不確かさの定義 計測の精度と不確かさとは(その4)

更新日

投稿日

 
  

【計測の精度と不確かさとは 連載目次】

 

測定の”不確かさ”という従来の“精度”に置き換わる概念が「世界中のどこでも共通の定義で扱える量」「計算や表現が規定される量」として、1993年以来ISOで提案され、国際規格や論文等の技術基盤として浸透しつつあります。今回と次回はこの考え方や方法について解説していきます。

 

 

【この連載の前回:計測の精度と不確かさとは(その3)へのリンク】

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!

 

4.「不確かさ」とは

(1) 基本スタンス

“不確かさ”は次のスタンスで組み立てられ、“精度”の課題を回避しています。

  • 計測の信頼性を表す“不確かさ”という新しい概念を導入する
  • “誤差”という概念を用いることなく、標準からのトレースをベースとする
  • 影響要因を加味した計算方法を規定することで一貫した信頼度の体系を構築する

 

(2) 定義

“不確かさ”は、各種の規定やガイド文書の中で、次のように規定されています。[1][2]

  • 計測の結果に付随した,合理的に測定対象量に結び付けられ得る値のばらつきを特徴づけるパラメータ(GUM,VIM2 , JIS Z8103)
  • 用いる情報に基づいて,測定対象量に帰属する量の値のばらつきを特徴付ける負でないパラメータ(VIM3)

 

つまり、“不確かさ”は計測結果の信頼性を示す指標であり、測定のばらつきを表しているということです。この考えの中では、従来の「系統誤差(計測値のかたより)」と「偶然誤差(ばらつき)」を分離せずに総合的に合成して表現することを意味しています。(既知のかたよりは予め計算・補正する前提)

 

このことは、図3のように計測の方法によって温度の影響がばらつきとして作用する場合とかたよりとして作用する場合があり、これをどちらとして計算するかは、ユーザが決定すべきであるという立場に立っていることになります。

 

 

測定の”不確かさ”は、測定を行った際の「その計測条件下での測定結果の信頼性」を評価するものです。従って「計測器の不確かさ」という表現は誤りで、仮に製品仕様書内にこのような記載があった場合は「計測器の校正の不確かさ」を慣用的な形で表していることになります。

 

【参考文献】
[1].ISO/IEC Guide 99:International Vocabulary of Metrology(VIM)国際計量計測用語):計量に関す...

 
  

【計測の精度と不確かさとは 連載目次】

 

測定の”不確かさ”という従来の“精度”に置き換わる概念が「世界中のどこでも共通の定義で扱える量」「計算や表現が規定される量」として、1993年以来ISOで提案され、国際規格や論文等の技術基盤として浸透しつつあります。今回と次回はこの考え方や方法について解説していきます。

 

 

【この連載の前回:計測の精度と不確かさとは(その3)へのリンク】

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!

 

4.「不確かさ」とは

(1) 基本スタンス

“不確かさ”は次のスタンスで組み立てられ、“精度”の課題を回避しています。

  • 計測の信頼性を表す“不確かさ”という新しい概念を導入する
  • “誤差”という概念を用いることなく、標準からのトレースをベースとする
  • 影響要因を加味した計算方法を規定することで一貫した信頼度の体系を構築する

 

(2) 定義

“不確かさ”は、各種の規定やガイド文書の中で、次のように規定されています。[1][2]

  • 計測の結果に付随した,合理的に測定対象量に結び付けられ得る値のばらつきを特徴づけるパラメータ(GUM,VIM2 , JIS Z8103)
  • 用いる情報に基づいて,測定対象量に帰属する量の値のばらつきを特徴付ける負でないパラメータ(VIM3)

 

つまり、“不確かさ”は計測結果の信頼性を示す指標であり、測定のばらつきを表しているということです。この考えの中では、従来の「系統誤差(計測値のかたより)」と「偶然誤差(ばらつき)」を分離せずに総合的に合成して表現することを意味しています。(既知のかたよりは予め計算・補正する前提)

 

このことは、図3のように計測の方法によって温度の影響がばらつきとして作用する場合とかたよりとして作用する場合があり、これをどちらとして計算するかは、ユーザが決定すべきであるという立場に立っていることになります。

 

 

測定の”不確かさ”は、測定を行った際の「その計測条件下での測定結果の信頼性」を評価するものです。従って「計測器の不確かさ」という表現は誤りで、仮に製品仕様書内にこのような記載があった場合は「計測器の校正の不確かさ」を慣用的な形で表していることになります。

 

【参考文献】
[1].ISO/IEC Guide 99:International Vocabulary of Metrology(VIM)国際計量計測用語):計量に関する国際的な用語集
[2].国際文書「GUM(Guide to the expression of Uncertainty in Measurement)」(ISO guide 98-3としても位置付けられている)

 

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

山本 裕之

個々の課題に最適な改善プロセスを適用することで、企画・開発業務の生産性を効果的に向上させるお手伝いをしています。

個々の課題に最適な改善プロセスを適用することで、企画・開発業務の生産性を効果的に向上させるお手伝いをしています。


「生産工学」の他のキーワード解説記事

もっと見る
受注生産工場のボトルネック工程基準の生産管理手法

 自動車部品などの製造工場では親工場からの受注は典型的な多品種少量生産を強いられています。背景として、海外生産・調達の増加により、国内で生産するものは、次...

 自動車部品などの製造工場では親工場からの受注は典型的な多品種少量生産を強いられています。背景として、海外生産・調達の増加により、国内で生産するものは、次...


計測信頼性の評価全般の課題 計測の精度と不確かさとは(その3)

     【計測の精度と不確かさとは 連載目次】 「精度」とは 計測条件の影響 計測信頼性の評価全般の課題 ...

     【計測の精度と不確かさとは 連載目次】 「精度」とは 計測条件の影響 計測信頼性の評価全般の課題 ...


ロボットSIerとは ロボットシステム構築の流れとは(その1)

 今回は、自社工場にロボットシステムを導入し、稼働することを対象にした同システム構築の流れを解説します。 1. 経営者から導入に向けた事前検討を始め、実...

 今回は、自社工場にロボットシステムを導入し、稼働することを対象にした同システム構築の流れを解説します。 1. 経営者から導入に向けた事前検討を始め、実...


「生産工学」の活用事例

もっと見る
静電気事故防止事例: 作業台はアースをしましょう

♦ ビスから放電 ~ 静電気対策の基本はアース ちょっとの工夫で快適な作業空間に  ある会社さんの作業台で静電気の電撃を感じました。おやっ...

♦ ビスから放電 ~ 静電気対策の基本はアース ちょっとの工夫で快適な作業空間に  ある会社さんの作業台で静電気の電撃を感じました。おやっ...


動作分析を通じた現場作業標準化のポイント

 今回は改善の基本、「標準化」に取り組んでいる現場で、うまくいっている事例とそうでない事例を解説します。  図1.「OTRS」コンセプト  O...

 今回は改善の基本、「標準化」に取り組んでいる現場で、うまくいっている事例とそうでない事例を解説します。  図1.「OTRS」コンセプト  O...


マシニングセンターの現実の精度とは

   今回は、マシニングセンターの精度についてオペレーターの方々に感じることを取り上げます。   1. テーブルの送り速度につい...

   今回は、マシニングセンターの精度についてオペレーターの方々に感じることを取り上げます。   1. テーブルの送り速度につい...