「ものづくり敗戦『匠の呪縛』が日本を衰退させる」木村英紀著

投稿日 2018/09/04

 本書は制御工学の世界的権威である著者が、日本の科学・技術および製造業の課題を提起したものです。
 ページの半分以上は、太古から現代まで、特に産業革命以降の科学と技術の進展を解説しており、自然科学を応用した工学からシステムや制御など人工的な工学へ比重が推移しており、日本の産業界は、この変化に追従できていないと投げかけます。
 本人の専門が制御工学であり、完全な客観的主張とは言えないまでも、ソフトウェアの分野で日本が世界をリードしていないことは体感できます。
 官僚に理系人材が極端に少ない、数学や理論が軽視されている、情緒的な判断が多いなど、うなずける指摘も多くありました。
 これらの打開策として「横幹科学技術の重視」が提起されますが、具体的な施策にまで落とし込まれていないのが残念です。
 過去の科学・技術の歴史を概観し、広い視野で今後の潮流を考察したい研究開発企画担当者におススメします。