社内研修での受講生の心得

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人的資源マネジメント

 

社内で実施される研修やスキル向上セミナーは、経営規模に関わらず、増加する傾向にあります。(株式会社ジェイック調べ)コロナ禍で自粛していた社員教育が回復傾向にあり、個人の能力を「人材」から「人財」へ転換する期待が込められている背景があるためです。しかし、開催側からは「受講意欲が向上しない、継続しない」「研修効果が測れない」「研修効果が維持しない」とする悩みが上がっています。今回は受講者側に焦点を当て、社内研修での受講生の心得を解説します。

 

【目次】
1. 注目されている研修テーマ
2. 研修効果が得られない要因
3. 効率良く身につけるためのノウハウ

 

関連解説記事:傾聴、話を聴く態度とは
関連解説記事:社内研修での講師の心得、資料を丁寧に伝えるだけなら講師は要らない

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1. 注目されている研修テーマ

(1)階層別研修

新入社員、中間層、ミドル・シニア層など就業年数や、役職などの階層に対して行う研修が多数を占めます。各層で必要な知識や理解を共有するため。求められる能力を身につけもらういわゆる「底上げ」を目的としています。

 

(2)組織力向上への期待

企業規模に関わらず、主体性向上・リーダーシップや、コミュニケーション力プレゼンテーション向上・コンプライアンスなど、組織運営に関するテーマにも関心が寄せられています。組織や所属グループのいわゆる「風通しを良くする」目的があります。DEI「ダイバーシティ(多様性)」「エクイティ(公平性)」「インクルージョン(包括性)」に関するテーマを取り入れる企業も増えてきています。

 

(3)今後のキャリアアップ

次世代リーダーの育成や、リカレント教育など、バージョンアップを支援するテーマも最近のはやりです。ヒューマンスキル(対人関係能力・人間理解能力)や、コンセプチュアルスキル(概念化能力)注)など職場環境につながるテーマが注目されています。

注)【コンセプチュアル・スキル】
これは概念化能力とも言われ、抽象的な考えや物事の大枠を理解する力を指します。論理思考力、問題解決力、応用力などです。この能力は、日常的に仕事のなかで判断・意思決定を繰り返すことで高めていけます。

 

2. 研修効果が得られない要因

(1)受講者側の意欲

研修計画を伝えられて「受講意欲が高まる」と捉える社員は少ないでしょう。モノづくりなど物理的なものに関わっていると、現物確認できない意識に訴えるモノに対して心もとなさを感じることは否めません。まして「忙しい業務時間を削って出るだけの即時効果が測れるのか」などの疑問が積極的になれない理由です。

 

(2)温度差

研修を開催する側は、念入りに計画します。資料も推敲を重ね、工夫を凝らし、文章の助詞まで配慮します。時間配分や、予想される質問の回答まで用意し、開催目的である着地点への動線も抜かりがない状態で挑みます。しかし、受講者は資料に関しては初見で、理解が追いつく前にページが進みます。講師の解説も分かりやすさが手伝えばその場では分かった気になりますが、盛り込まれた情報量が多いと消化不良をおこします。

 

つまり、双方には温度差があるのです。勢いよく水が投下される滝のごとく、対する滝つぼは受け身に徹することになり、インパクトを感じることはあっても、研修内容を納得できたとする満足は得られません。意欲が足踏み状態で、講師との温度差で置いてきぼりを感じれば、その場にいただけで内容を次に活かせない残念な時間を過ごす結果となります。

 

3. 効率良く身につけるためのノウハウ

(1)抵抗感の払しょく

主体性の向上やコミュニケーション力など意識の変化を期待するものには抵抗を感じるかもしれませんが、研修とはそもそもそういうものと理解すると楽です。たとえ実務的なノウハウを学んでも、そのシステムやアイディアを活用するかは気持ち次第という実にアナログ的な解決にかかっているのが理屈です。意識を変えるというより、神経伝達でいうところのシナプスを増やすことで、多角的な視点を得る場となるのが研修です。業務とかかわりのない知見が散らばっている研修の場は、独自の観点を発見するチャンスの場でもあるといえるのではないでしょうか。

 

(2)「狙い」と「振り返り」をつかむ

苦手なテーマや、分かりづらい内容ならば、資料の最初と最後に注目します。

 

最初の目次や概要、最後のまとめや振り返りで「研修の狙い」を把握することができます。本文は狙いを補強するデータや実例、根拠や効果などが補足されているので記憶の強化に役立ちますが一字一句覚えるのは困難です。なにが着地点なのか自分なりに掴むことで目的の8割は達成されたと解釈して良いでしょう。

 

(3)ストーリーをたてる

情報が混在している業務でも、ストーリー仕立てで把握すると全体の流れが見えてきますが、研修もそれと同じです。『背景や現状は〇〇で、効果があるのは□□。こんな実績が報告されているけれど、△△の課題がある。』などストーリーに置き換えてみると理解が進み、全体の理屈が分かってきます。

 

(4)補強する

自分がつくったストーリーや印象に残った言葉が(1)抵抗感の払しょくでいうところのシナプスとなります。別の機会で同じような言葉や経験に遭遇した時、記憶が刺激されて注意が向きます...

