顧客の心をつかむ新しい価値創造の方法とは、モノづくりからコトづくりにより製造業はどう変わるのか?

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顧客の心をつかむ新しい価値創造の方法とは「モノづくりからコトづくりへ」で製造業はどう変わるのか?

【目次】

    1. コトづくりへの変革の必要性

    製造業は、モノを作ることだけではなく、モノを通じて顧客に感動や満足を提供することが求められる時代になっています。この記事では、製造業におけるモノづくりからコトづくりへの変革の必要性とその具体的な方法について解説します。

     

    1.1. モノづくりからコトづくりへの変革の背景と意義

    製造業は、長年にわたってモノづくりによって競争力を高めてきました。しかし、グローバル化やデジタル化の進展により、モノのコモディティ化※1が進み、モノの価値が低下しています。また、顧客のニーズや価値観も多様化し、モノだけではなく、モノを使うことで得られるエクスペリエンス※2や経験価値を重視する傾向が強まっています。

     

    このような環境の変化に対応するために、製造業はモノづくりからコトづくりへと変革する必要があります。コトづくりとは、サービス・ドミナント・ロジック※3(SDL)に基づくビジネスモデルのことで、顧客のエクスペリエンスや経験価値を重視したサービスの提供や価値の共創を行うことです。つまり、製造業のサービス化※4です。コトづくりによって、製造業は顧客の心をつかみ、新しい価値を創造することができます。

     

    1.2. コトづくりの形態

    コトづくりには、自社のコアビジネスの延長上にあるサービス化と、顧客の新たな価値を見据えたエコシステム型のサービス化の2つの形態があります。前者は自社が製造したモノに対するサービス提供であり、後者は新たなプレーヤーやパートナーと協創して顧客のニーズに応える形態です。

     

    2. 自社のコアビジネスの延長上にあるサービス化の事例と効果

    2.1. コマツの「スマートコンストラクション」※5

    コマツは、建設機械にICTやIoTを活用した「スマートコンストラクション」を提供しています。これにより、建設現場の効率化や品質向上が図られ、安全性や生産性が向上します。スマートコンストラクションは、建設機械の位置や動きをリアルタイムに把握し、最適な施工計画や作業指示を行うことでこれらのメリットを生み出します。ただし、建設現場の環境や関係者の理解が必要であるという課題も存在します。

     

    2.2. エプソン販売の「スマートチャージ」※6

    エプソン販売は、インクジェットプリンターに「スマートチャージ」を提供しています。このサービスでは、プリンターの使用量に応じてインク代を支払い、自動的にインクが届けられる仕組みです。スマートチャージは、プリンターの購入時に高額なインク代を支払う必要がなくなり、インクの残量を気にせず必要な時にプリントできるメリットがあります。ただし、プリンターの使用量が少ない場合や他社のインクに問題がある場合が課題となります。

     

    3. 顧客の新たな価値を見据えたエコシステム型のサービス化の事例と効果

    3.1. 自動運転の普及に伴う車内での過ごし方の変化

    自動運転技術の進展により、車内での過ごし方が重要視されるようになりました。製造業は車内でのエンターテイメントやコミュニケーションなどのサービスを提供するエコシステムを構築しています。例えば、パナソニックが車内での音楽や映像などのエンターテイメントサービスを提供する「パナソニック・コネクテッド・ソリューションズ・カンパニー」を設立しました。これにより、車の売り切りから使用量に応じた課金モデルに移行し、収益の安定化や顧客との長期的な関係構築が可能になりました。

     

    3.2. 人の身体動作をとらえるセンサーを活用したIoTビジネス

    製造業は人の身体動作をとらえるセンサーを活用して新たな価値を生み出しています。例えば、オムロンは「OMRON connect 2.0」を開発し、心拍数や血圧、歩数や消費カロリーなどを測定してアスリート支援やヘルスケアなどのサービスを提供しています。同様に、NECは「NEC the WISE IoT Platform」を開発し、生産現場や労務管理、健康管理などのサービスを提供しています。これらのサービスは製造業の生産性や品質、安全性、健康性の向上に寄与し、センサーを活用したデータ収集と分析によって、効率的な業務管理や作業の正確性向上、作業者の健康管理が実現されています。

     

    ◆関連解説記事:マーケティングにおける4Pと4C

    4. テクノロジーの活用、新たなプレーヤーとの連携

    製造業においてモノづくりからコトづくりへの変革が求められる中、自社の強みや顧客のニーズを理解し、コアビジネスの延長上にあるサービス化とエコシステム型のサービス化に注力することが重要です。事例を通じて見てきたように、コトづくりは製造業において顧客の心をつかみ、新しい価値を創造する手段となり得ます。それにはテクノロジーの活用や新たなプレーヤーとの連携が欠かせません。

     

    「モノづくりからコトづくりへ」この変革を通じて、製造業は顧客との強固な関係構築や収益の安定化を実現できます...

    顧客の心をつかむ新しい価値創造の方法とは「モノづくりからコトづくりへ」で製造業はどう変わるのか?

