目標管理と能力開発の問題 中小メーカ向け経営改革の考察(その22)

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◆事業計画と目標管理に関する問題と対策

 前回のその21に続いて解説します。事業計画が達成されない原因を調べると、次の様な問題点が考えられます。
 

・細分化した部門別目標設定の整合性が図られていない場合

 目標管理に取り入れた部門別の目標と事業計画の整合性が取れていないと、事業計画に掲げた内容を達成する事はできません。その具体的な例は次の通りです。
 
(1)対象製品の明示の問題
(2)資材部門の問題
(3)営業部門の問題
 
これらについて以下に解説します。
 
(1)対象製品の明示の問題
 
 対象にすべき製品を指定せず、単にコストダウン10%と目標が示された場合、生産頻度の低い製品でコストダウンを実施しても、企業全体に与える効果は非常に低くなり、事業計画に示した目標に到達しない事態に陥ります。したがって、扱い高の高い製品を主体に指定し、生産と技術部門の目標にします。更に、生産と技術部門だけでなく、資材部門、営業部門等についても目標値を設定することで全社の整合性が取れます。
 
(2)資材部門の問題
 
 資材部門ではコストダウンを図るために、調達品の値下げ交渉、納入品の不良率、納期遅延等の問題解決の目標値を掲げ、改善に取り組みます。不良率、納期遅延問題では、まず自社内で手待ち、段取り替えなどの損失時間が発生しているから、生産部門に協力を求めて損失時間を把握し、改善後の変化で効果を明らかにします。
 
 調達先に対しては、不良率、納期遅延率の発生状況を通知し、改善策について回答を求めます。調達先別の問題発生状況が判る一覧表を提示して、競争心を湧かせるような試みも必要です。「中小企業は発注量が多くないから、余り強く出ると受注を辞退される」と懸念して、問題点の改善要求を控え目にしている企業が少なくありません。しかし実際には、共に学び改善していくことで生産性向上を共有できるのです。単なる値下げ要求や、問題解決を一方的に押し付けることでは、いつまで経っても状況は好転しません。
 
 調達品の値下げ要求が行き過ぎると、受注した業者の品質保証の管理費が手抜きされるため、品質不良や納期遅延が改善されない事例も見られるので、「安物買いの銭失い」に陥らない注意が必要です。自社内で品質問題の改善やリ-ドタイム短縮の経験を積み上げていると、その体験に基づき、生産部門の協力を得て発注先の指導を実施する事ができます。
 
 更に状況を掘り下げていくと、突発的な受注に際して無理な納期を要求し、納期遅延が発生することが避けられない状態を作り出している場合が少なくありません。このような発注が頻発しているのに、自企業内の発注態度を改めないで、納期遅延が出ないように要求するのは無理があります。
 
 対策としては、調達先との間で品目別単位数量当たりの、通常時の納期と緊急時の納期について約束を取り交わしておきます。そして「品目別・単位数量についての調達期間、単価」が記載されている調達品一覧表を作成し、営業...

◆事業計画と目標管理に関する問題と対策

 前回のその21に続いて解説します。事業計画が達成されない原因を調べると、次の様な問題点が考えられます。
 

・細分化した部門別目標設定の整合性が図られていない場合

 目標管理に取り入れた部門別の目標と事業計画の整合性が取れていないと、事業計画に掲げた内容を達成する事はできません。その具体的な例は次の通りです。
 
(1)対象製品の明示の問題
(2)資材部門の問題
(3)営業部門の問題
 
これらについて以下に解説します。
 
(1)対象製品の明示の問題
 
 対象にすべき製品を指定せず、単にコストダウン10%と目標が示された場合、生産頻度の低い製品でコストダウンを実施しても、企業全体に与える効果は非常に低くなり、事業計画に示した目標に到達しない事態に陥ります。したがって、扱い高の高い製品を主体に指定し、生産と技術部門の目標にします。更に、生産と技術部門だけでなく、資材部門、営業部門等についても目標値を設定することで全社の整合性が取れます。
 
(2)資材部門の問題
 
 資材部門ではコストダウンを図るために、調達品の値下げ交渉、納入品の不良率、納期遅延等の問題解決の目標値を掲げ、改善に取り組みます。不良率、納期遅延問題では、まず自社内で手待ち、段取り替えなどの損失時間が発生しているから、生産部門に協力を求めて損失時間を把握し、改善後の変化で効果を明らかにします。
 
 調達先に対しては、不良率、納期遅延率の発生状況を通知し、改善策について回答を求めます。調達先別の問題発生状況が判る一覧表を提示して、競争心を湧かせるような試みも必要です。「中小企業は発注量が多くないから、余り強く出ると受注を辞退される」と懸念して、問題点の改善要求を控え目にしている企業が少なくありません。しかし実際には、共に学び改善していくことで生産性向上を共有できるのです。単なる値下げ要求や、問題解決を一方的に押し付けることでは、いつまで経っても状況は好転しません。
 
 調達品の値下げ要求が行き過ぎると、受注した業者の品質保証の管理費が手抜きされるため、品質不良や納期遅延が改善されない事例も見られるので、「安物買いの銭失い」に陥らない注意が必要です。自社内で品質問題の改善やリ-ドタイム短縮の経験を積み上げていると、その体験に基づき、生産部門の協力を得て発注先の指導を実施する事ができます。
 
 更に状況を掘り下げていくと、突発的な受注に際して無理な納期を要求し、納期遅延が発生することが避けられない状態を作り出している場合が少なくありません。このような発注が頻発しているのに、自企業内の発注態度を改めないで、納期遅延が出ないように要求するのは無理があります。
 
 対策としては、調達先との間で品目別単位数量当たりの、通常時の納期と緊急時の納期について約束を取り交わしておきます。そして「品目別・単位数量についての調達期間、単価」が記載されている調達品一覧表を作成し、営業と設計部門に伝達しておきます。調達部品によっては、実際に必要なのは数個なのにロット単位で発注しないと単価が非常に高くなり、受け入れられない商品もあります。このような商品に関しても「調達品の品名、価額、納期、単位数量」の一覧表を営業と設計に配布し、業務処理に利用するように要請する責務が購買担当者にはあります。品質問題でも、守らなければならない品質項目を技術部門で確認し、発注する必要があります。品質項目と、守らなければならい品質数値と許容範囲を明示します。品質仕様を明示する事は、受け入れ時の問題の発生を少なくするために欠かすことができません。
 
 上記の(3)営業部門の問題は、次回の目標管理と能力開発の問題(その3)で解説します。
 

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この記事の著者

新庄 秀光

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