【快年童子の豆鉄砲】(その113)OJCCとは(13)育成効果の活かし方

投稿日

【快年童子の豆鉄砲】(その113)OJCCとは(13)育成効果の活かし方

 

1. 育成効果の活かし方

これまで、連載の12回を使ってOJCC(On the Job Cultivating Core-competence)による社員の育成についてご説明してきましたが、最後に、育成効果の活かし方についてご説明してこの項を終わりたいと思います。

 

2. 二通りの育成効果の活かし方

OJCCを通じた育成効果を踏まえての活かし方には二通りあり、一つは、育成対象の仕事の任せ方と、もう一つは、育成過程で把握した育成対象者のコア・コンピタンス(CC)の仕事への活かし方で、それぞれについて以下にご説明しますので参考にして頂ければと思います。

 

1)任す方と任される方の齟齬のない任せ方

任せようとする仕事には、仕事の手順が決まっている場合と、仕事の手順、成り行きが不透明な場合があり、それぞれにふさわしい任せ方を下記にご紹介しますので、ご活用願います。

 

ⅰ)仕事の手順が決まっている場合

この場合は、決まっている手順を、下図(図95-1)のようなチャートを使って手順を書き込むことにより、手順の進行が、各ステップのPDCAのサイクルとして“見える化”されますので、決まっている手順のサイクルに対する理解の齟齬がなくなります。

 

その上で、「仕事を任せる」というのは、各サイクルにおける「判断」まで、即ち、各ステップについて仕事を進め、このような判断の下、次のステップに移行したいという報告を受けて、判断の善し悪しを見極めて次のステップに移行するということです。

 

この場合、育成対象者の判断が育成者の判断と合致する比率の高低で育成効果を把握できるのです。

 

【快年童子の豆鉄砲】(その113)OJCCとは(13)育成効果の活かし方

図95-1 PDCA Tracing Chart のパターン(注)

(注)このチャートの詳しい使い方は、PDCA‐TC法の記事を参照ください。

 

ⅱ)仕事の手順、成り行きが不透明な場合

先ず、事の成り行きに対する育成対象者の見通しを、第65弾~第70弾でご紹介した、筆者セミオリジナルの“C型PDPC法”で提示してもらい、受け取ったC型PDPC上で見通しの立て方を修正・指導して、最終的な見通しを共有した上で、報告、相談の必要な時点を教えた上で任せることになります。

 

2)育成過程で把握した育成対象者のCCの仕事への活かし方

前項の要領で、色んな仕事を任せてみると、育成対象者の優れた能力(コア・コンピタンス:CC)を把握できる場合があるのですが、そのCCを仕事にどのように活かすかという問題です。例えば、中小企業に多い製造会社を例にとった場合、製造部門の作業者の育成成果として、開発部門に向いているのではないか、という判断がなされたという極端なケースを取り上げてみたいと思います。

 

このような場合、一般的な対処は、開発部門への移籍ということになるのですが、諸事情から難しくそのままになってしまうことが多く、育成に対するインセティブが削がれてしまうことになりかねませんので、どのように対処すればよいかをご説明します。

 

上記で「開発部門に向いているのではないか」という判断の根拠は「創造力が高いから」ということではないかと思うのですが、現在の仕事の捉え方からしますと、開発部門への移籍ということになり、実現のハードルが高くなり実現しないのですが、仕事の捉え方を次のよう考えると、解決の糸口が見えてくるのです。

 

即ち、どんな仕事にも、「現状を前提としての改善」という側面と、「現状からの飛躍を目指した挑戦的改革」という側面があり、それぞれを進める上で「企画」「管理」「実務」という役割区分が存在しますので、それを表にすると表96-1のようになります。

 

表96-1 仕事の捉え方

【快年童子の豆鉄砲】(その113)OJCCとは(13)育成効果の活かし方

 