    【目次】

      1. コトづくりへの変革の必要性

      製造業は、モノを作ることだけではなく、モノを通じて顧客に感動や満足を提供することが求められる時代になっています。この記事では、製造業におけるモノづくりからコトづくりへの変革の必要性とその具体的な方法について解説します。

       

      1.1. モノづくりからコトづくりへの変革の背景と意義

      製造業は、長年にわたってモノづくりによって競争力を高めてきました。しかし、グローバル化やデジタル化の進展により、モノのコモディティ化※1が進み、モノの価値が低下しています。また、顧客のニーズや価値観も多様化し、モノだけではなく、モノを使うことで得られるエクスペリエンス※2や経験価値を重視する傾向が強まっています。

       

      このような環境の変化に対応するために、製造業はモノづくりからコトづくりへと変革する必要があります。コトづくりとは、サービス・ドミナント・ロジック※3(SDL)に基づくビジネスモデルのことで、顧客のエクスペリエンスや経験価値を重視したサービスの提供や価値の共創を行うことです。つまり、製造業のサービス化※4です。コトづくりによって、製造業は顧客の心をつかみ、新しい価値を創造することができます。

       

      1.2. コトづくりの形態

      コトづくりには、自社のコアビジネスの延長上にあるサービス化と、顧客の新たな価値を見据えたエコシステム型のサービス化の2つの形態があります。前者は自社が製造したモノに対するサービス提供であり、後者は新たなプレーヤーやパートナーと協創して顧客のニーズに応える形態です。

       

      2. 自社のコアビジネスの延長上にあるサービス化の事例と効果

      2.1. コマツの「スマートコンストラクション」※5

      コマツは、建設機械にICTやIoTを活用した「スマートコンストラクション」を提供しています。これにより、建設現場の効率化や品質向上が図られ、安全性や生産性が向上します。スマートコンストラクションは、建設機械の位置や動きをリアルタイムに把握し、最適な施工計画や作業指示を行うことでこれらのメリットを生み出します。ただし、建設現場の環境や関係者の理解が必要であるという課題も存在します。

       

      2.2. エプソン販売の「スマートチャージ」※6

      エプソン販売は、インクジェットプリンターに「スマートチャージ」を提供しています。このサービスでは、プリンターの使用量に応じてインク代を支払い、自動的にインクが届けられる仕組みです。スマートチャージは、プリンターの購入時に高額なインク代を支払う必要がなくなり、インクの残量を気にせず必要な時にプリントできるメリットがあります。ただし、プリンターの使用量が少ない場合や他社のインクに問題がある場合が課題となります。

       

      3. 顧客の新たな価値を見据えたエコシステム型のサービス化の事例と効果

      3.1. 自動運転の普及に伴う車内での過ごし方の変化

      自動運転技術の進展により、車内での過ごし方が重要視されるようになりました。製造業は車内でのエンターテイメントやコミュニケーションなどのサービスを提供するエコシステムを構築しています。例えば、パナソニックが車内での音楽や映像などのエンターテイメントサービスを提供する「パナソニック・コネクテッド・ソリューションズ・カンパニー」を設立しました。これにより、車の売り切りから使用量に応じた課金モデルに移行し、収益の安定化や顧客との長期的な関係構築が可能になりました。

       

      3.2. 人の身体動作をとらえるセンサーを活用したIoTビジネス

      製造業は人の身体動作をとらえるセンサーを活用して新たな価値を生み出しています。例えば、オムロンは「OMRON connect 2.0」を開発し、心拍数や血圧、歩数や消費カロリーなどを測定してアスリート支援やヘルスケアなどのサービスを提供しています。同様に、NECは「NEC the WISE IoT Platform」を開発し、生産現場や労務管理、健康管理などのサービスを提供しています。これらのサービスは製造業の生産性や品質、安全性、健康性の向上に寄与し、センサーを活用したデータ収集と分析によって、効率的な業務管理や作業の正確性向上、作業者の健康管理が実現されています。

       

      ◆関連解説記事:マーケティングにおける4Pと4C

      4. テクノロジーの活用、新たなプレーヤーとの連携

      製造業においてモノづくりからコトづくりへの変革が求められる中、自社の強みや顧客のニーズを理解し、コアビジネスの延長上にあるサービス化とエコシステム型のサービス化に注力することが重要です。事例を通じて見てきたように、コトづくりは製造業において顧客の心をつかみ、新しい価値を創造する手段となり得ます。それにはテクノロジーの活用や新たなプレーヤーとの連携が欠かせません。

       

      「モノづくりからコトづくりへ」この変革を通じて、製造業は顧客との強固な関係構築や収益の安定化を実現できます。モノを提供するだけではなく、サービスや経験を通じて顧客とのつながりを深め、持続可能な競争力を確立していくことが必要です。製造業はこれからますます変化する市場において、柔軟性と革新性を持ち、顧客との信頼関係を築くことで成功を収めるでしょう。

       

      <脚注>
      ※1:コモディティ化とは、製品やサービスが多数の類似商品になり、価格競争に影響を及ぼすこと。コモディティ化の原因は、供給過多や技術力の向上など
      ※2:エクスペリエンスとは、英語で「経験」や「体験」という意味の単語。ITやビジネスの用語としては、人間がある特定の対象物(機器やシステム、サービス、組織など)との関わりを通じて得られる体験の総体、およびそこから生じる印象や認識のことをエクスペリエンスと言う
      ※3:サービス・ドミナント・ロジック(SDL)とは、企業と顧客が一緒に価値を生むサービス中心のマーケティング。これは、モノ中心のマーケティング(GDL)に代わる新しい考え方。
      URL: https://mtame.jp/marketing_foundation/SDL/
      ※4:製造業のサービス化には、自社のビジネスに関連するサービス化と、顧客のニーズに応えるエコシステム型のサービス化がある。これらは、「製造業のサービス化」という書籍で紹介されている。 amazon.co.jp
      ※5:スマートコンストラクションとは、コマツのICTやIoTを使った建設現場のソリューション。
      https://kcsj.komatsu/ict/smartconstruction
      ※6:スマートチャージとは、エプソンのインクジェットプリンターの使用量に応じて料金が変わるサービス。URL:https://shop.epson.jp/

       

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      この記事の著者

      森内 眞

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