メーカーへの提案依頼書作成 ロボットシステム構築の流れとは(その2)

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 今回はその1に続き、自社工場にロボットシステムを導入し、稼働することを前提とした同システム構築の流れを解説します。

【ロボットSIer・ロボットメーカーへの提案依頼書作成】

(1)提案依頼書(RFP)案を作成

 図4の記載例を参考に提案依頼書(RFP:Request For Proposal)案を作成して関連部署との情報共有を進めながらブラッシュアップして、RFPの合意形成を図ります。

デジタル工学

図4.提案依頼書の例

(2)提案依頼先の選定

 ロボットSIer・ロボットメーカーから複数の候補を選定します。中でも、専門事業者であるロボットSIerとの連携が重要です。ロボットメーカーと導入企業をつなぐ役割を担っているのがロボットSIerです。ロボットを初めて導入する企業にとっては、ロボットSIerとの密接な関係を構築できるかどうかが、導入の成否に関わってくる重要なポイントです。

(3)RFPと提案依頼先の承認

 経営者は産業用ロボット導入の費用対効果を検討した上で、RFPを承認します。

(4)ロボットSIer・ロボットメーカーなどへのRFPの提示

 ロボットSIer・ロボットメーカーなどへRFPを提示します。その際は、双方の不明点をなくすように心掛けましょう。

(5)ロボット設置のためのハード面の検討

 外部の連携先のアドバイスも活用しながら、作業工程の見直しに並行して、工場全体のレイアウトや動線の見直し、ロボット導入の可能なスペースなどについて検討します。特に、ロボットを設置する現場の環境条件やレイアウト上の制約については、事前に調査しておく必要があります。

(6)ロボット設置のためのソフト面の検討

 工場新設以外で多くの場合、既存のラインを活用しながら、新たにロボットを導入することになります。また、新規にラインを創設する場合でも、既存のシステムや使用しているソフトウェアを活用するかどうかなど、幅広い観点から検討が必要となります。

(7)ロボット導入のための社内人材の育成

 ロボット導入においては、社内人材の育成も必要です。メンテナンスをロボットSIerやロボットメーカーに依頼しても、日常の操作やティーチ ングは、社内人材が担当する必要があります。また、事業者はティーチングや関連作業に労働者を就かせるときには、その全員に「労働安全衛生規則第36条第31号、第32号」に基づいた安全教育、ならびに「労働安全衛生規則第59条第3項」に基づき、特別教育を行うことが義務付けられています。

(8)ロボット導入のための経営面での検討

 導入費用、導入スケジュール、既存設備との関係、人材配置など、ロボットの導入は経営のあらゆる側面に影響を与えます。そこで、経営者は社内の検討チームやロボットSIerなどから情報収集を行ってからの決断が必要です。

(9)ロボット導入のための仕様決定

 ロボットメーカーやロボットSIerの協力を得ながら、自社に必要で最適なロボットを発注するために仕様書を作成します。

(10)ロボット導入スケジュール

 仕様書を作成し、発注までのプロセスやロボットの設置・導入・ティーチングなども含めたスケジュールを立てます。

(11)活用可能な支援施策の検討

 必要に応じて、経済産業省をはじめとした国や自治体などの支援施策の活用を検討しましょう。

(12)製造、納入前テスト

 設計に基づきロボットシステムの製造やプログラミングを行います。契約通りのものができ上がれば検収して運用開始となります。

(13)本稼働開始、保守・点検

 ロボットシステム稼働後も定期点検を行い、不具合があれば修正します。システムの障害発生時には、復旧支援を行います。

 

【生産ラインの自動化におけるステップ】

【ロボット単体での導入】

 「生産ラインの自動化」といっても、人が行っている作業をすべてロボットに充てる必要はありません。本当にロボットが必要な場所に導入することで生産効率は大きく向上します。そのためには、自動化のレベルを知っておくことが大事です。そこで、生産ラインの自動化におけるステップを簡単に紹介します。

レベル0:すべて手作業

 全ての作業を人が行っている状態です。一部分でもロボットを導入したほうが生産性が上がる可能性が高いため、導入を検討すべきです。

レベル1:一部が手作業、ロボット単体での導入

 作業者が機械にセットして、加工はロボットが行う状態です。または、チェックを機械が行うなど、一部に手作業が必要な状態で...

