会議を再考してみる

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1.七つの会議kaigi1

 
 「君はなぜこの会社を選んだの?」「ここしか入れてもらえなかったんだ。」「俺も似たようなものだな。」「大企業に就職した奴は、プライドが持てていいな。」中堅の電機メーカー・東京建電の営業部1課長・原島万二と部下の残業中の何気ない会話。大手電機メーカーの下請けである中小企業を舞台に描かれていた池井戸潤の「七つの会議」のセリフだ。会社のために働くなんてかっこ悪い、組織にふりまわされて上司にこびへつらうなんて最低だ、多くのサラリーマンがそう思っていたようです。「七つの会議」の隠されたテーマは、「人は何のために働くのか?」だと思いました。そして、本の題名のように、会社は、多くの会議によって動いていることも事実です。
  

2.会議の効率化実施例

 
 プレジデント社が、営業マン1000人に対して、「会議は売り上げアップに貢献していますか?」と
聞いたところ、「いいえ」が93%であったそうです。どんなタイプの会議が売り上げに貢献しないの
でしょうか。1番目が報告会タイプの会議、2番目が独演会タイプの会議、3番目が尋問会タイプの会議
4番目が恫喝会タイプの会議だそうです。 会議は売り上げアップに貢献していると答えた7%の人は
次のような会議が役に立ったと答えています。「成功事例を共有できる会議」、「最新情報が聞け
る会議」、「課題を抽出する会議」など。筆者も、勤務先の企業で、約5000名の研究・技術者の業務
プロセスを分析したことがあります。その結果、全体の勤務時間の約40%が会議で、当時は、その60
%がムダな(報告や移動時間で付加価値を生まない)会議だったことを記憶しています。かなりムダ
を省いてきたつもりでしたが、データ化するとムダが見えてきます。これを、付加価値を生む開発や
設計時間に当ててみたところ、開発のリードタイムを約25%短縮できました。
  

3.会議の体系

 
 会議を、その目的で分けると4つになり、その留意点は次のようになります。
 

(1)決定するための会議

 
   ・「何をどこまで決めるか」を明確にする
 ・意思決定に必要な情報や基準を準備しておく
 ・意思決定権者と決定方法を明確にしておく
 

(2)課題の解決策を創出するための会議

 
 ・資料の図解化、データ化などによって、共有しやすくする
 ・当事者以外に参加者の知恵も活用する
 ・議論の矛盾や飛躍などがないように、よりロジカルに整理する
 

(3)アイデア出しのための会議(例えば、ブレーンストーミング)

 
  ・批判厳禁:出された意見に対して、良い悪いと批判をしない
  ・自由奔走:冗談混じりや思いつきなど、自由かつ奔走な発言を大歓迎する
  ・質より量:量的拡大が質的向上に結びつくので、アイデアを数多く出させる
  ・結合改善:他人の発言(アイデア)に触発され、便乗し、さらにアイデアを出させる
 

(4)伝達するための会議

 

 ・業務指示が、個人レベルまで伝わっているか確認する
 ・その背景についても説明する
 ・指示内容に疑問がある場合は、その場で質問させる
   

4.会議の根本的効率化法

 
 トヨタ生産方式では、ムダを「付加価値を高めない各種現象や結果」と定義しています。このムダ
を無くすことが重要な取り組みとされています。それを次のような「7つのムダ」を明示しています。
①作りすぎの...

1.七つの会議kaigi1

 
 「君はなぜこの会社を選んだの?」「ここしか入れてもらえなかったんだ。」「俺も似たようなものだな。」「大企業に就職した奴は、プライドが持てていいな。」中堅の電機メーカー・東京建電の営業部1課長・原島万二と部下の残業中の何気ない会話。大手電機メーカーの下請けである中小企業を舞台に描かれていた池井戸潤の「七つの会議」のセリフだ。会社のために働くなんてかっこ悪い、組織にふりまわされて上司にこびへつらうなんて最低だ、多くのサラリーマンがそう思っていたようです。「七つの会議」の隠されたテーマは、「人は何のために働くのか?」だと思いました。そして、本の題名のように、会社は、多くの会議によって動いていることも事実です。
  

2.会議の効率化実施例

 
 プレジデント社が、営業マン1000人に対して、「会議は売り上げアップに貢献していますか?」と
聞いたところ、「いいえ」が93%であったそうです。どんなタイプの会議が売り上げに貢献しないの
でしょうか。1番目が報告会タイプの会議、2番目が独演会タイプの会議、3番目が尋問会タイプの会議
4番目が恫喝会タイプの会議だそうです。 会議は売り上げアップに貢献していると答えた7%の人は
次のような会議が役に立ったと答えています。「成功事例を共有できる会議」、「最新情報が聞け
る会議」、「課題を抽出する会議」など。筆者も、勤務先の企業で、約5000名の研究・技術者の業務
プロセスを分析したことがあります。その結果、全体の勤務時間の約40%が会議で、当時は、その60
%がムダな(報告や移動時間で付加価値を生まない)会議だったことを記憶しています。かなりムダ
を省いてきたつもりでしたが、データ化するとムダが見えてきます。これを、付加価値を生む開発や
設計時間に当ててみたところ、開発のリードタイムを約25%短縮できました。
  

3.会議の体系

 
 会議を、その目的で分けると4つになり、その留意点は次のようになります。
 

(1)決定するための会議

 
   ・「何をどこまで決めるか」を明確にする
 ・意思決定に必要な情報や基準を準備しておく
 ・意思決定権者と決定方法を明確にしておく
 

(2)課題の解決策を創出するための会議

 
 ・資料の図解化、データ化などによって、共有しやすくする
 ・当事者以外に参加者の知恵も活用する
 ・議論の矛盾や飛躍などがないように、よりロジカルに整理する
 

(3)アイデア出しのための会議(例えば、ブレーンストーミング)

 
  ・批判厳禁:出された意見に対して、良い悪いと批判をしない
  ・自由奔走:冗談混じりや思いつきなど、自由かつ奔走な発言を大歓迎する
  ・質より量:量的拡大が質的向上に結びつくので、アイデアを数多く出させる
  ・結合改善:他人の発言(アイデア)に触発され、便乗し、さらにアイデアを出させる
 

(4)伝達するための会議

 

 ・業務指示が、個人レベルまで伝わっているか確認する
 ・その背景についても説明する
 ・指示内容に疑問がある場合は、その場で質問させる
   

4.会議の根本的効率化法

 
 トヨタ生産方式では、ムダを「付加価値を高めない各種現象や結果」と定義しています。このムダ
を無くすことが重要な取り組みとされています。それを次のような「7つのムダ」を明示しています。
①作りすぎのムダ(余分な資料の作成)、②手待ちのムダ(指示待ちのムダ)、③運搬のムダ(出張
のムダ)、④加工のムダ(開発プロセス手法を活用していない)、⑤在庫のムダ(目的が曖昧となっ
ているデータの蓄積)、⑥動作のムダ(最適化されていない実施計画)、⑦不良をつくるムダ (開発
が一本釣りとなっており、リスクマネジメントが抜けている)。会議だけでなく、その他のムダも徹
底的に排除すれば、ワークライフライフバランスの有効な施策になります。ただし、心にゆとりをも
たらす会話やモチベーションを上げるためのイベントなどは例外になると思います。
 
 

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この記事の著者

粕谷 茂

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