‐能力開発のシステム創り 製品・技術開発力強化策の事例(その45)

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◆能力開発のシステム化に必要不可欠の条件。
   (1) 情報伝達の仕組み創り
   (2) 目標を明確にする
   (3) 目標達成に必要な基礎知識の習得
   (4) 目標達成感を味わい自信を持つ事
   (5) 会合技術の確立
   (6) 競争意識の醸成
   (7) リ-ダの育成
   (8) 先進事例を知り危機感を持つ
   (9) 日々改善する職場風土の育成
  (10)担当以外の分野にも関心を注ぐ企業風土創り
  (11)収益性の判定基準があること
 
 これらの項目を満たしそれぞれの項目間で相互作用が働くような運用をする事で能力開発が自ずから進められるようになります。 以上の条件が満たされていない企業では、損失が随所に発生していて企業に活力が乏しく、従業員の能力開発も進みません。以下にこれらの1~11の事項について解説します。このページでは、第1回第2回に続いて5項について、解説します。
 

(5)会合技術の確立

 改善を推進するに際して特に大切な事項は、会合の進め方です。会合の場で問題を解決するための技術的な知識の学習、考え方の相違点の調整、 問題点に関する状況認識の共有、 対策の決定、問題解決後の満足感の共有などが得られるように運用する必要があります。
 
 会合の巧拙は従業員の能力開発を左右します。 会合の場を通じて問題解決や改善の対策が立てられ、 着実に実行されている場合には、 作業員の意欲は前向きになり会合の場での意見交換が活発になり、能力開発が促されます。会合の運営が下手な司会者の下では、決めた事が守られず会合は必要ないと考える従業員が増えていきます。 勢い情報伝達や意見交換の場がなくなり、 作業員の意見を吸収する機会が得られなくなり、資質向上を促す場が得られず、従業員の企業に対する信頼感が後退する事が起こります。 司会者、 つまり、 リ-ダ-の会合運営のあり方が問題解決の能力育成に影響する事になります。
 
 司会者として会議資料が準備されている事のチェック不足や会合運用のまずさ等が会合の時間をムダに過ごさせ、多数の出席者の時間損失を発生させます。この意味から司会者の会合に臨む態度は非常に重要です。次に記述するA~Fの内容に沿って会合の技術を確立すると、会合の生産性が向上するだけでなく、人材育成にも大きく役立つ事になります。会合技術の向上は企業の生産性向上に不可欠の事項です。特に注意しなければならない事は、経営者が独演する会議は多くの場合効果が非常に低く、経営者以外に司会者を決めて会合を進めさせ、経営者は会合の進行状態が適正か、側面から観察する立場に回り、会合の進め方を指導する事に努めた方が良いでしょう。
 

◆ 職場単位での会合の手順。

A.テ-マは事前に参加者に伝える。
 
 会合のテ-マは経営計画に基づいて期初に決めた改善活動計画に基づき、それぞれの職場で改善活動計画の一部を担うような問題提起をリ-ダが行います。その枠組の中で職場内で発生している問題点について意見を全員から求め、多くの関心が持たれている事で、自分達の職場内で解決が可能と思われる問題から優先してテ-マに取り上げます。
 
 または、経営計画に基づき最初からテ-マをリ-ダの意思により絞り込んで会合を開催する場合には、事前に出席該当者にテ-マを知らせておき、会合の当日には、このテ-マを何故取り上げる必要があるのか、経営計画との関連性と自己の職場での問題の発生状況等から改善活動が必要な理由を説明し、質問の時間を設けるようにします。質問がないときには、 指名して「この点ではいかがですか」と意見を求めるようにします。質問の時間を設ける事でテ-マについて掘り下げた理解が出来、 問題解決への取組み意欲が湧き上がってくるように導きます。
 
B.テ-マに関する資料の準備と前回の復習
 
 リ-ダ-は前回の会合で決められたテ-マに関するデ-タの集計を行い、会合に必要な資料の準備を行います。資料がないと前回と同じような意見の繰り返しに終わります。会合に際しては、前回に決められた内容に関する経過報告から開始します。デ-タの取り方、その他の対策に関して決めた役割分担の通りに経過報告を求めます。決められた通りに出来なかった場合、何故出来なかったのか理由を説明させます。決め方に問題があった場合には、その修正をして次回までに実施するように促します。前回の復習を会合に先立ち必ず行うようにすれば、決めたことが実行出来ないような事はなくなります。
 
