鉄鋼製錬 溶銑予備処理:金属材料基礎講座(その86)

 

◆ 鉄鋼製錬 溶銑予備処理

 高炉から出てきた銑鉄(せんてつ)は炭素量が多いうえ、硬く脆(もろ)いため、そのままでは使用できません。炭素量や不純物量を減らして鉄の純度を上げていきます。

 従来は高炉から出た銑鉄をすぐ転炉に移動し、多くの不純物元素の精製を一気に行っていましたが、不十分で時間もかかっていました。そこで高炉と転炉の間で、銑鉄の不純物元素を除去する溶銑予備処理を行います。銑鉄はトーピードカー[1]や取鍋によって運ばれます。この時に溶銑予備処理として主にSi(シリコン)、P(リン)、S(硫黄)を除去します。そして、その後の転炉にて炭素を除去する工程となります。

図1. 溶銑予備処理の反応

 

 溶銑予備処理にて除去する時にSi、Pは酸素によって酸化させスラグにします。Siは鉄鉱石や石灰(CaO)などを添加して除去します。この時SiはCaO-FeO-SiO2(石灰-パスタイト-シリカ)系のスラグとなります。またこのスラグはPも吸収するので脱Pも行えます。そしてPも鉄鉱石などの添加によって、スラグとして除去されます。SiとPは酸化反応で除去しましたが、S(低硫黄)は還元反応によって除去します。そのためSi、Pのスラグを除去した後にSの除去を行います。Sを除去するためにCaOなどを添加します。これらの反応を図1に示します。

 

 次回に続きます。

 

【用語解説】

 [1]トーピードカー:混銑車(こんせんしゃ)は、製鉄所で使用される銑鉄(溶銑)を運ぶための特殊な貨車である。炉体の外形が魚雷形をしているためトーピードカー(トピードカー Torpedo Car)とも呼ばれる。炉体中央部に受銑、出銑用の炉口があり、内部は耐火物の内張りが施されている。両側は軸受けに支えられており、長軸まわりに360度回転させることができる構造である。一方、上述のような魚雷形でなく円筒形炉をそのまま台車に乗せた構造のものもある。高炉からの溶銑を製鋼炉...

に装入するまでの運搬と溶銑の貯蔵工程として、従来は混銑鍋車と混銑炉の組み合わせで使用されてきたが、1958年に旧西ドイツで200t容量の混銑車が試用された。日本で最初に混銑車が採用されたのは1960年で当時は150tの貯銑量であった。(引用:Wikipediaから、https://ja.wikipedia.org/、最終更新 2020年10月1日)。

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

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