アルミニウムの腐食、原因と対策

 

 

金属材料は建築物、自動車、電子機器など身近なところに使用されています。金属材料を用いて製品を設計する場合、金属の特徴、材料組織を理解することが重量です。もし金属材料が破損した場合には、人命にかかわる重大な事故が発生します。金属材料の不具合として腐食、疲労破壊があります。どちらも見た目に大きな変化が見られず、小さな割れから大きな割れ、破損へとつながります。これら不具合発生メカニズムを考慮して金属製品を適切に使用することが重要です。このような背景で、今回は、アルミニウムの腐食について解説します。

 

ボーキサイトと呼ばれる赤褐色の鉱石がアルミニウムの原料です。ボーキサイトは、アルミナ(酸化アルミニウム)を40~60%含有しています。ボーキサイトのその他の成分はシリカ、酸化鉄、酸化チタンなどです。

 

【目次】

     

    1.アルミニウムの腐食

    アルミニウムは空気中で酸化アルミニウムの薄膜を自己生成して表面を保護します。このため非鉄金属中、耐腐食性に優れ、錆に対して強い性質があります。それでも自己保護膜の酸化アルミニウムの薄膜が破壊されると錆びます。

     

    酸化アルミニウムの薄膜は、アルカリ性・酸性の環境に強くなく、この環境下では酸化アルミニウムの薄膜は破壊され、腐食を引き起こします。特にアルカリ環境ではアルミニウムは腐食に弱いのです。そしてアルミニウムは両...

    性金属で、アルカリ性・酸性の双方の環境で腐食してしまう金属です。

     

    2.アルミニウムの腐食原因

     

    酸化アルミニウムの薄膜破壊は錆というよりは腐食です。アルミニウムの加工品を長時間放置しておくと白っぽくなります。この状態はアルマイト(陽極酸化処理法)の酸化皮膜形成と同じです。

     

    酸化皮膜に傷が付くと酸・アルカリで浸食されます。加工用の研削液にも反応して穴があいたりします。洗剤はアルカリ性・酸性の双方が使えません。また電食に弱いので使用場所に注意が必要です。

     

    金属同士、イオン化傾向の異なるものをつけてしまうと、金属同士、どちらかの錆が目立つことが知られています。アルマイト処理は電気不伝導性をもたせることにより錆の進行を遅くしています。このように、アルミニウムは錆びないのではなく、錆びにくいということです。

     

    【純度問題でアルミニウムが錆びる】

    それでもアルミニウムが錆びる理由のほとんどは素材の純度によるもので、アルミニウム製と謳っているものでも100%のものはなく、強度を出すためにアルミニウム100%に近い合金といった異種金属混入が行われるため、アルミニウム素材本来の腐食防止力の低下によって錆が発生するのです。ちなみに、金・プラチナは装飾品として純度を求められるので錆びる事がないのも同様の現象です。

     

    【純度問題以外でアルミが錆びる】

    純度問題以外でもアルミが錆びる主な理由は以下のようです。

     

    ・異種金属接触腐食

    アルミニウムは電位が低く卑な金属で、水に含まれているわずかな鉄イオン、銅イオンが原因で腐食が進んでしまうことがあります。銅合金・ステンレス鋼と接合して用いると電位の低いアルミ合金のほうが錆びていってしまいます。

     

    ・アルミ合金の粒界腐食

    金属の小さな粒の結晶:結晶粒の間に粒界という境界面が存在します。粒界という境界面は、結晶粒に比べると不純物がたまり、原子の並びが乱れているため、腐食に弱い部位です。境界部分が腐食してしまう現象が粒界腐食現象です。

     

    ・アルミの孔食

    孔食は、大気中でも塩気のあるような環境ではすぐに発生します。これは塩化物イオンが存在すると酸化アルミニウムの保護膜が部分的に破壊されてしまうことで起きるものです。

     

    3.アルミニウムの腐食対策

    防食法によるアルミニウムの腐食対策について述べます。アルミニウムの腐食を防ぐには、アルミニウムがどのような環境で使われるかを検討して、そこで発生しやすい腐食を想定して対策することが必要です。防食法を施すには、発生しやすい腐食をはっきりさせることです。

     

    腐食を防止する方法としては表面処理が第一です。塗装や陽極酸化処理などを行うことによって、アルミニウムの耐食性は向上します。孔食では、母材の電位がクラッド層よりも貴であれば腐食は母材方向には進行しません。それは母材が陰極となるからです。

     

    アルミニウムの腐食を防ぐには、腐食のメカニズムをよく知って、腐食しないような材料と環境の組み合わせを取り入れることが大切です。

     

     

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