材料に外力を加えるとやがて変形が大きくなり、弾性変形から塑性変形に移行します。
塑性変形は、金属をはじめ結晶構造を持つ材料でよく観察されますが、プラスチックなどの非晶質材料でも荷重条件によっては塑性変形が見られます。
プラスチックは、セラミックス、金属と肩を並べる3大材料の一つと言われています。他の材料と比べてプラスチックは、比較的低い温度で成形でき、軽量なために様々な成形加工法が開発され、日用品から輸送機器に至るまで広域な分野で使用されています。
金属材料の対極にあるプラスチックの性質の中でも応力とひずみの関係は、最も基本的かつ重要な性質の一つです。材料力学は基本的に材料が弾性変形することを前提にしていますが、弾性変形以外の部分も含めて、材料の性質を分かりやすく示すために用いられるのが応力-ひずみ曲線です。今回は、降伏点とは何かを解説します。
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1. 降伏点とは
材料に力を加えていくと、初期は力の大きさに比例してばねのように変形しますが、やがて変形が大きくなります。この変形が大きくなる力を降伏点などと呼んでいます。降伏点の前を弾性、後を塑性と呼びます。弾性の範囲では、力を取り除くと元の形に戻りますが、降伏点を超えて塑性の範囲まで力を加えると、変形が大きくなる力はこれを取り除いても元に戻らず変形が残ります。機械・構造物の構成部品は弾性範囲内使用が前提で、部品の設計に降伏点はよく使われています。
弾性材料の場合、応力とひずみの関係は図1のように直線状になりますが、実際には材料の種類や測定条件によって様々な曲線を描きます。応力とひずみの関係をグラフ上にプロットしたものを応力-ひずみ曲線(S-S曲線)と呼び、これは材料特性を示すことに用います。材料の強さは応力-ひずみ曲線を使って定義されています。
図1. 応力とひずみの関係(軟鋼の例)
応力が増えずにひずみが増える最初の部分(曲線の凸部分)を降伏点、その時の応力を降伏応力といいます。また、材料が破断、せん断する時の応力は破壊応力です。材料によって降伏点が現れるものと現れないものがあり、降伏点が現れるものは降伏応力を、降伏点が現れないものは破壊応力を材料の強さとすることが多いのです。
2. 降伏点の単位
降伏点の単位は、応力度や引張強度の単位と同じN/m㎡です。
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3. 降伏点の計算方法
降伏点は、降伏応力を求める事であり、降伏応力まではフックの法則で計算できます。
引張力が作用する鋼材の応力は下式で算定します。
降伏点の計算式
σ=P/A
- σ=応力
- P=引張力
- A=断面積
ひずみ値がある場合はヤング係数は一定なので応力計算ができます。
σ=Eε
- σ=応力
- E=ヤング係数
- ε=ひずみ
降伏点の計算について解説
応力-ひずみ曲線の特徴は材料種類によって異なります。以下のイラストでは降伏点が存在する金属とそれが存在しないものを紹介しました。
鋼材に引っ張り荷重を加えていくと、ある荷重を境に塑性(永久)変形が生じる。このときの荷重が「降伏点」であり、さらに荷重を加えていくと鋼材は塑性変形しながら伸び、やがて破断に至る。このときの荷重が「引っ張り強さ」であり、鋼材の場合には降伏点の1.2~1.5倍くらいになる。日本では、鋼材の強度は「引っ張り強さ」で表されるが、欧州では「降伏点」が用いられる。
図2. ...