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QUESTION 質問No.564

SUS304溶接部の腐食原因の推測

生産固有技術 |投稿日時:
食品加工装置を製造・販売する会社で働いています。今回、弊社で製作したSUS304タンク溶接部が使用開始1年で錆が発生しました。溶接部は数ヶ所あり、そのうち錆が発生したのは一ヶ所です。錆が発生した溶接部を顕微鏡観察すると微小なクラックがありました。このクラックが溶接時に発生したものか、応力腐食で発生したものか判別する方法はありますか。
宜しくお願いします。

補足1 投稿日時:2021/11/18 14:27

奥野様、詳しいアドバイスいただき有難うございます。
補足となりますが、溶接部についてカラーチェックを行ったところ、腐食部のみ孔食欠陥が確認されました。そして腐食部は溶接部位でなく近傍です。また、溶接部を含む腐食部及び外観正常部を切断してシュウ酸エッチング処理して断面解析を行い、腐食部において材料内部に微小亀裂を確認しました。これらは全て写真に撮影しています。
腐食部の位置から粒界腐食の可能性が高く、しかし微小亀裂の状態は応力腐食割れの様でもあります。これら画像データで、錆を発生した腐食原因の絞り込みは可能でしょうか。
もし、絞り込みが可能な場合、このQ&Aの中で画像を見ていただくことはできますか。
それとも、個別相談の範疇でしょうか。
宜しくお願いします。

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ANSWER
回答No1 | 投稿日時:

初めまして、奥野と申します。

SUS304に錆(腐食)が発生しており、クラックも観察される、ということですが、原因としては以下の2つが考えられます。

(1)粒界腐食(高温割れとも呼びます)
  ・結晶粒界に沿って割れるもので、原因は結晶粒界に析出する炭化物。
   顕微鏡観察で粒界に炭化物の析出を確認できることも多いです。
  ・炭化物は、600〜700℃程度の加熱により最も析出しやすくなります。
   このため、溶接部そのものではなく、溶接部の近傍(溶接部位の数ミリ外側)、
   ちょうど溶接時に600~700℃程度になる辺りに発生する傾向があります。
  ・クラック(破面)が酸化により着色している場合が多いです。

(2)応力腐食割れ
  ・結晶粒界に関係なく直線的に割れています。
  ・周囲に孔食(ピッティング)を生じているケースもあります。顕微鏡で孔を確認できます。
  ・溶接時に発生した内部応力と外部環境(特に塩素イオン濃度、50ppm以上)に影響されます。

ご質問のケースではおそらく溶接部全体の割れまでには至っておらず、例えば溶接部を切断して顕微鏡観察するようなことは難しいのでは無いかと想定致します。
顕微鏡での観察前には、できることならばエッチングを行なって粒界が見えるようにしておいた方が良いですが、そこまでしなくとも、溶接部位そのものにクラックがあるかどうかで判定は可能です。
(上記の通り、溶接部そのものにクラックがあれば応力腐食割れを疑い、溶接部からちょっと外れたところにクラックがあれば粒界腐食を疑う)

「溶接時に発生したものか、応力腐食で発生したものか」というご質問は、溶接施工時における問題かどうか、ということをお尋ねになられているものと解釈しますが、応力腐食割れであっても、内部応力が残るような溶接条件であれば置かれている環境によって錆およびクラックが発生することもあります。
今回錆が発生している溶接部が1箇所だけということですので、明らかに上記(1)の粒界腐食に相当する状況でなければ、下記の通りそれぞれの溶接部の溶接施工条件、およびタンク(溶接部)の置かれている環境条件も総合的にみて判断する必要があるものと考えます。

(A)錆の発生した部位と健全な部位に溶接施工実績の差異(ばらつき)があるかどうか。例えば熱処理の有無、工程の抜け、溶接温度の間違い、溶材の間違い、作業者の熟練度の差、など。
 →作業記録があれば一番良いですが、作業者への聞き取りや手順書の精査、作業の観察による確認なども有効です。もし差(ばらつき)があれば原因の一つと推定できます。

(B)タンク内面か外面か、また荷重が常時かかる箇所か、荷重(応力)が時間変動するか、錆の発生した部位と健全な部位にそれらの差異があるかどうか。
(C)タンクの置かれていた環境はどんな環境か。錆の発生した溶接部と他の溶接部とで同一の環境かどうか。例えば、水分付着の度合い(湿度)、ハロゲン・酸・アルカリの環境か、日照条件を含め局所的に高温(80℃以上)になるような温度条件かどうか。
 →これらの諸条件が、使用開始から錆が発生するまでの期間、すべての溶接部について同一と見做せるのであれば、溶接時の施工不良、そうでなければ環境に起因する局所的な応力腐食割れを疑う。

以上、ご参考まで。




ANSWER
回答No2 | 投稿日時:

追加情報(補足1)のご提供、ありがとうございます。

腐食部のみに孔食が発生しているとのことですので、腐食が発生するような雰囲気下にあるが、健全部が侵されるような強いものではないと想定します。

貴職ご認識のとおり、当該現象は粒界腐食と思われますが、「微小亀裂」というのがどのように入っているのかは、実際に写真を見るのが早いと考えます。
写真を確認して原因を推定するだけであれば、小職は個別相談の範疇とは考えておりませんので、ご連絡頂ければ本Q&Aの中で対応させて頂きます。

なお、EPMAを用いた腐食部および亀裂部の元素マッピングがあれば、より高い精度で原因機構を推定することが可能です。もしご対応可能であれば、ご検討頂ければ幸いです。