人的資源マネジメント

 

社内で実施される研修やスキル向上セミナーは、経営規模に関わらず、増加する傾向にあります。(株式会社ジェイック調べ)コロナ禍で自粛していた社員教育が回復傾向にあり、個人の能力を「人材」から「人財」へ転換する期待が込められている背景があるためです。しかし、開催側からは「受講意欲が向上しない、継続しない」「研修効果が測れない」「研修効果が維持しない」とする悩みが上がっています。今回は受講者側に焦点を当て、社内研修での受講生の心得を解説します。

 

【目次】
1. 注目されている研修テーマ
2. 研修効果が得られない要因
3. 効率良く身につけるためのノウハウ

 

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関連解説記事:社内研修での講師の心得、資料を丁寧に伝えるだけなら講師は要らない

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1. 注目されている研修テーマ

(1)階層別研修

新入社員、中間層、ミドル・シニア層など就業年数や、役職などの階層に対して行う研修が多数を占めます。各層で必要な知識や理解を共有するため。求められる能力を身につけもらういわゆる「底上げ」を目的としています。

 

(2)組織力向上への期待

企業規模に関わらず、主体性向上・リーダーシップや、コミュニケーション力プレゼンテーション向上・コンプライアンスなど、組織運営に関するテーマにも関心が寄せられています。組織や所属グループのいわゆる「風通しを良くする」目的があります。DEI「ダイバーシティ(多様性)」「エクイティ(公平性)」「インクルージョン(包括性)」に関するテーマを取り入れる企業も増えてきています。

 

(3)今後のキャリアアップ

次世代リーダーの育成や、リカレント教育など、バージョンアップを支援するテーマも最近のはやりです。ヒューマンスキル(対人関係能力・人間理解能力)や、コンセプチュアルスキル(概念化能力)注)など職場環境につながるテーマが注目されています。

注)【コンセプチュアル・スキル】
これは概念化能力とも言われ、抽象的な考えや物事の大枠を理解する力を指します。論理思考力、問題解決力、応用力などです。この能力は、日常的に仕事のなかで判断・意思決定を繰り返すことで高めていけます。

 

2. 研修効果が得られない要因

(1)受講者側の意欲

研修計画を伝えられて「受講意欲が高まる」と捉える社員は少ないでしょう。モノづくりなど物理的なものに関わっていると、現物確認できない意識に訴えるモノに対して心もとなさを感じることは否めません。まして「忙しい業務時間を削って出るだけの即時効果が測れるのか」などの疑問が積極的になれない理由です。

 

(2)温度差

研修を開催する側は、念入りに計画します。資料も推敲を重ね、工夫を凝らし、文章の助詞まで配慮します。時間配分や、予想される質問の回答まで用意し、開催目的である着地点への動線も抜かりがない状態で挑みます。しかし、受講者は資料に関しては初見で、理解が追いつく前にページが進みます。講師の解説も分かりやすさが手伝えばその場では分かった気になりますが、盛り込まれた情報量が多いと消化不良をおこします。

 

つまり、双方には温度差があるのです。勢いよく水が投下される滝のごとく、対する滝つぼは受け身に徹することになり、インパクトを感じることはあっても、研修内容を納得できたとする満足は得られません。意欲が足踏み状態で、講師との温度差で置いてきぼりを感じれば、その場にいただけで内容を次に活かせない残念な時間を過ごす結果となります。

 

3. 効率良く身につけるためのノウハウ

(1)抵抗感の払しょく

主体性の向上やコミュニケーション力など意識の変化を期待するものには抵抗を感じるかもしれませんが、研修とはそもそもそういうものと理解すると楽です。たとえ実務的なノウハウを学んでも、そのシステムやアイディアを活用するかは気持ち次第という実にアナログ的な解決にかかっているのが理屈です。意識を変えるというより、神経伝達でいうところのシナプスを増やすことで、多角的な視点を得る場となるのが研修です。業務とかかわりのない知見が散らばっている研修の場は、独自の観点を発見するチャンスの場でもあるといえるのではないでしょうか。

 

(2)「狙い」と「振り返り」をつかむ

苦手なテーマや、分かりづらい内容ならば、資料の最初と最後に注目します。

 

最初の目次や概要、最後のまとめや振り返りで「研修の狙い」を把握することができます。本文は狙いを補強するデータや実例、根拠や効果などが補足されているので記憶の強化に役立ちますが一字一句覚えるのは困難です。なにが着地点なのか自分なりに掴むことで目的の8割は達成されたと解釈して良いでしょう。

 

(3)ストーリーをたてる

情報が混在している業務でも、ストーリー仕立てで把握すると全体の流れが見えてきますが、研修もそれと同じです。『背景や現状は〇〇で、効果があるのは□□。こんな実績が報告されているけれど、△△の課題がある。』などストーリーに置き換えてみると理解が進み、全体の理屈が分かってきます。

 

(4)補強する

自分がつくったストーリーや印象に残った言葉が(1)抵抗感の払しょくでいうところのシナプスとなります。別の機会で同じような言葉や経験に遭遇した時、記憶が刺激されて注意が向きます。それまでの記憶に新たな情報が加わり、再構築された記憶は補強されていきます。新たな視点が生まれ、より複雑な理解への欲求は広がっていきます。これら相互に作用しあう相乗効果を生み出すのは、異なる刺激や経験できる場に参じることが有効です。

 

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いわゆる【研修】には主題があります。全く知らないことを「知る」こと。知っていることが「わかる」こと。わかっていることを「できる」ようにすること。出来ることを「教える(教えられるようにする)」こと。能力開発の4つのステップともいわれています。自分が受けている研修が4つのステップのどの段階であるかを見極めるのも理解が進むポイントにもなります。研修は受講者同士のコミュニケーションの場でもあります。様々な経験を楽しんでいただけたらと思います。ご意見をお待ちしています。

 

次回は社内研修の講師を依頼されたときを解説します。
関連解説記事:社内研修での講師の心得、資料を丁寧に伝えるだけなら講師は要らない


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この記事の著者

増田 好美

ビジネスパーソンの「気持ち」に寄り添う元エンジニア

ビジネスパーソンの「気持ち」に寄り添う元エンジニア


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