EBSD(電子線後方散乱回折法)とは:金属材料基礎講座(その127)

投稿日

EBSD(電子線後方散乱回折法))とは:金属材料基礎講座(その127)

 

◆ EBSDとは

EBSDとはElectron Back-Scatter Diffraction(電子線後方散乱回折法)の略です。SEMの中で試料を70°程度傾けて電子線を照射すると、試料表面の50nm程度から電子線の回折パターン(菊池パターン)が得られます。EBSDの概略図を下図に示します。

 

EBSD(電子線後方散乱回折法))とは:金属材料基礎講座(その127)

図.EBSDの概略図

 

EDSやWDSのように特性X線による元素分析ではなく、回折パターンを指数付けして金属組織の結晶方位や、結晶構造などの情報を得ます。電子線を連続的に走査することで観察面のマッピングができます。そしてEBSDでは結晶方位の連続した領域を結晶粒、結晶方位の角度の変化を結晶粒界として認識します。

 

EBSDは金属組織評価において結晶方位、結晶粒、相の同定、集合組織の解析などに使用されます。金属材料は通常多くの結晶粒からなる多結晶体材料です。この一つ一つの結晶粒の方位を明らかにできることがEBSDの特徴です。また回折パターンは結晶体から起こるため、アモルファスのような非晶質材料では菊池パターンが得られずEBSDは利用できません。

 

試料に照射した電子線は試料内で回折現象を起こしますが、試料の奥に侵入した電子線はエネルギーを失い、回折条件をほとんど満たさなくなります。そのため放出される回折パターンは試料の表面50nm程度に限られます。これは試料の表面状態に非常に敏感であることを表します。通常のSEM観察、EDS分析では問題にならないような研磨キズ、コンタミ、酸化膜などにもEBSDでは影響を受けます。そのため、より一層の鏡面仕上げ、鏡面研磨が要求されます。

 

次回に続きます。

関連解説記事:マランゴニ対流~宇宙でもきれいに混ざらない合金の...

EBSD(電子線後方散乱回折法))とは:金属材料基礎講座(その127)

 

◆ EBSDとは

EBSDとはElectron Back-Scatter Diffraction(電子線後方散乱回折法)の略です。SEMの中で試料を70°程度傾けて電子線を照射すると、試料表面の50nm程度から電子線の回折パターン(菊池パターン)が得られます。EBSDの概略図を下図に示します。

 

EBSD(電子線後方散乱回折法))とは:金属材料基礎講座(その127)

図.EBSDの概略図

 

EDSやWDSのように特性X線による元素分析ではなく、回折パターンを指数付けして金属組織の結晶方位や、結晶構造などの情報を得ます。電子線を連続的に走査することで観察面のマッピングができます。そしてEBSDでは結晶方位の連続した領域を結晶粒、結晶方位の角度の変化を結晶粒界として認識します。

 

EBSDは金属組織評価において結晶方位、結晶粒、相の同定、集合組織の解析などに使用されます。金属材料は通常多くの結晶粒からなる多結晶体材料です。この一つ一つの結晶粒の方位を明らかにできることがEBSDの特徴です。また回折パターンは結晶体から起こるため、アモルファスのような非晶質材料では菊池パターンが得られずEBSDは利用できません。

 

試料に照射した電子線は試料内で回折現象を起こしますが、試料の奥に侵入した電子線はエネルギーを失い、回折条件をほとんど満たさなくなります。そのため放出される回折パターンは試料の表面50nm程度に限られます。これは試料の表面状態に非常に敏感であることを表します。通常のSEM観察、EDS分析では問題にならないような研磨キズ、コンタミ、酸化膜などにもEBSDでは影響を受けます。そのため、より一層の鏡面仕上げ、鏡面研磨が要求されます。

 

次回に続きます。

関連解説記事:マランゴニ対流~宇宙でもきれいに混ざらない合金の不思議 

関連解説記事:金属材料基礎講座 【連載記事紹介】

 

連載記事紹介:ものづくりドットコムの人気連載記事をまとめたページはこちら!

 

【ものづくり セミナーサーチ】 セミナー紹介:国内最大級のセミナー掲載数 〈ものづくりセミナーサーチ〉 はこちら!

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
金属材料の疲労破壊とは

     今回は、金属材料の疲労破壊について解説します。  金属材料は繰り返し荷重を受けると強度が徐々に低下し、かなり低い荷...

     今回は、金属材料の疲労破壊について解説します。  金属材料は繰り返し荷重を受けると強度が徐々に低下し、かなり低い荷...


遅れ破壊とは:金属材料基礎講座(その72)

  ◆ 遅れ破壊:鋼材に水素が侵入  材料内部に水素が侵入することで、材料がもろくなり破壊する現象です。  水素が材料に侵入してから破壊す...

  ◆ 遅れ破壊:鋼材に水素が侵入  材料内部に水素が侵入することで、材料がもろくなり破壊する現象です。  水素が材料に侵入してから破壊す...


CNC(コンピュータ数値制御)とは?NCとの違いは?使用用途やメリット・デメリットを紹介

CNC(コンピュータ数値制御)は、プログラムされたコンピュータ指示によって工作機械を自動で操作する技術です。製造業に広く用いられ、手作業よりも高速で正...

CNC(コンピュータ数値制御)は、プログラムされたコンピュータ指示によって工作機械を自動で操作する技術です。製造業に広く用いられ、手作業よりも高速で正...


「金属・無機材料技術」の活用事例

もっと見る
金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...


ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...