TRIZで問題解決のヒントを見つけ出す

 TRIZ(トゥリーズ)は、250万件の特許情報の分析で得られた、これまでの問題解決に活用された知識ベースを持っています。その膨大な知識ベースから、自分の問題解決のヒントを見つけ出せないか?というのが、TRIZの手法の中でも最もパワフルな手法です。

 他分野の知識と言うとなんだか大仰ですが、要は自分たちの業界で使用されている「方法」や「メカニズム」以外で、エンジニアリングシステムを構築できないか?という視点と理解してもいいでしょう。

 では、ここで皆さんに質問です。「液体を動かす方法」を思いつく限り挙げてください。

 「振動させる」、「渦を巻く」、「毛細管現象を利用する」・・・・。 おそらく10ぐらいで行き詰ったのではないでしょうか。TRIZ(トゥリーズ)に組み込まれている知識データベースで液体を動かす方法を検索すると以下のような方法を提案してくれます。(Goldfireでの検索結果から)

 

 このように、自分達が知らない知識を使って、問題解決を図ることも大変効果的な方法なのです。

 また、「発明のレベル」という見方での特許を分類しています。

第1レベル:誰でもが思いつくレベルの解決策。矛盾が存在しない。 (全体の32%)

第2レベル:システムの限定的な改良。               (同45%)

第3レベル:システムの抜本的な改良。同一分野での解決策。      (同18%)

第4レベル:新しいシステムの創造。異分野の知識の活用による解決策。(同4%)

第5レベル:全く新しい知識の発見                 (同1%以下)

 

 当然、レベルが上がるほど実現への技術的な難易度も高くなりますが、特に新しいシステムの創造はほとんどの場合、異分野や他事業からもたらされたのです。

 自分が経験してきた知識世界だけでしか考えられない事をTRIZ(トゥリーズ)では「心理的惰性」といい、技術者の創造性を大きく阻害するものと扱います。いわゆる「柔らか頭」が必要なのです。

 私の好きな言葉に「素人のように考えて玄人として実行する」があります。豊富な知識経験を持った玄人がそれこそ「素人のように」考えることができたら、すばらしいアイデアが生まれそうだと思いませんか。

 

 では、実際にどのような流れで使えばいいのでしょうか?図1で説明します。

 まずは、当該システムで何を改善したいのか? または、何を実現させたいのか?を明確にします。

 次にそれを一度抽象的に表現してみます。(〇〇を△△したい。)

 その表現に近い知識ベースの項目を探し出して、その中にある科学的な効果事例を参照に解決策を考えるのです。

図1. 知識ベースを活用したアイデア出しのフロー図

 

 ここで一つの問題についての、2つのアプローチ例を考えましょう。

 一つは有害作用の改善で、もう一つは新しい方法での機能実現です。

 

【解決したい問題:冷蔵庫のモーター音が大きい。】

■有害作用の改善でのアプローチ

用できそう。
  •  自動車のマフラーでは、遮音壁を多重化することで排気音レベルを落としている。
  •  ヘッドホンのノイズキャンセラーでは、逆位相の音を流すことでヘッドホン内の音を打ち消している。
  •  音を出す筐体の剛性を上げることで、振動数を変えて聞こえにくくする。などを冷蔵庫のモーター室に適用することを考えてみる。
  •  

    ■新しい方法での目的機能実現でのアプローチ

    •  モーターが振動して音を出すのは仕方がない。→ モーターやコンプレッサー以外で冷却する方法は無いか?
    •  ペルチェ素子で冷却する。
    •  ジュールトムソン効果を利用する。
    •  液体ヘリウムを利用する。などで、次世代の冷却方法を検討する。

     

     実際には、目的機能の抽象化の方法やデータベースの構築などに工夫は必要であるが、そこを習得した先には、画期的な発明につながるヒントが満載の手法であることは論を待たないでしょう。 

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