C.意見は全員から求める
 
 会合で意見を述べる場合、長い時間をかけて何が言いたいのかまとまりもなく発言する人がいます。このような場合、リ-ダ-は発言時間を3分以内にまとめるように促して、「あなたの意見はこれこれですね」と発言の要旨をまとめて問い返し切りをつけます。そして、次の人を指名して発言を求めるようにします。意見が出ない場合には、考えておくようにと促して次の人を指名します。一巡後、発言がなかった人に再度意見を求めます。このようなことを数回繰り返す事で発言しない人は漸次なくなっていくことでしょう。発言しないで決定した事について蔭で、実際には反対の考えがあるような意見を述べる人は、 卑怯な態度である事を司会者ははっきりと言い切る事が大切です。発言要旨は黒板に記入し、発言内容を一度は受け入れ、その上で良否を議論するように導くことがリ-ダの役割です。
 
D.発言の要旨は白板に列記
 
 示された意見の要旨を白板に列記する事で、意見を次々と導き出すのに役立ちます。列記されている内容から連想して意見が出易くなり、討論の流れが一目で判り意見に広がりが出てきます。意見を記載しないで討論を続けると、 意見が出ているそのことだけに関心が集まり、意見が偏り発言が少なくなります。
 
E.対立する意見についての対策
 
 複数の意見が対立する場合に、 声の高い人、 地位の高い人の意見に支配されて真の問題追及にならないことから不満が積もります。このような事態を避けるには、 それぞれの意見の長所・欠点を上げさせ、 相互に比較する表を白板に書き上げるようにします。所要資金、 所要工数、占有面積、 解決までの所用期間、困難性・容易性、周囲への影響、予想される効果等について意見を求めます。先ずこれらの項目以外に追加すべき項目はないか意見を求め、その後でこれらの項目に関しての意見を求めて表を埋めていきます。
 
 比較すべき意見が出尽くしたら、これに基づいて採決を取ります。取り上げた内容に...
◆能力開発のシステム化に必要不可欠の条件。
   (1) 情報伝達の仕組み創り
   (2) 目標を明確にする
   (3) 目標達成に必要な基礎知識の習得
   (4) 目標達成感を味わい自信を持つ事
   (5) 会合技術の確立
   (6) 競争意識の醸成
   (7) リ-ダの育成
   (8) 先進事例を知り危機感を持つ
   (9) 日々改善する職場風土の育成
  (10)担当以外の分野にも関心を注ぐ企業風土創り
  (11)収益性の判定基準があること
 
 これらの項目を満たしそれぞれの項目間で相互作用が働くような運用をする事で能力開発が自ずから進められるようになります。 以上の条件が満たされていない企業では、損失が随所に発生していて企業に活力が乏しく、従業員の能力開発も進みません。以下にこれらの1~11の事項について解説します。このページでは、第1回第2回に続いて5項について、解説します。
 

(5)会合技術の確立

 改善を推進するに際して特に大切な事項は、会合の進め方です。会合の場で問題を解決するための技術的な知識の学習、考え方の相違点の調整、 問題点に関する状況認識の共有、 対策の決定、問題解決後の満足感の共有などが得られるように運用する必要があります。
 
 会合の巧拙は従業員の能力開発を左右します。 会合の場を通じて問題解決や改善の対策が立てられ、 着実に実行されている場合には、 作業員の意欲は前向きになり会合の場での意見交換が活発になり、能力開発が促されます。会合の運営が下手な司会者の下では、決めた事が守られず会合は必要ないと考える従業員が増えていきます。 勢い情報伝達や意見交換の場がなくなり、 作業員の意見を吸収する機会が得られなくなり、資質向上を促す場が得られず、従業員の企業に対する信頼感が後退する事が起こります。 司会者、 つまり、 リ-ダ-の会合運営のあり方が問題解決の能力育成に影響する事になります。
 
 司会者として会議資料が準備されている事のチェック不足や会合運用のまずさ等が会合の時間をムダに過ごさせ、多数の出席者の時間損失を発生させます。この意味から司会者の会合に臨む態度は非常に重要です。次に記述するA~Fの内容に沿って会合の技術を確立すると、会合の生産性が向上するだけでなく、人材育成にも大きく役立つ事になります。会合技術の向上は企業の生産性向上に不可欠の事項です。特に注意しなければならない事は、経営者が独演する会議は多くの場合効果が非常に低く、経営者以外に司会者を決めて会合を進めさせ、経営者は会合の進行状態が適正か、側面から観察する立場に回り、会合の進め方を指導する事に努めた方が良いでしょう。
 

◆ 職場単位での会合の手順。

A.テ-マは事前に参加者に伝える。
 
 会合のテ-マは経営計画に基づいて期初に決めた改善活動計画に基づき、それぞれの職場で改善活動計画の一部を担うような問題提起をリ-ダが行います。その枠組の中で職場内で発生している問題点について意見を全員から求め、多くの関心が持たれている事で、自分達の職場内で解決が可能と思われる問題から優先してテ-マに取り上げます。
 
