疲労破面とすべり帯 金属材料基礎講座(その41)

 

 

1. 疲労破面の特徴

 

図1. 疲労破面の特徴

 疲労破壊した破面パターンの例を図1に示します。疲労破面は材料の強度や応力の種類や大きさによって様々な破面になりますが、大きく3つの特徴があります。

 まず一つ目ですが、疲労破壊には起点があります。破壊の起点となる欠陥や不純物介在物や表面の応力集中などがあります。そして起点の周辺にはへき開破面と呼ばれる模様が現れます。また内部起点による疲労破壊ではフィッシュアイと呼ばれる模様が観察されます。

 2つ目は、き裂の進行です。材料に繰返し応力が負荷されることでき裂が進行します。き裂が進行する過程でストライエーションやビーチマークなどの模様が形成されます。

 3つ目は、き裂の進行によって材料の断面積が減少したため、応力に耐えられず発生する最終破断です。ここは材料の強度によって延性的な破面や脆性的な破面が見られますが、破壊の形態としては、ほとんど塑性(そけい)変形が見られない脆性(ぜいせい)的な破壊になります。ただし、本当に最後的な破断場所だけは多少の伸びが見られることもあります。

 

2.すべり帯

 疲労破壊の起点には材料欠陥や不純物介在物が多く存在します。しかしそのような欠陥が材料にほとんどない時にも疲労破壊は起こります。その時に起点となるのが表面に形成されるすべり帯とよばれる凹凸です。疲労過程では繰返し応力が材料に負荷されます。

 理論的には降伏応力以下では材料は塑性変形しませんが、表面の応力集中や、局部的な偏析や結晶粒径の粗大化などで、材料の局所的に降伏応力を超えて塑性変形を起こす箇所が出てきます。そうすると、表面付近ですべり運動が起きて、表面に細かい凹凸や段差ができます。

 一度表面に露出した段差の表面は酸化されてしまうため、逆方向の応...

力をかけても、全く同じ向きですべり運動は起きず、別のすべり線から変形が起きます。この過程を図2に示します。これをすべり線、またはすべり線が集まった状態としてすべり帯と呼びます。この凹凸や段差が表面起点となって、ここから疲労破壊が進行していきます。

図2. すべり帯の形成過程

 

 次回に続きます。

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

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