 

 今回はその1に続き、自社工場にロボットシステムを導入し、稼働することを前提とした同システム構築の流れを解説します。

【ロボットSIer・ロボットメーカーへの提案依頼書作成】

(1)提案依頼書(RFP)案を作成

 図4の記載例を参考に提案依頼書(RFP:Request For Proposal)案を作成して関連部署との情報共有を進めながらブラッシュアップして、RFPの合意形成を図ります。

デジタル工学

図4.提案依頼書の例

(2)提案依頼先の選定

 ロボットSIer・ロボットメーカーから複数の候補を選定します。中でも、専門事業者であるロボットSIerとの連携が重要です。ロボットメーカーと導入企業をつなぐ役割を担っているのがロボットSIerです。ロボットを初めて導入する企業にとっては、ロボットSIerとの密接な関係を構築できるかどうかが、導入の成否に関わってくる重要なポイントです。

(3)RFPと提案依頼先の承認

 経営者は産業用ロボット導入の費用対効果を検討した上で、RFPを承認します。

(4)ロボットSIer・ロボットメーカーなどへのRFPの提示

 ロボットSIer・ロボットメーカーなどへRFPを提示します。その際は、双方の不明点をなくすように心掛けましょう。

(5)ロボット設置のためのハード面の検討

 外部の連携先のアドバイスも活用しながら、作業工程の見直しに並行して、工場全体のレイアウトや動線の見直し、ロボット導入の可能なスペースなどについて検討します。特に、ロボットを設置する現場の環境条件やレイアウト上の制約については、事前に調査しておく必要があります。

(6)ロボット設置のためのソフト面の検討

 工場新設以外で多くの場合、既存のラインを活用しながら、新たにロボットを導入することになります。また、新規にラインを創設する場合でも、既存のシステムや使用しているソフトウェアを活用するかどうかなど、幅広い観点から検討が必要となります。

(7)ロボット導入のための社内人材の育成

 ロボット導入においては、社内人材の育成も必要です。メンテナンスをロボットSIerやロボットメーカーに依頼しても、日常の操作やティーチ ングは、社内人材が担当する必要があります。また、事業者はティーチングや関連作業に労働者を就かせるときには、その全員に「労働安全衛生規則第36条第31号、第32号」に基づいた安全教育、ならびに「労働安全衛生規則第59条第3項」に基づき、特別教育を行うことが義務付けられています。

(8)ロボット導入のための経営面での検討

 導入費用、導入スケジュール、既存設備との関係、人材配置など、ロボットの導入は経営のあらゆる側面に影響を与えます。そこで、経営者は社内の検討チームやロボットSIerなどから情報収集を行ってからの決断が必要です。

(9)ロボット導入のための仕様決定

 ロボットメーカーやロボットSIerの協力を得ながら、自社に必要で最適なロボットを発注するために仕様書を作成します。

(10)ロボット導入スケジュール

 仕様書を作成し、発注までのプロセスやロボットの設置・導入・ティーチングなども含めたスケジュールを立てます。

(11)活用可能な支援施策の検討

 必要に応じて、経済産業省をはじめとした国や自治体などの支援施策の活用を検討しましょう。

(12)製造、納入前テスト

 設計に基づきロボットシステムの製造やプログラミングを行います。契約通りのものができ上がれば検収して運用開始となります。

(13)本稼働開始、保守・点検

 ロボットシステム稼働後も定期点検を行い、不具合があれば修正します。システムの障害発生時には、復旧支援を行います。

 

【生産ラインの自動化におけるステップ】

【ロボット単体での導入】

 「生産ラインの自動化」といっても、人が行っている作業をすべてロボットに充てる必要はありません。本当にロボットが必要な場所に導入することで生産効率は大きく向上します。そのためには、自動化のレベルを知っておくことが大事です。そこで、生産ラインの自動化におけるステップを簡単に紹介します。

レベル0:すべて手作業

 全ての作業を人が行っている状態です。一部分でもロボットを導入したほうが生産性が上がる可能性が高いため、導入を検討すべきです。

レベル1:一部が手作業、ロボット単体での導入

 作業者が機械にセットして、加工はロボットが行う状態です。または、チェックを機械が行うなど、一部に手作業が必要な状態です。多くの企業はこの段階で工場を動かしている割合が高いでしょう。この段階でのメリットとしては、人的要因による品質のバラツキを減らすことができ、生産性の向上も期待できます。 

【生産ラインを組む場合】

レベル2:ほぼ自動化、ラインを組む

 製品を操作したり、加工したりするのはすべてロボットが行っている状態です。作業者は修正やロボットの調整のみを行います。このレベルになると、品質の安定化、さらなる生産性の向上、人件費削減といったメリットが挙げられます。

レベル3:完全自動化、ラインを組む

 完全に生産ラインを自動化できている状態です。作業者はメンテナンスや管理、トラブル時の対応をするだけです。ここまで自動化ができると、品質の均一化、生産性向上、人的要因の排除、安全性の確保ができます。

 この記事は、『工場管理』2019年12月号に掲載の内容を筆者が改編したものです。

【ロボットシステム構築の流れ 連載目次】

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この記事の著者

竹内 利一

自動化設備の生産性向上は、おまかせ下さい!  自動化設備のことならどんなことでも、あなたと一緒に考えます。

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