 または、経営計画に基づき最初からテ-マをリ-ダの意思により絞り込んで会合を開催する場合には、事前に出席該当者にテ-マを知らせておき、会合の当日には、このテ-マを何故取り上げる必要があるのか、経営計画との関連性と自己の職場での問題の発生状況等から改善活動が必要な理由を説明し、質問の時間を設けるようにします。質問がないときには、 指名して「この点ではいかがですか」と意見を求めるようにします。質問の時間を設ける事でテ-マについて掘り下げた理解が出来、 問題解決への取組み意欲が湧き上がってくるように導きます。
 
B.テ-マに関する資料の準備と前回の復習
 
 リ-ダ-は前回の会合で決められたテ-マに関するデ-タの集計を行い、会合に必要な資料の準備を行います。資料がないと前回と同じような意見の繰り返しに終わります。会合に際しては、前回に決められた内容に関する経過報告から開始します。デ-タの取り方、その他の対策に関して決めた役割分担の通りに経過報告を求めます。決められた通りに出来なかった場合、何故出来なかったのか理由を説明させます。決め方に問題があった場合には、その修正をして次回までに実施するように促します。前回の復習を会合に先立ち必ず行うようにすれば、決めたことが実行出来ないような事はなくなります。
 
C.意見は全員から求める
 
 会合で意見を述べる場合、長い時間をかけて何が言いたいのかまとまりもなく発言する人がいます。このような場合、リ-ダ-は発言時間を3分以内にまとめるように促して、「あなたの意見はこれこれですね」と発言の要旨をまとめて問い返し切りをつけます。そして、次の人を指名して発言を求めるようにします。意見が出ない場合には、考えておくようにと促して次の人を指名します。一巡後、発言がなかった人に再度意見を求めます。このようなことを数回繰り返す事で発言しない人は漸次なくなっていくことでしょう。発言しないで決定した事について蔭で、実際には反対の考えがあるような意見を述べる人は、 卑怯な態度である事を司会者ははっきりと言い切る事が大切です。発言要旨は黒板に記入し、発言内容を一度は受け入れ、その上で良否を議論するように導くことがリ-ダの役割です。
 
D.発言の要旨は白板に列記
 
 示された意見の要旨を白板に列記する事で、意見を次々と導き出すのに役立ちます。列記されている内容から連想して意見が出易くなり、討論の流れが一目で判り意見に広がりが出てきます。意見を記載しないで討論を続けると、 意見が出ているそのことだけに関心が集まり、意見が偏り発言が少なくなります。
 
E.対立する意見についての対策
 
 複数の意見が対立する場合に、 声の高い人、 地位の高い人の意見に支配されて真の問題追及にならないことから不満が積もります。このような事態を避けるには、 それぞれの意見の長所・欠点を上げさせ、 相互に比較する表を白板に書き上げるようにします。所要資金、 所要工数、占有面積、 解決までの所用期間、困難性・容易性、周囲への影響、予想される効果等について意見を求めます。先ずこれらの項目以外に追加すべき項目はないか意見を求め、その後でこれらの項目に関しての意見を求めて表を埋めていきます。
 
 比較すべき意見が出尽くしたら、これに基づいて採決を取ります。取り上げた内容によっては、意見が出尽くした頃を見計って、リ-ダに一任するように要求する方法もあります。 改善結果の予想成果をしっかりと検討しなければ簡単に結論が出せないような場合、他の職場の協力や上司に相談しなければ決められないと考えられるような内容を含んでいる場合、等ではリ-ダに一任を要求した方が良いでしょう。
 
F.テ-マに関係ない意見に対する対策
 
 次々と意見を求めていくと、 テ-マに関係のない意見が突然話題になる事があります。その内容が大切なことを指摘している場合があるので、そのような場合には、「その意見は重要な事であるが現在の会合のテ-マから外れているから、別途、機会を設けて検討する」と会合の司会者が意見の整理をします。司会者が毅然とした態度で討論の流れを整理しないと、脱線した意見に流されて会合の時間が過ぎていき、何を決めたのか判らないままに終わり、会合不信が募るようになります。司会者の会合の導き方で全てが決まるでしょう。
 
 取り上げるに値しない意見が出てそれに触発されて、次々といろいろな意見が出てきて、取り上げたテ-マから脱線して時間のムダ遣いになる事がります。司会者はテ-マから脱線していると感じた場合、少し話をさせた上で「テ-マから外れているからこの程度にして本来の討論を進めたい」と流れを整理します。脱線した意見が出た場合、いきなり意見を制する事は会合の雰囲気を硬くして、意見が出にくくなる場合があるので、 適度に潤滑剤が入った会合になる事は悪くありません。
 
  冒頭の1~11の事項についての解説、第4回では、6項、以降について、順番に解説します。
 

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この記事の著者

新庄 秀光

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