数理統計学的な厳密性との狭間で データ分析講座(その155)

更新日

投稿日

データ分析

 

◆ データ分析・活用と数理統計学的な厳密性との狭間で

 データ分析やデータサイエンス、機械学習などの基礎的なバックボーンとして、数理統計学に関するある程度の知識は必須です。しかしデータ分析・活用を目指すなら、数理統計学的厳密性は放棄したほうが良さそうです。今回は「データ分析・活用と数理統計学的な厳密性との狭間で」というお話をします。

 

1. 数統計学的な判断をデータ分析に組み込む

 データ分析・活用を考えた時、その中で統計学的な判断をデータ分析に組み込むことをよく考えます。

 統計学的な判断とは、次のようなデータによる意思決定支援です。

  • 対前年比で売り上げはどうだろうか?
  • 今日の売り上げは、通常と比べ悪いといえるのだろうか?
  • 先週行ったキャンペーンの影響はどうだろうか?
  • 売り上げに効いている要因として、何が考えられるだろうか?
  • 先日の土・日の売り上げが悪かった要因は、何であろうか?
  • 何の対策を打たないまま営業すると、来月どうなりそうか?
  • A案とB案、どちらがいいだろうか?

 

2. 厳密性を追求したあのころ

 私が20代のころ、数理統計学的な厳密性を最大限に考慮したデータ分析を試行したことがありました。いたずらに時間だけが過ぎ、骨の折れるものでした。工夫次第でどうにかなりそうで、どうにもならないものでした。現場のスピード感に合わせるためには、どこかで厳密性の追求を放棄する必要が出てきました。

 

(1) 回帰分析

 データ分析・活用で、よく登場するものに回帰分析というものがあります。手法の紹介やツールの使い方を説明した、データ分析やデータサイエンス、機械学習などの入門書に、必ず登場する分析手法です。回帰分析については、これ以上説明はしません。よく目にする分析手法だということだけ、ここでは知って頂ければと思います。

 

3. 数理統計学的厳密性を満たすのはほぼ不可能

 回帰分析は、厳密には独立性・等分散性・正規性・線形性などの条件を満たす必要があります。これらの条件の話も、ここでは説明しません。ここで言いたいのは、ビジネスの現場で発生するデータは、これらの条件を満たすことは皆無だということです。実際は、工夫次第でこれらの条件に近づくことは可能です。

 しかし近づくだけで条件を十分に満たすことはありません。

 

(1) 明らかに条件を逸脱していない限り、実務的にはいいのではないか

 言いたいことは「明らかに条件を逸脱していない限り、実務的にはいいのではないか」ということです。したがって実務的には数理統計学的...

データ分析

 

◆ データ分析・活用と数理統計学的な厳密性との狭間で

 データ分析やデータサイエンス、機械学習などの基礎的なバックボーンとして、数理統計学に関するある程度の知識は必須です。しかしデータ分析・活用を目指すなら、数理統計学的厳密性は放棄したほうが良さそうです。今回は「データ分析・活用と数理統計学的な厳密性との狭間で」というお話をします。

 

1. 数統計学的な判断をデータ分析に組み込む

 データ分析・活用を考えた時、その中で統計学的な判断をデータ分析に組み込むことをよく考えます。

 統計学的な判断とは、次のようなデータによる意思決定支援です。

  • 対前年比で売り上げはどうだろうか?
  • 今日の売り上げは、通常と比べ悪いといえるのだろうか?
  • 先週行ったキャンペーンの影響はどうだろうか?
  • 売り上げに効いている要因として、何が考えられるだろうか?
  • 先日の土・日の売り上げが悪かった要因は、何であろうか?
  • 何の対策を打たないまま営業すると、来月どうなりそうか?
  • A案とB案、どちらがいいだろうか?

