宝の山の見つけ方 物流改善ネタ出し講座 (その2)

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【物流改善ネタ出し講座 連載目次】

1. なぜ物流は宝の山なのか

2. 宝の山の見つけ方

3. フォークリフトを考える

4. 荷姿の考察

5. 物流効率化の決め手、荷姿モジュール

6. 供給を考える

7. 回収作業について

8. 保管作業を考える

9. レイアウトの考察

10. 輸送は大きな宝の山

11. 物流業務の出来栄え評価

12. 物流のプロを育成しよう

1.物流の全体像を把握しよう

 
 前回の第1回に続いて解説します。宝の山を見つけるためにはあらかじめ出来るだけ多くの情報を入手しておく必要があります。そのためには自社の物流にはどのような機能があるのかについて知っておきましょう。
 
●物流機能には一般的に図1のようなものが定義されています。
 
                  info9871
図1.物流の諸機能
 
(1)「包装機能」これは物品の輸送や保管などの物流過程において、その価値及び状態を維持するような適当な材料または容器を使用して物品を保護することです。
 
(2)「荷役機能」これは生産工場内や生産から消費者への流通過程において、包装、保管、輸送の前後で付随して行われる、移動、ピッキング、仕分けなどの諸作業のことです。
 
(3)「輸送機能」これは物資と人との空間的隔たりを克服するための場所的な移動のことである。陸上、水上、空中の各輸送に分かれ、その選択は重要な要素となります。
 
(4)「保管機能」これは物品を貯蔵し管理することである。貯蔵に加えて物理的管理を行い、商品の価値を維持することも重要な役割です。
 
(5)「物流加工機能」これは物流過程において物品に対して直接付加価値を与える行為で、必要なサイズへの切断や製品へのクリップ付けなどの比較的簡単な加工や組立を行うことです。
 
 これら機能別に、現在実施している物流業務について内製、アウトソースのいずれかに関わらずどのようなことを実施しているかの洗い出しを最初に実施しておきましょう。このように整理することで物流情報が頭にインプットされ、物流に関する知識と関心が身につくことでしょう。
 

2.物流コストを把握しよう

 
 次に現在かかっている物流コストについて把握しよう。この物流コストの把握は上記で整理した物流機能ごとにそれぞれ年間でいくら要しているかについて調査していきます。
 
(1)「包装機能」では主として包装や荷姿に必要となる資材費や容器購入費、製品の詰め替えに要している費用、容器の補修費用などが挙げられます。
 
(2)「荷役機能」では主として工場内の物流人件費、アウトソース先への支払費、物流倉庫での人件費などが挙げられます。
 
(3)「輸送機能」では主として内製輸送を行っている場合の人件費やトラック等の償却費、アウトソース先への支払費、赤帽利用などの特別便支払費などが挙げられます。
 
(4)「保管機能」では主として工場内倉庫の土地代や建物償却費、外部倉庫への支払費、保管時に必要となるラックやフォークリフトの費用などが挙げられます。
 
(5)「物流加工機能」では加工場の土地代や建物償却費、エネルギー費、加工のための人件費、必要機材の費用などが挙げられます。
 
 これ以外に物流情報授受のための情報システム費用、物流管理スタッフにかかる人件費なども落とすことなく把握しましょう。物流にかかわる費用の中には製造原価に含まれているものもあるでしょうが、ここではその中からも抽出することで漏れのないようにすることを心がけましょう。
 
 またできれば調達先が負担している物流費もある程度推計でも良いので把握しておきます。サプライヤーからの納入品には必ず物流費が含まれています。それがどれくらいかかっているかを掴んでおけば将来的に調達物流改善を行う際に役立つことは間違いありません。この物流費も工場が調達部品費や調達資材費として間接的に支払っているのです。
 
 参考まで世の中の「売上高物流コスト比率」のデータを図2.に示します。これは毎年日本ロジスティクスシステム協会が行っている会員企業に対するアンケート調査結果です。皆さんの業界の平均値と上記で把握できた物流コストを売上高で除した値と比較してみましょう。もし業界平均値に比べて劣っていたとしたら早急に改善する必要があります。また平均値より勝っていたとしても業界トップを目指してさらに努力をしていきましょう。このようにまずは大きなくくりで自社の物流の実力を認識することが重要です。
 
  in43    
図2.業種別売上高物流コスト比率
 

3.宝の山への優先アプローチ

 
 物流コストを機能別に把握することで今まで見えていなかったさまざまな問題点に気づくかもしれません。思っていた以上に物流コストがかかっている業務を発見することもあるでしょう。この気づきがすなわち宝の山の存在への気づきだということになります。早速その中に埋まっている宝を掘りたくなるところですが、まずは冷静に優先順位を決めていくと良...
 

