少子高齢化社会での企業経営 知的資産承継を考える (その1)

更新日

投稿日

1.少子高齢化社会での経営 

生産 我が国は、団塊世代の高年齢化と少子化の進展により、少子高齢化社会を迎え、世界最高水準の高齢化率となっています。内閣府が発表した平成27年高齢社会白書によれば、今後45年間で生産年齢人口(15~64歳の年齢層)が半減するという試算もあり、このような労働力の大幅減少は、日本のモノづくりのあり方を根本的に見直す時期にきています。
 
 つまり、国内の労働適齢期の人口が減るということは、働ける人口が減少することであり、現状の生産性を維持し続けるためには安定的な労働力の確保やICTなどを活用した生産性向上が必要となります。例えば労働力環境の整備では、外国人労働者や高齢者の活用、またはパート作業者などを有効的に活用する環境づくりが重要となるのです。
 

2.困難な知的資産の承継 

 生産年齢人口の構成比、15歳~24歳迄の若手と25歳~65歳迄の中高年の人員比率をみても大きな問題が潜んでいます。平成27年高齢社会白書によれば15歳~24歳迄の若手と25歳~65歳迄の中高年の人員比率が、2014年で1:10と1980年に比べ倍増しています。若手1人に対し、知的資産を承継する対象の中高年が10人も存在していることになります。この傾向は今後も増加することが確実となっています。
 
 このような労働環境にあって、安定的に経営を継続していくためには、労働者の減少や労働者の構成比率の歪みを前提として、多様な労働者が活躍できる労働環境が必要となります。例えば、中高年がもつ知的資産を見極め・絞り込み、多様な労働者に対応できるように知的資産を形式知化(見える化・標準化)する必要があるのです。
 

3.少子高齢化社会で生き残るための秘訣 

 また、少子高齢化社会にあって、労働力の減少や労働人口比率を前提として事業を継続的に続けていくには、少ない労働力で付加価値を発揮していくための圧倒的な生産性向上が必要となります。知的資産を、付加価値を発揮できる作業と標準化や効率化可能な作業に切り分けておく必要があります。例えば、知的資産を形式知化(標準化・効率化)が可能な技術と形式知化が難しい(暗黙知状態の)技能に分類し、技術と技能に分けた取り組みを行うのです。
 
 技術と技能に切り分けて効率化や付加価値向上を考えると、技術は文書やデータとして整理できるので、標準化やICTなどを活用し自動化することが可能となります。一方、技能は人間系で対応する必要があるの...

1.少子高齢化社会での経営 

生産 我が国は、団塊世代の高年齢化と少子化の進展により、少子高齢化社会を迎え、世界最高水準の高齢化率となっています。内閣府が発表した平成27年高齢社会白書によれば、今後45年間で生産年齢人口(15~64歳の年齢層)が半減するという試算もあり、このような労働力の大幅減少は、日本のモノづくりのあり方を根本的に見直す時期にきています。
 
 つまり、国内の労働適齢期の人口が減るということは、働ける人口が減少することであり、現状の生産性を維持し続けるためには安定的な労働力の確保やICTなどを活用した生産性向上が必要となります。例えば労働力環境の整備では、外国人労働者や高齢者の活用、またはパート作業者などを有効的に活用する環境づくりが重要となるのです。
 

2.困難な知的資産の承継 

 生産年齢人口の構成比、15歳~24歳迄の若手と25歳~65歳迄の中高年の人員比率をみても大きな問題が潜んでいます。平成27年高齢社会白書によれば15歳~24歳迄の若手と25歳~65歳迄の中高年の人員比率が、2014年で1:10と1980年に比べ倍増しています。若手1人に対し、知的資産を承継する対象の中高年が10人も存在していることになります。この傾向は今後も増加することが確実となっています。
 
 このような労働環境にあって、安定的に経営を継続していくためには、労働者の減少や労働者の構成比率の歪みを前提として、多様な労働者が活躍できる労働環境が必要となります。例えば、中高年がもつ知的資産を見極め・絞り込み、多様な労働者に対応できるように知的資産を形式知化(見える化・標準化)する必要があるのです。
 

