イキイキ感をプラスにする!「ポジティブ心理学」【出会い編】

更新日

投稿日

【ポジティブ心理学 連載目次】

 

◆関連解説記事 ものづくり現場を『より良くする』、ポジティブ・アプローチの応用とは 

◆関連解説記事 「ポジティブな感情が明日を開く」とは 

 ここでご紹介する「ポジティブ心理学」は21世紀のキーとなるアプローチの一つと期待されています。 

 「ポジティブ心理学」を一言でいうと、「個人や集団が、もっとイキイキするにはどうすれば良いのか?」を研究している学問領域です。目的が宗教に近いのではと思われるかも知れませんが、あくまで科学的に、そして現実的にアプローチしています。

 今まで、心理学は主にトラウマや恐れ、不安、鬱などといったネガティブな精神の状態に注目し、マイナスをゼロに回復させるための心理療法をたくさん生みだし、大きな成果を上げてきました。でも、「世の中はゼロ以上の通常の状態の人が多くを占めるのだから、その人たちのやりがいやイキイキ感をもっとプラスにすること、すなわち『幸せ』の研究も必要だ。」ということを、1998年に当時米国心理学会会長だったペンシルバニア大学教授のマーチン・セリグマン博士が提唱し、始められた最も新しい心理学の領域です。

 自己啓発や人生前向きに考えろ、といった単純なものではなく、幸福、楽観と悲観、困難の克服、強み、充実感と快楽、勇気と忍耐などを研究対象とし、科学的・統計的に実証し、ポジティブな感情がもたらす成果やその応用を研究しています。

 

 私は、もともとは開発畑の人間でオーディオアンプを極め、レーザーカラオケを世に出したりしてきましたが、ひょんなことから「これからはCS(Customer Satisfaction)が大切だ!」と気付き、今から14年ほど前にそのことをトップに提案、「CS経営推進室」を立ち上げ、グループ会社を含む全社的な活動を3人でスタートさせました。

 経営品質向上プログラムをベースに、グローバルなCS経営推進体制の確立、セルフアセスメントやCS調査、社員意識調査による組織の健康診断、改善に向けたシックスシグマの試行やバランス・スコアカードの導入と教育など、全社を対象に推進してきました。日本経営品質賞にもチャレンジし受賞も果たすことができました。

 そして、7年ほど前、現場での推進の命を受け子会社に出向したのですが、どうもうまくいきません。現場は本部とは随分と様子が違い、若く新しい会社です。そして市場環境も大分違い、未成熟で激変する業界で活動を展開しています。組織の意志も違いますし、経営のスピード感も違う。アセスメントをしようにも、わずか3か月の間に市場環境はどんどん変わってしまいます。本部と同じ方法は通用しないな、と痛切に感じどうすればよいのか本当に悩んでしまいました。

 ことの発端は数年前に実施した社員意識調査でした。組織風土の満足度が大分低下しているという課題が浮き彫りになりました。組織の急成長により一人ひとりの顔が見えにくくなり、あちこちに見えない壁ができていたのです。このときから組織風土改革の旅が始まりました。

 「このままでは、どんなにいい経営手法や仕組みを入れようとしてもうまくいかない。まずはコミュニケーションを活性化させることが先だ。」と考え、経営層、マネジャー層のオフサイトミーティングや1年がかりの経営の現場訪問会、コーチングやファシリテーション研修、などなど、本部にいたときとは全く違う側面での活動を進めました。

開発畑の私としては、理論で割り切れない人間的な側面は全く苦手、でもやるしかありませんでした。組織変更やローテーション、人事評価制度の一新、全社員への方針伝達、企業価値観の見直しなど、経営としての取り組みも進められ、組織風土の満足度は大分回復しましたが、まだ「普通」レベル。日本、いや世界で一番元気で素晴らしい会社にするには、まだまだ足りません。

 「コミュニケーションという畑の耕しはしてきたけれど、みんなイキイキしているとはいえないな。次はどんな肥料を撒いたらいいのだろう。」と考えていたとき、ちょうど「ポジティブ心理学」に巡り合いました。

 日本ファシリテーション協会の定例会で「ポジティブ心理学」を応用した“PAL(Positive Action Learning )”というワーク...