 

2. 厳密性を追求したあのころ

 私が20代のころ、数理統計学的な厳密性を最大限に考慮したデータ分析を試行したことがありました。いたずらに時間だけが過ぎ、骨の折れるものでした。工夫次第でどうにかなりそうで、どうにもならないものでした。現場のスピード感に合わせるためには、どこかで厳密性の追求を放棄する必要が出てきました。

 

(1) 回帰分析

 データ分析・活用で、よく登場するものに回帰分析というものがあります。手法の紹介やツールの使い方を説明した、データ分析やデータサイエンス、機械学習などの入門書に、必ず登場する分析手法です。回帰分析については、これ以上説明はしません。よく目にする分析手法だということだけ、ここでは知って頂ければと思います。

 

3. 数理統計学的厳密性を満たすのはほぼ不可能

 回帰分析は、厳密には独立性・等分散性・正規性・線形性などの条件を満たす必要があります。これらの条件の話も、ここでは説明しません。ここで言いたいのは、ビジネスの現場で発生するデータは、これらの条件を満たすことは皆無だということです。実際は、工夫次第でこれらの条件に近づくことは可能です。

 しかし近づくだけで条件を十分に満たすことはありません。

 

(1) 明らかに条件を逸脱していない限り、実務的にはいいのではないか

 言いたいことは「明らかに条件を逸脱していない限り、実務的にはいいのではないか」ということです。したがって実務的には数理統計学的な厳密性は、過剰に追求しないほうがいいでしょう。

(2) 数理統計学の知識は必要か

 データ分析を実施する上で、数理統計学の知識は必要です。大学の1、2年生レベルの教科書など簡単な書籍を参考に学習して頂ければと思います。数理統計学的厳密性を知っていた上で厳密性を崩したデータ分析をするのと、知らずに厳密性を崩してデータ分析するのとでは、大きく意味合いは異なります。場合によっては、分析結果の解釈に大きく影響することがあります。

 

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)


「情報マネジメント一般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
営業部隊の成果指標とは データ分析講座(その263)

  販売高の最大化を目指し、営業部隊の成果を指標化することは、よくあります。販売高の最大化のキーとなるのが、コスパのいい営業でしょう。販売...

  販売高の最大化を目指し、営業部隊の成果を指標化することは、よくあります。販売高の最大化のキーとなるのが、コスパのいい営業でしょう。販売...


会議を再考してみる

1.七つの会議    「君はなぜこの会社を選んだの?」「ここしか入れてもらえなかったんだ。」「俺も似たようなものだな。」「大企業に就職した奴...

1.七つの会議    「君はなぜこの会社を選んだの?」「ここしか入れてもらえなかったんだ。」「俺も似たようなものだな。」「大企業に就職した奴...


データ環境によって成長が大きく異なるAI データ分析講座(その123)

◆ ぐれるAI、オタクになるAI  フェイクニュースという言葉があります。ねつ造の有無とは関係なく、結果的に誤った偽情報を報道することですが、それと...

◆ ぐれるAI、オタクになるAI  フェイクニュースという言葉があります。ねつ造の有無とは関係なく、結果的に誤った偽情報を報道することですが、それと...


「情報マネジメント一般」の活用事例

もっと見る
‐技術開発の目標について 第2回‐  製品・技術開発力強化策の事例(その16)

 技術開発の目標を解説する以下の項目4点について、前回は、1と2を解説しましたので、今回は、第2回として、3と4を記述します。          1....

 技術開発の目標を解説する以下の項目4点について、前回は、1と2を解説しましたので、今回は、第2回として、3と4を記述します。          1....


‐クレ-ム情報を開発に活用‐  製品・技術開発力強化策の事例(その13)

 前回の事例その12に続いて解説します。顧客から出されたクレ-ムは、技術開発や、関連製品の開発の可能性を潜在させている場合が多いようです。その視点からクレ...

 前回の事例その12に続いて解説します。顧客から出されたクレ-ムは、技術開発や、関連製品の開発の可能性を潜在させている場合が多いようです。その視点からクレ...


ソーシャルメディアデータの解析事例:異分野研究から得られる共通した目的とは

 2020年、コロナウィルス感染の問題が大きくなり始めた頃、少人数の開催ということで、ソーシャルメディアデータ解析を専門にされている先生の講演会を聞く...

 2020年、コロナウィルス感染の問題が大きくなり始めた頃、少人数の開催ということで、ソーシャルメディアデータ解析を専門にされている先生の講演会を聞く...