。
 
 間接業務は会社内の人に対しての業務と社外の人に対して行う業務が考えられます。例えば、設備機械のメンテナンス計画は重点機械を定めて予防保全を行い、その他の機器については事後保全が行われていると推測します。
 
 全ての設備機械を同一の管理を行うことが、時間的・能力的に難しいと思います。故障や精度低下が生じるとその後の影響の大きな設備機械を特定し、重点的に管理をしていくことが実施されています。在庫管理も同様に実施されています。
 
 審査のための規格ではないがISO14004:2004(原則、システム及び支援技法の一般指針)次のように記述しています。「マネジメントシステムに環境マネジメントシステムを組み入れる組織は、経済...
的な利害と環境上の利害とを均衡させ、統合するための枠組みをもつ。また、環境マネジメントシステムは、環境目的及び目標を特定の財務的な成果と結びつける機会、並びにそれによって財務及び環境の両面で最大の利益が得られるように資源を確実に配分する機会を組織に与える。環境マネジメントシステムを実施している組織は、顕著な競争上の優位性を獲得することができる。」と、また、同規格には、環境パフォーマンスの改善に加えて、効果的な環境マネジメントシステムに伴う潜在的な利益には、次の5項目をあげています。
 
    (1)一般の人々又は地域社会と良好な関係を維持すること
    (2)投資家の基準を満たし、資金調達を改善すること
    (3)イメージ及び市場占有率を高めること
    (4)原価管理を改善すること
    (5)投入原材料及びエネルギーを節約すること
 
 こうしたメリットを得ることも、環境マネジメントシステムには含まれてくると考えることができます。
 

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