【ポジティブ心理学 連載目次】

 

◆関連解説記事 ものづくり現場を『より良くする』、ポジティブ・アプローチの応用とは 

◆関連解説記事 「ポジティブな感情が明日を開く」とは 

 ここでご紹介する「ポジティブ心理学」は21世紀のキーとなるアプローチの一つと期待されています。 

 「ポジティブ心理学」を一言でいうと、「個人や集団が、もっとイキイキするにはどうすれば良いのか?」を研究している学問領域です。目的が宗教に近いのではと思われるかも知れませんが、あくまで科学的に、そして現実的にアプローチしています。

 今まで、心理学は主にトラウマや恐れ、不安、鬱などといったネガティブな精神の状態に注目し、マイナスをゼロに回復させるための心理療法をたくさん生みだし、大きな成果を上げてきました。でも、「世の中はゼロ以上の通常の状態の人が多くを占めるのだから、その人たちのやりがいやイキイキ感をもっとプラスにすること、すなわち『幸せ』の研究も必要だ。」ということを、1998年に当時米国心理学会会長だったペンシルバニア大学教授のマーチン・セリグマン博士が提唱し、始められた最も新しい心理学の領域です。

 自己啓発や人生前向きに考えろ、といった単純なものではなく、幸福、楽観と悲観、困難の克服、強み、充実感と快楽、勇気と忍耐などを研究対象とし、科学的・統計的に実証し、ポジティブな感情がもたらす成果やその応用を研究しています。

 

 私は、もともとは開発畑の人間でオーディオアンプを極め、レーザーカラオケを世に出したりしてきましたが、ひょんなことから「これからはCS(Customer Satisfaction)が大切だ!」と気付き、今から14年ほど前にそのことをトップに提案、「CS経営推進室」を立ち上げ、グループ会社を含む全社的な活動を3人でスタートさせました。

 経営品質向上プログラムをベースに、グローバルなCS経営推進体制の確立、セルフアセスメントやCS調査、社員意識調査による組織の健康診断、改善に向けたシックスシグマの試行やバランス・スコアカードの導入と教育など、全社を対象に推進してきました。日本経営品質賞にもチャレンジし受賞も果たすことができました。

 そして、7年ほど前、現場での推進の命を受け子会社に出向したのですが、どうもうまくいきません。現場は本部とは随分と様子が違い、若く新しい会社です。そして市場環境も大分違い、未成熟で激変する業界で活動を展開しています。組織の意志も違いますし、経営のスピード感も違う。アセスメントをしようにも、わずか3か月の間に市場環境はどんどん変わってしまいます。本部と同じ方法は通用しないな、と痛切に感じどうすればよいのか本当に悩んでしまいました。

 ことの発端は数年前に実施した社員意識調査でした。組織風土の満足度が大分低下しているという課題が浮き彫りになりました。組織の急成長により一人ひとりの顔が見えにくくなり、あちこちに見えない壁ができていたのです。このときから組織風土改革の旅が始まりました。

 「このままでは、どんなにいい経営手法や仕組みを入れようとしてもうまくいかない。まずはコミュニケーションを活性化させることが先だ。」と考え、経営層、マネジャー層のオフサイトミーティングや1年がかりの経営の現場訪問会、コーチングやファシリテーション研修、などなど、本部にいたときとは全く違う側面での活動を進めました。

開発畑の私としては、理論で割り切れない人間的な側面は全く苦手、でもやるしかありませんでした。組織変更やローテーション、人事評価制度の一新、全社員への方針伝達、企業価値観の見直しなど、経営としての取り組みも進められ、組織風土の満足度は大分回復しましたが、まだ「普通」レベル。日本、いや世界で一番元気で素晴らしい会社にするには、まだまだ足りません。