3.少子高齢化社会で生き残るための秘訣 

 また、少子高齢化社会にあって、労働力の減少や労働人口比率を前提として事業を継続的に続けていくには、少ない労働力で付加価値を発揮していくための圧倒的な生産性向上が必要となります。知的資産を、付加価値を発揮できる作業と標準化や効率化可能な作業に切り分けておく必要があります。例えば、知的資産を形式知化(標準化・効率化)が可能な技術と形式知化が難しい(暗黙知状態の)技能に分類し、技術と技能に分けた取り組みを行うのです。
 
 技術と技能に切り分けて効率化や付加価値向上を考えると、技術は文書やデータとして整理できるので、標準化やICTなどを活用し自動化することが可能となります。一方、技能は人間系で対応する必要があるので、付加価値をさらに高めてもらうために高齢の熟練者に活躍してもらうのです。このように知的資産の継承を技術・技能として考え、少子高齢化社会で生き残るための対策を進めていくことが、今後強く求められているのです。
  
参考文献
・野中帝二:技術・技能伝承への取り組み、FRIコンサルティング最前線. Vol.1, p.138-143 (2008)
・野中帝二:モノづくりと技術・技能伝承、Vol.58 No.14 工場管理

   続きを読むには・・・


この記事の著者

野中 帝二

労働人口が減少する中、生産性を維持・向上しつつ、収益性を向上するための支援を行います。特に自律的な改善活動の醸成や少子高齢化での経営など労働環境変化に対応した解決策をサポート致します。

労働人口が減少する中、生産性を維持・向上しつつ、収益性を向上するための支援を行います。特に自律的な改善活動の醸成や少子高齢化での経営など労働環境変化に対応...


「技術・技能伝承」の他のキーワード解説記事

もっと見る
暗黙知の可視化プロセス 技術伝承とは(その8)

        前回のその7に続いて解説します。   3. 技術伝承:暗黙知の可視化 &nb...

        前回のその7に続いて解説します。   3. 技術伝承:暗黙知の可視化 &nb...


技術の伝え方 技術伝承とは(その1)

【技術伝承とは 連載目次】 1、技術の伝え方 2、技術を伝えるためには 3、少子高齢社会とものづくり 4、暗黙知の可視化の必要性 5、暗黙知...

【技術伝承とは 連載目次】 1、技術の伝え方 2、技術を伝えるためには 3、少子高齢社会とものづくり 4、暗黙知の可視化の必要性 5、暗黙知...


仕組みを作ればうまくいくという誤解 モノづくりと人材育成(その5)

【ものづくりの人材育成とは 連載目次】 1、進まない技術・技能伝承 2、誰でも技術・技能伝承できるという誤解 3、熟練者が技術・技能伝承に積極的...

【ものづくりの人材育成とは 連載目次】 1、進まない技術・技能伝承 2、誰でも技術・技能伝承できるという誤解 3、熟練者が技術・技能伝承に積極的...


「技術・技能伝承」の活用事例

もっと見る
【ものづくりの現場から】創業100年の家具工場が取り組む技術の継承(飛騨職人学舎)

図1、技術教育の様子   【特集】ものづくりの現場から一覧へ戻る ものづくりを現場視点で理解する「シリーズ『ものづくりの現場から』」で...

図1、技術教育の様子   【特集】ものづくりの現場から一覧へ戻る ものづくりを現場視点で理解する「シリーズ『ものづくりの現場から』」で...


メンテナンス作業へのパート社員活用 作業分解事例 (その2)

1.収益性が悪化したメンテナンス事業    前回のその1に続いて解説します。鉄道メンテナンス業のB社は、従業員20名(全て正社員)の中小企業...

1.収益性が悪化したメンテナンス事業    前回のその1に続いて解説します。鉄道メンテナンス業のB社は、従業員20名(全て正社員)の中小企業...


【ものづくりの現場から】特注・一品生産の現場づくり(研創)

  【特集】ものづくりの現場から一覧へ戻る ものづくりを現場視点で理解する「シリーズ『ものづくりの現場から』」では、現場の課題や課題解消...

  【特集】ものづくりの現場から一覧へ戻る ものづくりを現場視点で理解する「シリーズ『ものづくりの現場から』」では、現場の課題や課題解消...