「意匠」の保護とは

更新日

投稿日

  日本の100年に及ぶ意匠保護制度ですが、その創世記は、平面に施される「模様」の保護、布地の模様の保護から始まっています。日本の産業が繊維産業(=織物産業)だったことに対応しています。
 
 もちろん、明治・大正においても家具をはじめとする優れた立体物のデザインも開発され、意匠登録されていました。
 
 年月を経て、戦後の経済復興期は、企業はそれなりの技術を持ち、海外商品のコピーができるようになりました。今の中国と同じでしょうか。そこで問題になったのが、『コピー品を輸出してはまずい』ということでした。
 
 意匠登録は、コピー品ではないことの証として活用されたのです。その頃に作られたのが、今の意匠法です。
 
 意匠法は、もともと二次元の「織物のデザイン」を保護することを考えていました。しかし、産業の中心は「織物」から「形のある工業製品」に移ってしまいました。その結果、意匠法の世界に、二次元のデザインを軽んじる風潮ができてしまったと思います。
 
 建築から出発した「バウハウス」も二次元デザインは考えていないでしょう。そのバウハウスの影響を強く受けている審査の中で、二次元でありながら「用途・機能」があるという画像デザインは、きわめて扱いにくいものであると思います。そのなかで、画像の中に「用途・機能」を見て審査している現状はとてもすばらしいことです。
 
 二次元の「織物」も、三次元の「物品」もみな手に取ることができたのですが、問題は、「画像」は手に取ることができないことです。物理的に存在しないのです。
 
 識者は『意匠法の保護対象は「物品」だから、物理的に存在しない「画像データ」は保護対象ではない』との考え方です。しかし、意匠法の「物品」を物理的に存在するものに限る必要はないでしょう。「物品」の定義は定まっていないので、法目的に適応して解釈すればよいでしょう。
 
  知的財産マネジメント
 
 無体物である「データ」を物品としてもよいのではないでしょうか。特許法では「プログラム」も「物」とされています。
...
  日本の100年に及ぶ意匠保護制度ですが、その創世記は、平面に施される「模様」の保護、布地の模様の保護から始まっています。日本の産業が繊維産業(=織物産業)だったことに対応しています。
 
 もちろん、明治・大正においても家具をはじめとする優れた立体物のデザインも開発され、意匠登録されていました。
 
 年月を経て、戦後の経済復興期は、企業はそれなりの技術を持ち、海外商品のコピーができるようになりました。今の中国と同じでしょうか。そこで問題になったのが、『コピー品を輸出してはまずい』ということでした。
 
 意匠登録は、コピー品ではないことの証として活用されたのです。その頃に作られたのが、今の意匠法です。
 
 意匠法は、もともと二次元の「織物のデザイン」を保護することを考えていました。しかし、産業の中心は「織物」から「形のある工業製品」に移ってしまいました。その結果、意匠法の世界に、二次元のデザインを軽んじる風潮ができてしまったと思います。
 
 建築から出発した「バウハウス」も二次元デザインは考えていないでしょう。そのバウハウスの影響を強く受けている審査の中で、二次元でありながら「用途・機能」があるという画像デザインは、きわめて扱いにくいものであると思います。そのなかで、画像の中に「用途・機能」を見て審査している現状はとてもすばらしいことです。
 
 二次元の「織物」も、三次元の「物品」もみな手に取ることができたのですが、問題は、「画像」は手に取ることができないことです。物理的に存在しないのです。
 
 識者は『意匠法の保護対象は「物品」だから、物理的に存在しない「画像データ」は保護対象ではない』との考え方です。しかし、意匠法の「物品」を物理的に存在するものに限る必要はないでしょう。「物品」の定義は定まっていないので、法目的に適応して解釈すればよいでしょう。
 
  知的財産マネジメント
 
 無体物である「データ」を物品としてもよいのではないでしょうか。特許法では「プログラム」も「物」とされています。
 
 唐突ではありますが、「画像」を表すプログラムもしくはデータを「物品」ととらえてよいのではないでしょうか。「物品」の解釈は法律制定時の産業事情で示されているのだから今の事情に合わせて解釈を変更することに問題はないと考えます。如何でしょうか。
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

峯 唯夫

「知的財産の町医者」として、あらゆるジャンルの相談に応じ、必要により特定分野の専門家を紹介します。

「知的財産の町医者」として、あらゆるジャンルの相談に応じ、必要により特定分野の専門家を紹介します。


「知的財産マネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
「コトのデザイン」と意匠法

       前回の「モノのデザイン」と「コトのデザイン」の末尾に次のように記述しました。    なぜ「...

       前回の「モノのデザイン」と「コトのデザイン」の末尾に次のように記述しました。    なぜ「...


IPランドスケープとは(その2)

【目次】 1、企業の知財活動について・・・IPランドスケープとは(その1)に記載。 (1) IPランドスケープとパテントマップ、技術戦略 (...

【目次】 1、企業の知財活動について・・・IPランドスケープとは(その1)に記載。 (1) IPランドスケープとパテントマップ、技術戦略 (...


特許権侵害 知財経営の実践(その36)

  1. 知財の持つ価値   知財経営の実践については、その重要性が参考文献のように報告されています。〔1〕〔2〕知財の活用を、企業経営...

  1. 知財の持つ価値   知財経営の実践については、その重要性が参考文献のように報告されています。〔1〕〔2〕知財の活用を、企業経営...


「知的財産マネジメント」の活用事例

もっと見る
デザインによる知的資産経営:「ブランドづくり」(その1)

 今回は「無印良品」を例に挙げて、ブランドのつくり方、ブランドの力を、解説していきたいと思います。「無印良品」はなぜ「家」までも売り出したのか。そして、な...

 今回は「無印良品」を例に挙げて、ブランドのつくり方、ブランドの力を、解説していきたいと思います。「無印良品」はなぜ「家」までも売り出したのか。そして、な...


特許侵害訴訟のリスク事例(サトウの切り餅) 前編

1.はじめに  特許訴訟は、アップルとサムスンのような超巨大企業の間のみで起こるように思われがちですが、実際にはすべての企業が巻き込まれるおそれがありま...

1.はじめに  特許訴訟は、アップルとサムスンのような超巨大企業の間のみで起こるように思われがちですが、実際にはすべての企業が巻き込まれるおそれがありま...


特許出願とその後の展開

    研究開発の仕事の中で、特許を調査する、出てきた結果で特許出願を行う、ということは日常的に行われています。私の場合は、昔は多い...

    研究開発の仕事の中で、特許を調査する、出てきた結果で特許出願を行う、ということは日常的に行われています。私の場合は、昔は多い...