「おもてなしの神髄」 CS経営(その64)

 
  
 

◆なぜ、あの企業の「顧客満足」はすごいのか

20. 地域・自然・女将の結束力-花の宿松や

 前回のその63、(2)に続いて解説します。
 

(3) 繁盛旅館・女将の心意気

 那須をはじめ、日光周辺には沢山の別荘があります。その一方、別荘を手放す人たちも多いようです。別荘での非日常が日常になってしまうことによる「飽き」と、別荘の維持管理の大変さが手放す人の主な原因です。そこで花の宿松や、臼井静枝女将の一言が生きるのです。
 
 「別荘のつもりでお気軽にご利用ください」
 
 お客様にとっては、大変うれしい言葉です。この女将の心意気によって、毎年宿泊するリピーターが増えたというのです。とはいえ、一般的に固定客というものは少しずつ減少するものです。当社実施の「不満足度調査」によると、物販業、飲食業などのサービス業においては、既顧客を含め年間で固定客の約24%の顧客が減少することがわかっています。その場合、新規顧客を開拓し続けなければ、およそ10年で顧客はゼロになるという計算です。
 
 固定客は減少する、新規客の開拓は思うに任せないのです。そこで多くの旅館は安売り合戦に突入します。そして安売りに歯止めはかからないのです。顧客は、各商品・サービスを比較し、「大した差がない」と感じた場合、「大幅に安くなければ購入しない」のが現実です。
 
 花の宿松やは安売り合戦には傾倒しなかったのです。そして、『顧客に評価される道』を考え抜いて手を打ち、生き残りました。
 

(4) 100万円の使い道

 あるとき、ビールメーカーの方が花の宿松やを訪れました。女将の顧客を思う気持ちと、ご当地の自然環境を守ろうとする真摯な姿勢に感動し、使途に条件をつけず、ポンと100万円を寄付してくれました。
 
 女将は感謝をしながら、その気持ちにどのように報いるべきかを考え、旅館の前を流れる鬼怒川の対岸の森に、紅葉する樹木を植えたいと思いました。早速、可能かどうかを市に問い合わせましたが、当然のことながら、自分の山でもないところに勝手に樹木を植えることはできないため、市からすぐに許可は下りませんでした。
  
 しかし、市の担当者は熱心で熱意ある説得にほだされ、女将の思いが市長にも伝わり、許可が下りることとなりました。植木商に紅葉する樹木を購入する交渉を始めたとき、「頑張ってもせいぜい苗木100本が精一杯」ということでした。しかし、女将はあきらめずに熱心にその趣旨を伝え、協力を仰いだのです。ここでもまた女将の心意気が植木商の心を動かし、なんと3倍の300本を提供してくれることとなりました。
 
 さらに、女将は次なる行動に出ました。本...
来、「川を挟んで反対側に人が通行する道路がある場所では、裸の姿をみせることから川の縁に露天風呂は設置できない」と決められていますが、向こう側を通行する人がいないことを理由に市にかけあったのです。役所からそう簡単に許可が出るものではないのですが、なんと、女将は植樹のときと同様に「当たって砕けろ」の心意気で交渉し、無事に許可をとりつけました。結果、「紅葉を愛でながらの露天風呂」という顧客満足を創造することが実現できました。
 
 次回に続きます。
 
【出典】武田哲男 著 なぜ、あの企業の「顧客満足」は、すごいのか PHP研究所発行
    筆者のご承諾により、抜粋を連載 

↓ 続きを読むには・・・

新規会員登録


この記事の著者