「作業」から「仕事」へ 勤勉な国民性を正しく生かし生産性向上を

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 日本センターの招請で2週間ほどロシアに出張しました。日本センターは外務省の後援するNPO組織で、ロシアで我が国のカルチャーやビジネスの広報活動を行っています。ロシアの人たちがきわめて日本びいきであることを初めて知りました。ロシアの人たちはたいへんに親日的です。日本製品だけでなく、日本のマネジメントにも信頼があり「カイゼン」は特別な意味を持っています。我が国で「改善」と言えば、製造現場の小集団活動を指すことが多いが、ロシアでカイゼンと言うと日本の優れたマネジメントの代名詞です。
 
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 < クラスノダールでのセミナー風景 >
 
 講演では、日産の復活を題材にカイゼンの本質を訴求しました。参加者は、ロシア企業の第一線で活躍されている経営幹部や管理職です。二日間の講演とワークショップを、サンクトペテルブルクやクラスノダールなど4つの都市で行いました。どの会場でも熱心な姿勢が目立ちましたが、最も多かった質問を紹介します。それは、活動推進役のリーダーをどう動機付けし育成するかでした。そもそもロシアでは、カイゼンやその推進リーダーなどが存在せず、また、製品やサービスに不具合があれば職場で一致協力して何とか解決・改善しようとするカルチャーが無いのでこのような質問が多く出たのでしょう。
 
 他方、我が国のカルチャーは対照的です。平等でオープンな社会構造、理論よりも実践して何とか解決策を見出そうとする姿勢、職場で上司が部下を育成する気風などは他国には無い我が国独特のカルチャーです。その底流にあるのは協調性に優れた勤勉な国民性にあることは間違いありません。
 
 しかし、「勤勉」には誤解があるようです。指示されたことをただそのとおりに実行することや、そのための長時間の残業をいとわないことは勤勉ではありません。作業をひたすらこなしている状態では疲れるだけです。我が国の間接部門の労働生産性は欧米に比較してかなりの差があることは従来から指摘されてきました。勤勉な国民性は生産性向上に生かされていません。
 
 生産性向上のために、仕事の段取りを良くして仕事の価値を高め、かつ時間短縮をはかることに的はずれでない真剣な努力が必要です。例えば、作業に意味と価値...
 日本センターの招請で2週間ほどロシアに出張しました。日本センターは外務省の後援するNPO組織で、ロシアで我が国のカルチャーやビジネスの広報活動を行っています。ロシアの人たちがきわめて日本びいきであることを初めて知りました。ロシアの人たちはたいへんに親日的です。日本製品だけでなく、日本のマネジメントにも信頼があり「カイゼン」は特別な意味を持っています。我が国で「改善」と言えば、製造現場の小集団活動を指すことが多いが、ロシアでカイゼンと言うと日本の優れたマネジメントの代名詞です。
 
            inf012
 < クラスノダールでのセミナー風景 >
 
 講演では、日産の復活を題材にカイゼンの本質を訴求しました。参加者は、ロシア企業の第一線で活躍されている経営幹部や管理職です。二日間の講演とワークショップを、サンクトペテルブルクやクラスノダールなど4つの都市で行いました。どの会場でも熱心な姿勢が目立ちましたが、最も多かった質問を紹介します。それは、活動推進役のリーダーをどう動機付けし育成するかでした。そもそもロシアでは、カイゼンやその推進リーダーなどが存在せず、また、製品やサービスに不具合があれば職場で一致協力して何とか解決・改善しようとするカルチャーが無いのでこのような質問が多く出たのでしょう。
 
 他方、我が国のカルチャーは対照的です。平等でオープンな社会構造、理論よりも実践して何とか解決策を見出そうとする姿勢、職場で上司が部下を育成する気風などは他国には無い我が国独特のカルチャーです。その底流にあるのは協調性に優れた勤勉な国民性にあることは間違いありません。
 
 しかし、「勤勉」には誤解があるようです。指示されたことをただそのとおりに実行することや、そのための長時間の残業をいとわないことは勤勉ではありません。作業をひたすらこなしている状態では疲れるだけです。我が国の間接部門の労働生産性は欧米に比較してかなりの差があることは従来から指摘されてきました。勤勉な国民性は生産性向上に生かされていません。
 
 生産性向上のために、仕事の段取りを良くして仕事の価値を高め、かつ時間短縮をはかることに的はずれでない真剣な努力が必要です。例えば、作業に意味と価値をプラスすれば「仕事」になります。意味を知れば工夫もしたくなるし、価値がわかればやりがいも出ます。
 
 勤勉とは「作業から仕事へ」転換できる能力であると思います。仕事の進め方も進化しなければ競争に参加することさえできません。我われの開発した「サクセスマップ法」はまさにその目的にぴったりの手法です。勤勉な国民性ゆえに生産性も世界トップクラスとなることを目指したいところです。
 
 この文書は、 2015年8月6日の日刊工業新聞掲載記事を筆者により改変したものです。
 

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この記事の著者

津曲 公二

技術者やスタッフが活き活きと輝きながら活動できる環境作りに貢献します。

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