製品設計:ミス防止対策(その1)

更新日

投稿日

【製品設計:ミス防止対策 連載目次】

◆お客様目線で行う製品設計、「未然防止の品質管理」

 
 ものづくりを行う上で、作業ミスや作業漏れが無いようにQC工程図や作業指示書を設計します。また、製品設計でも、この部品が壊れないように、またすぐ外れないように細心の注意払って構造設計します。しかし、何事も完ぺきな事は出来ないので、どうしてもミスや漏れが出てしまいます。ではどうやって「未然防止」対策を行えばいいでしょうか。そのキーワードは「お客様目線」です。
 
           FMEA
 
 「お客様目線で設計する」考え方は、「リスクアセスメント」や「FMEA」の基本的な考え方です。つまり「お客様が使った時に事故や故障が起きないだろうか」「もし起こったらどのような影響を与えるだろうか、けがをしないだろうか」と考えるのです。
 
 普通の設計の考え方ではどうでしょうか。不良を出すと、納期が遅れる、損害が出る、上司に叱られる、だからミスをしないように注意して設計しよう。こんな自己本位、自己防衛的な設計作業になりがちです。また、次のように、できるだけ過去に実績のある設計方法を採用しようとしますが、これが往々にして失敗のもととなります。
 
 ・これは実績のある(?)設計の部品だから問題ないと先輩が言っている
 ・安く作るためにはこの方法しかない
 ・いままでこの方法の設計で問題は発生していない
 
 そこで、「もしミスをしたらどうなるか」と発想転換をします。一応、この部品の構造上、強度は問題ない設計を行ったが、でも「万が一この部品が壊れたら、お客様にどういう影響を与えるだろうか」と考えるのです。製造工程も同じです。「もし、この工程で間違った部品を組み込んだまま、見つからずに納入し、お客様が使ったら、お客様にどういう影響を与えるだろうか」と考えます。
 
 この「影響度」と「発生頻度」を予測して、この設計で問題ないかを数値化して検証評価するのが「リスクアセスメント」であり「FMEA」です。しかし、たとえ、「リスクアセスメント」や「FMEA」を導入していな企業であっても、この「お客様目線」の考え方は非常に重要です。設計時点で、次のような発想が必要になります。
 
 この部品がもし、壊れたら、重要な機能が失われる 壊れるとしたらどのように壊れるだろうか 部品に繰り返しの衝撃はどれくらい想定されるだろうか ⇒ どれくらいの頻度で壊れるだろうか ⇒ では構造シミュレーションを行って確認しよう。
 
 製品に対してFMEAを行おうとしても、すべての部品の評価はできません。FMEAを導入するのであれ...

【製品設計:ミス防止対策 連載目次】

◆お客様目線で行う製品設計、「未然防止の品質管理」

 
 ものづくりを行う上で、作業ミスや作業漏れが無いようにQC工程図や作業指示書を設計します。また、製品設計でも、この部品が壊れないように、またすぐ外れないように細心の注意払って構造設計します。しかし、何事も完ぺきな事は出来ないので、どうしてもミスや漏れが出てしまいます。ではどうやって「未然防止」対策を行えばいいでしょうか。そのキーワードは「お客様目線」です。
 
           FMEA
 
 「お客様目線で設計する」考え方は、「リスクアセスメント」や「FMEA」の基本的な考え方です。つまり「お客様が使った時に事故や故障が起きないだろうか」「もし起こったらどのような影響を与えるだろうか、けがをしないだろうか」と考えるのです。
 
 普通の設計の考え方ではどうでしょうか。不良を出すと、納期が遅れる、損害が出る、上司に叱られる、だからミスをしないように注意して設計しよう。こんな自己本位、自己防衛的な設計作業になりがちです。また、次のように、できるだけ過去に実績のある設計方法を採用しようとしますが、これが往々にして失敗のもととなります。
 
 ・これは実績のある(?)設計の部品だから問題ないと先輩が言っている
 ・安く作るためにはこの方法しかない
 ・いままでこの方法の設計で問題は発生していない
 
 そこで、「もしミスをしたらどうなるか」と発想転換をします。一応、この部品の構造上、強度は問題ない設計を行ったが、でも「万が一この部品が壊れたら、お客様にどういう影響を与えるだろうか」と考えるのです。製造工程も同じです。「もし、この工程で間違った部品を組み込んだまま、見つからずに納入し、お客様が使ったら、お客様にどういう影響を与えるだろうか」と考えます。
 
 この「影響度」と「発生頻度」を予測して、この設計で問題ないかを数値化して検証評価するのが「リスクアセスメント」であり「FMEA」です。しかし、たとえ、「リスクアセスメント」や「FMEA」を導入していな企業であっても、この「お客様目線」の考え方は非常に重要です。設計時点で、次のような発想が必要になります。
 
 この部品がもし、壊れたら、重要な機能が失われる 壊れるとしたらどのように壊れるだろうか 部品に繰り返しの衝撃はどれくらい想定されるだろうか ⇒ どれくらいの頻度で壊れるだろうか ⇒ では構造シミュレーションを行って確認しよう。
 
 製品に対してFMEAを行おうとしても、すべての部品の評価はできません。FMEAを導入するのであれば、この「お客様目線の設計」がされていることが前提となります。「FMEA」は単なる評価手段でしかありません。手法を導入するに当たって考えなければならないのは、次の3点です。
 
 ・それを何処で使うのか
 ・使う目的は何か
 ・メリット・デメリットはなにか
 
 次回は、「設計品質を確保するのに重要な過去トラブルの有効利用について」解説します。
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に...


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
在宅勤務のリスク共有 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その71)

1、1on1:対面による進捗報告や雑談の場が激減  2020年、新型コロナウィルス感染が拡大する中、否応無しに通勤を伴う対面業務からテレワークによる...

1、1on1:対面による進捗報告や雑談の場が激減  2020年、新型コロナウィルス感染が拡大する中、否応無しに通勤を伴う対面業務からテレワークによる...


初めての開発プロジェクトの日程見積り法 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その26)

        今回は、会社や組織で今まで取り組んだことがない初めて実施する業務をどのように見積もればよいか...

        今回は、会社や組織で今まで取り組んだことがない初めて実施する業務をどのように見積もればよいか...


アイディアが生まれる環境とは 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その38)

        今回はアイディアが生まれやすい物理的な「環境」について解説します。    一昔...

        今回はアイディアが生まれやすい物理的な「環境」について解説します。    一昔...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
品質の仕組みとは2 プロジェクト管理の仕組み (その28)

 品質の仕組み、前回に続いて解説します。今回は、品質計画についてです。    計画の重要性は ISO9001でも「品質計画」として強調されて...

 品質の仕組み、前回に続いて解説します。今回は、品質計画についてです。    計画の重要性は ISO9001でも「品質計画」として強調されて...


システム設計2 プロジェクト管理の仕組み (その34)

 前回でシステム設計の位置づけが明確になったと思いますので、次に、多くの開発現場で起きているシステム設計の問題について考えてみたいと思います。次のようなこ...

 前回でシステム設計の位置づけが明確になったと思いますので、次に、多くの開発現場で起きているシステム設計の問題について考えてみたいと思います。次のようなこ...


仕組み見直しとグローバル化(その2)

◆「気づき」能力向上のカギは製品開発経験の活用    前回のその1に続いて解説します。「気づき」能力は、擦り合わせ型開発を行う上で技術者が備...

◆「気づき」能力向上のカギは製品開発経験の活用    前回のその1に続いて解説します。「気づき」能力は、擦り合わせ型開発を行う上で技術者が備...