 「コミュニケーションという畑の耕しはしてきたけれど、みんなイキイキしているとはいえないな。次はどんな肥料を撒いたらいいのだろう。」と考えていたとき、ちょうど「ポジティブ心理学」に巡り合いました。

 日本ファシリテーション協会の定例会で「ポジティブ心理学」を応用した“PAL(Positive Action Learning )”というワークが行われました。講師を務めた一般社団法人ポジティブイノべーションセンター(http://positiveinnovation.org/)の渡辺 誠さんの、「人間できていないことを『なぜ?なぜ?』と掘り下げられるとどんどん元気がなくなってしまいます。できていることを膨らませていけばどんどん元気になりますよ。」という言葉にピーンと来るものがありました。

 イキイキとした組織をつくり上げるためには、経営品質やバランス・スコアカードなどの経営手法、コーチングやファシリテーションなどのコミュニケーション手法だけでなく、人間の心理的内面にまで入っていく必要があると感じました。 

 そして、社内の組織風土改革を次のステージに進めるべく、現在ポジティブイノベーションセンターの運営にも参加し、主にビジネス領域での「ポジティブ心理学」の応用研究を仲間と一緒に楽しく進めています。隔月の「「ポジティブ心理学」応用研究会(PPAL)」や「強み発見活用セミナー」の開発・実施などに関わりながら、ヒトや組織をイキイキさせるヒントをたくさんもらっています。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

末吉 進

イキイキとした生産性の高い個人と組織づくりをサポートいたします

イキイキとした生産性の高い個人と組織づくりをサポートいたします


「人財教育・育成」の他のキーワード解説記事

もっと見る
ものづくり現場の体質改善から人財育成を考える(その1)

【ものづくり現場の人財育成 連載目次】 1.人が育てば相互にベクトルが合い、企業の体質が強くなる 2.仕事を覚えたい気持ちにさせる 3.品質...

【ものづくり現場の人財育成 連載目次】 1.人が育てば相互にベクトルが合い、企業の体質が強くなる 2.仕事を覚えたい気持ちにさせる 3.品質...


内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その1)

  【この連載の前回:“技術文書を書くこと”について考える(その4)へのリンク】  今回から、「内容が...

  【この連載の前回:“技術文書を書くこと”について考える(その4)へのリンク】  今回から、「内容が...


内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その19)

  1.解説した“書き方”の整理 「6つのルールと18の書き方」に関し「6つのルール」および「18の書き方」の概...

  1.解説した“書き方”の整理 「6つのルールと18の書き方」に関し「6つのルール」および「18の書き方」の概...


「人財教育・育成」の活用事例

もっと見る
伝えることの難しさ

1. 自分では当たり前でも、相手にとっては当たり前ではないことだらけ  人前で話をする機会が増えましたが、その都度、話すこと、伝えることの難しさを感...

1. 自分では当たり前でも、相手にとっては当たり前ではないことだらけ  人前で話をする機会が増えましたが、その都度、話すこと、伝えることの難しさを感...


引き継ぎ資料で押さえるポイントとは

 四半期末や年度末、退職のタイミングで自身の業務を次の担当者に引き継ぐことは誰しも経験があるのではないでしょうか。今回は業務引き継ぎ資料の作成で押さえ...

 四半期末や年度末、退職のタイミングで自身の業務を次の担当者に引き継ぐことは誰しも経験があるのではないでしょうか。今回は業務引き継ぎ資料の作成で押さえ...


人を誉める時は順番を考えよ -クリーン化診断の例を添えて-

 前回は人を誉める時のタイミングについてでした。今回はその順番についてお話します。 1.誉める順番を考える  現場に行って、「あれがいけない、これがい...

 前回は人を誉める時のタイミングについてでした。今回はその順番についてお話します。 1.誉める順番を考える  現場に行って、「あれがいけない、これがい...