【物流改善ネタ出し講座 連載目次】

1. なぜ物流は宝の山なのか

2. 宝の山の見つけ方

3. フォークリフトを考える

4. 荷姿の考察

5. 物流効率化の決め手、荷姿モジュール

6. 供給を考える

7. 回収作業について

8. 保管作業を考える

9. レイアウトの考察

10. 輸送は大きな宝の山

11. 物流業務の出来栄え評価

12. 物流のプロを育成しよう

1.物流の全体像を把握しよう

 
 前回の第1回に続いて解説します。宝の山を見つけるためにはあらかじめ出来るだけ多くの情報を入手しておく必要があります。そのためには自社の物流にはどのような機能があるのかについて知っておきましょう。
 
●物流機能には一般的に図1のようなものが定義されています。
 
                  info9871
図1.物流の諸機能
 
(1)「包装機能」これは物品の輸送や保管などの物流過程において、その価値及び状態を維持するような適当な材料または容器を使用して物品を保護することです。
 
(2)「荷役機能」これは生産工場内や生産から消費者への流通過程において、包装、保管、輸送の前後で付随して行われる、移動、ピッキング、仕分けなどの諸作業のことです。
 
(3)「輸送機能」これは物資と人との空間的隔たりを克服するための場所的な移動のことである。陸上、水上、空中の各輸送に分かれ、その選択は重要な要素となります。
 
(4)「保管機能」これは物品を貯蔵し管理することである。貯蔵に加えて物理的管理を行い、商品の価値を維持することも重要な役割です。
 
(5)「物流加工機能」これは物流過程において物品に対して直接付加価値を与える行為で、必要なサイズへの切断や製品へのクリップ付けなどの比較的簡単な加工や組立を行うことです。
 
 これら機能別に、現在実施している物流業務について内製、アウトソースのいずれかに関わらずどのようなことを実施しているかの洗い出しを最初に実施しておきましょう。このように整理することで物流情報が頭にインプットされ、物流に関する知識と関心が身につくことでしょう。
 

2.物流コストを把握しよう

 
 次に現在かかっている物流コストについて把握しよう。この物流コストの把握は上記で整理した物流機能ごとにそれぞれ年間でいくら要しているかについて調査していきます。
 
(1)「包装機能」では主として包装や荷姿に必要となる資材費や容器購入費、製品の詰め替えに要している費用、容器の補修費用などが挙げられます。
 
(2)「荷役機能」では主として工場内の物流人件費、アウトソース先への支払費、物流倉庫での人件費などが挙げられます。
 
(3)「輸送機能」では主として内製輸送を行っている場合の人件費やトラック等の償却費、アウトソース先への支払費、赤帽利用などの特別便支払費などが挙げられます。
 
(4)「保管機能」では主として工場内倉庫の土地代や建物償却費、外部倉庫への支払費、保管時に必要となるラックやフォークリフトの費用などが挙げられます。
 
(5)「物流加工機能」では加工場の土地代や建物償却費、エネルギー費、加工のための人件費、必要機材の費用などが挙げられます。
 
 これ以外に物流情報授受のための情報システム費用、物流管理スタッフにかかる人件費なども落とすことなく把握しましょう。物流にかかわる費用の中には製造原価に含まれているものもあるでしょうが、ここではその中からも抽出することで漏れのないようにすることを心がけましょう。
 
 またできれば調達先が負担している物流費もある程度推計でも良いので把握しておきます。サプライヤーからの納入品には必ず物流費が含まれています。それがどれくらいかかっているかを掴んでおけば将来的に調達物流改善を行う際に役立つことは間違いありません。この物流費も工場が調達部品費や調達資材費として間接的に支払っているのです。
 
 参考まで世の中の「売上高物流コスト比率」のデータを図2.に示します。これは毎年日本ロジスティクスシステム協会が行っている会員企業に対するアンケート調査結果です。皆さんの業界の平均値と上記で把握できた物流コストを売上高で除した値と比較してみましょう。もし業界平均値に比べて劣っていたとしたら早急に改善する必要があります。また平均値より勝っていたとしても業界トップを目指してさらに努力をしていきましょう。このようにまずは大きなくくりで自社の物流の実力を認識することが重要です。
 
  in43    
図2.業種別売上高物流コスト比率
 

3.宝の山への優先アプローチ

 
 物流コストを機能別に把握することで今まで見えていなかったさまざまな問題点に気づくかもしれません。思っていた以上に物流コストがかかっている業務を発見することもあるでしょう。この気づきがすなわち宝の山の存在への気づきだということになります。早速その中に埋まっている宝を掘りたくなるところですが、まずは冷静に優先順位を決めていくと良いでしょう。ここで最初に考えなければならないことは「物流の原点は生産ラインサイドにあり」、ということです。再三申し上げているように工場では生産ラインにおける作業性が最優先課題です。これを阻害している要因があればそれを物流サービスによって解消することが先決です。つまり「物流を使って生産ラインの効率化」を図ることです。構内物流工数の削減を先に行ってはなりません。なぜならその結果として生産ラインへの物流サービスができなくなり、生産の効率化にブレーキがかかってしまうからです。
 
 この文書は、『日刊工業新聞社発行 月刊「工場管理」掲載』の記事を筆者により改変したものです。
 
  


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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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