このような捉え方は、前項で、極端なケースとして取り上げた「製造部門の作業者の仕事」についても可能で、現在は、このような捉え方をした時のアイデアは「改善提案」という形で取り上げられています。ただ、改善提案は、あくまで本人任せですので、本人が意識しなければ、そのような素養があっても、アイデアという形で出てこないのです。そこで、その育成対象者に、このような仕事の捉え方を説明し、今の仕事について、持てる高い創造力を活かして、ÅまたはBに対するアイデアを出してくれるよう促すのです。

 

育成過程を通じて、おそらく本人のモチベーションは高まっているはずですので、素晴らしいアイデアが出てきて、大幅な改善がなされ、育成成果が具体的な形...

【快年童子の豆鉄砲】(その113)OJCCとは(13)育成効果の活かし方

 

1. 育成効果の活かし方

これまで、連載の12回を使ってOJCC(On the Job Cultivating Core-competence)による社員の育成についてご説明してきましたが、最後に、育成効果の活かし方についてご説明してこの項を終わりたいと思います。

 

2. 二通りの育成効果の活かし方

OJCCを通じた育成効果を踏まえての活かし方には二通りあり、一つは、育成対象の仕事の任せ方と、もう一つは、育成過程で把握した育成対象者のコア・コンピタンス(CC)の仕事への活かし方で、それぞれについて以下にご説明しますので参考にして頂ければと思います。

 

1)任す方と任される方の齟齬のない任せ方

任せようとする仕事には、仕事の手順が決まっている場合と、仕事の手順、成り行きが不透明な場合があり、それぞれにふさわしい任せ方を下記にご紹介しますので、ご活用願います。

 

ⅰ)仕事の手順が決まっている場合

この場合は、決まっている手順を、下図(図95-1)のようなチャートを使って手順を書き込むことにより、手順の進行が、各ステップのPDCAのサイクルとして“見える化”されますので、決まっている手順のサイクルに対する理解の齟齬がなくなります。

 

その上で、「仕事を任せる」というのは、各サイクルにおける「判断」まで、即ち、各ステップについて仕事を進め、このような判断の下、次のステップに移行したいという報告を受けて、判断の善し悪しを見極めて次のステップに移行するということです。

 

この場合、育成対象者の判断が育成者の判断と合致する比率の高低で育成効果を把握できるのです。

 

【快年童子の豆鉄砲】(その113)OJCCとは(13)育成効果の活かし方

図95-1 PDCA Tracing Chart のパターン(注)

(注)このチャートの詳しい使い方は、PDCA‐TC法の記事を参照ください。

 

ⅱ)仕事の手順、成り行きが不透明な場合

先ず、事の成り行きに対する育成対象者の見通しを、第65弾~第70弾でご紹介した、筆者セミオリジナルの“C型PDPC法”で提示してもらい、受け取ったC型PDPC上で見通しの立て方を修正・指導して、最終的な見通しを共有した上で、報告、相談の必要な時点を教えた上で任せることになります。

 

2)育成過程で把握した育成対象者のCCの仕事への活かし方

前項の要領で、色んな仕事を任せてみると、育成対象者の優れた能力(コア・コンピタンス:CC)を把握できる場合があるのですが、そのCCを仕事にどのように活かすかという問題です。例えば、中小企業に多い製造会社を例にとった場合、製造部門の作業者の育成成果として、開発部門に向いているのではないか、という判断がなされたという極端なケースを取り上げてみたいと思います。

 

このような場合、一般的な対処は、開発部門への移籍ということになるのですが、諸事情から難しくそのままになってしまうことが多く、育成に対するインセティブが削がれてしまうことになりかねませんので、どのように対処すればよいかをご説明します。

 

上記で「開発部門に向いているのではないか」という判断の根拠は「創造力が高いから」ということではないかと思うのですが、現在の仕事の捉え方からしますと、開発部門への移籍ということになり、実現のハードルが高くなり実現しないのですが、仕事の捉え方を次のよう考えると、解決の糸口が見えてくるのです。

 

即ち、どんな仕事にも、「現状を前提としての改善」という側面と、「現状からの飛躍を目指した挑戦的改革」という側面があり、それぞれを進める上で「企画」「管理」「実務」という役割区分が存在しますので、それを表にすると表96-1のようになります。

 

表96-1 仕事の捉え方

【快年童子の豆鉄砲】(その113)OJCCとは(13)育成効果の活かし方

 

このような捉え方は、前項で、極端なケースとして取り上げた「製造部門の作業者の仕事」についても可能で、現在は、このような捉え方をした時のアイデアは「改善提案」という形で取り上げられています。ただ、改善提案は、あくまで本人任せですので、本人が意識しなければ、そのような素養があっても、アイデアという形で出てこないのです。そこで、その育成対象者に、このような仕事の捉え方を説明し、今の仕事について、持てる高い創造力を活かして、ÅまたはBに対するアイデアを出してくれるよう促すのです。

 

育成過程を通じて、おそらく本人のモチベーションは高まっているはずですので、素晴らしいアイデアが出てきて、大幅な改善がなされ、育成成果が具体的な形になることが期待できるということです。そして、そういった成果が重なり、持てる高い創造力が具体的な実績で示すことができれば、最終的に開発部門への移籍が求められることになるのではないかと言うのが期待される結論です。

 

3. 全体的な成長を目指す方法

OJCCは、最初にご説明しましたように、On the Job Cultivating Core-competenceの略で、本人の得意な才能(Core-competence)を把握し、その才能を、仕事を通じて伸ばすことにより全体的な成長を目指す方法ですので、ここでご説明した内容がOJCCの目指すところと言えますので、育成者はこのことを常に念頭において育成する必要があります。

 

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浅田 潔

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。


「人財教育・育成」の他のキーワード解説記事

もっと見る
内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その6)

  【この連載の前回:内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その5)へのリンク】  下図の「内容が明確に伝わる技術文書の書き方第...

  【この連載の前回:内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その5)へのリンク】  下図の「内容が明確に伝わる技術文書の書き方第...


ライフキャリアの視点 技術者のキャリア整理法(その2)

 前回、技術者のキャリア整理法 (その1)自分自身のマーケティングについて述べました。今回は、(その2)ライフキャリアの視点です。人生には、楽しいこと、悲...

 前回、技術者のキャリア整理法 (その1)自分自身のマーケティングについて述べました。今回は、(その2)ライフキャリアの視点です。人生には、楽しいこと、悲...


内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その38)

  1.「会話を通したトレーニング」について(その2) 「内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その37)」で、会話を通した日々のオンザジ...

  1.「会話を通したトレーニング」について(その2) 「内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その37)」で、会話を通した日々のオンザジ...


「人財教育・育成」の活用事例

もっと見る
やろうと思っているけどできないことばかり、の克服(その6)

 「やろうと思っているけどできないことばかり、の克服」も今回で6回目ですが、今回が最終回です。 【やろうと思っているけど できないことばかりの克服 連載...

 「やろうと思っているけどできないことばかり、の克服」も今回で6回目ですが、今回が最終回です。 【やろうと思っているけど できないことばかりの克服 連載...


伝えることの難しさ

1. 自分では当たり前でも、相手にとっては当たり前ではないことだらけ  人前で話をする機会が増えましたが、その都度、話すこと、伝えることの難しさを感...

1. 自分では当たり前でも、相手にとっては当たり前ではないことだらけ  人前で話をする機会が増えましたが、その都度、話すこと、伝えることの難しさを感...


やろうと思っているけどできないことばかり、の克服(その4)

 前回は絞り込んでもなお、やりたいけどできないことに対して心理的抵抗を整理しました。ちょっと面倒だったと思いますけど、やりましたか?   や...

 前回は絞り込んでもなお、やりたいけどできないことに対して心理的抵抗を整理しました。ちょっと面倒だったと思いますけど、やりましたか?   や...