物流におけるパッケージングエンジニアリングとは

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SCM

 

1.物流5機能の中で最も重要な機能

この連載で何度も取り上げていますが、物流には次の5つの機能があるといわれています。

  1. 輸送
  2. 保管
  3. 包装
  4. 荷役
  5. 流通加工

 

この5つの中に「包装」という機能があります。これは梱包、または荷姿と呼ばれたりします。物流の5つの機能の中で最も重要と思われるのがこの「包装」なのです。ではなぜ、最も重要だといえるのでしょうか。それは「包装」の影響を受けて、さまざまな別の機能の効率が変化するからです。今回の「物流におけるパッケージングエンジニアリングとは」ではこの解説から始めます。

 

包装は製品の移動や保管を行う際、品質を保持するために存在します。本来であれば包装など無ければそれに越したことはありません。しかし実際に製品同士を重ね合わせることは、品質上不可能な場合がほとんどです。ましてや裸のままでトラックに載せ、輸送できるような製品は少数派なのではないでしょうか。

 

つまり物を保管、輸送する際、包装機能は無くてはならないのです。それゆえ、に物流5機能の中で最も重要といわれるわけです。さらに必要最小限の包装は場所を取ることもなく、トラックの荷台にも多く積載できるため、非常にエリア効率に貢献するのです。

 

一方で物流をなりわいとしている事業者の中で、最重要機能の包装についてどこまで取り組まれているでしょうか。よく見受けられるのは「輸出梱包」です。特に船舶で長時間輸送を行う場合は、中身が傷まないようにそれ相応の梱包が求められます。

 

それこそプロの領域ですから専業者に任せたいという荷主が多いのではないでしょうか。そのような意味からも、輸出梱包を請け負っている事業者には「梱包技術」、すなわちパッケージングエンジニアリングのスキルが求められるのです。

 

それ以外ではどうでしょうか。小物製品のポリ袋詰めや段ボール梱包などに取り組んでいる会社もあるかもしれません。また通信販売の製品について、段ボール梱包を出荷準備の段階で実施している会社もあることでしょう。

 

ではその梱包仕様は誰がどのように定めているのでしょうか。もしかしたら現場サイドの勘やコツに頼っているのではないでしょうか。

 

物流事業者、荷主ともに実はこのパッケージングエンジニアリングのプロが必要なのです。プロを育てて効率的な包装を通して、効率的な物流を実現していくための重要な視点について考えていきましょう。

SCM

 

2.パッケージング設計

メーカーではパッケージング専門の部署を設けている会社もあります。欧米では一般的のようですが、日本ではそこまで行っている会社は少数派のようです。

 

その原因の一つとして、まだまだ物流に対する関心度が低いことが挙げられます。例えば、容器を工夫することで物流効率がまったく違ってくるのですが、容器を改善して物流を効率化しようという発想にいたらないのです。仕事としてパッケージング設計が必要となることは分かってはいるものの、その仕事に会社の中のスーパーエリートをつけないということも、パッケージングエンジニアリング(技術)、効率的なサプライチェーンが進歩しない要因と考えられます。

 

これも当たり前のことですが「製品設計」そのものに、優秀な人材を充てる会社がほとんどで物流は二の次です。ここが欧米企業と異なるところです。

 

しかし近年、食料品容器などは明らかに変わってきています。ビール瓶(びん)や缶の容器の肉厚を薄くし軽量化することで、物流効率を圧倒的に向上させている会社もあります。消費者の使いやすさとコストを両立させるような調味料用容器も開発されています。つまりすでに包装機能の重要性に気づき、注力している会社もあるのです。ここまで来れば物流業務に対する人材の充て方も変わってくることでしょう。その会社の容器そのものがバリュー(価値)になっているからです。

 

一般的に物流はコストと認識されます。しかし物流が付加価値を生むこともあり得るのです。その典型が包装機能で、それを支えるのがパッケージングエンジニアリングなのです。物流事業者にもこの包装機能の大切さについて、もっと認識してほしいと思います。物流事業者はパッケージングを「荷主の仕事だ」と言い切ることがありますが、これは物流のプロとしてはいかがなものかと思います。

 

「いかに保管効率が良くなるために包装をどの様にしたらよいのか」「輸送効率を向上させるためにはどうしたらよいのか」など、このような観点でアドバイスできない物流事業者であれば、物流のプロとはいえません。顧客から頼られ、事業を拡大していく物流事業者はこの包装機能に着目し、的確な方策を立案して実現していかなければならないのです。

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3.荷姿は物流技術

顧客の荷物を日々取り扱っている物流事業者は、顧客のパッケージングについて「もっと、こうしたらよいのに」という気づきが必ずあるはずです。もし何も気づきが無いのであれば、それはパーフェクトなパッケージングというよりも、物流事業者の認識の方に問題があるといえるかもしれません。

 

物流の現場は常に改善すべき点が転がっています。まったく隙が無いほど改善されている現場は皆無といってもよいでしょう。

 

輸送に際し、トラックの荷台に隙間ができるようなパッケージングは問題があると考えましょう。本来であれば、荷台にきっちりと納まる荷を設計することが必要です。つまり「荷台の輪切りでパッケージングモジュールを作っていくことが輸送効率の決め手になる」ということです。これに一番気づいていると思われるのが物流事業者なのです。繰り返しになりますが、気づいていなければ、それは物流のプロとして問題ありということになります。

 

一方で輸送効率を向上させると売り上げが落ちてしまう、保管効率を向上させてしまうと倉庫収入が減るという理由で、パッケージング改善の提案をしない事業者であれば、それなりのレベルの会社だといわざるを得ません。

 

これからの物流事業者は、物流のプロとして顧客に提案・アドバイスできるスキルが...

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1.物流5機能の中で最も重要な機能

この連載で何度も取り上げていますが、物流には次の5つの機能があるといわれています。

  1. 輸送
  2. 保管
  3. 包装
  4. 荷役
  5. 流通加工

 

この5つの中に「包装」という機能があります。これは梱包、または荷姿と呼ばれたりします。物流の5つの機能の中で最も重要と思われるのがこの「包装」なのです。ではなぜ、最も重要だといえるのでしょうか。それは「包装」の影響を受けて、さまざまな別の機能の効率が変化するからです。今回の「物流におけるパッケージングエンジニアリングとは」ではこの解説から始めます。

 

包装は製品の移動や保管を行う際、品質を保持するために存在します。本来であれば包装など無ければそれに越したことはありません。しかし実際に製品同士を重ね合わせることは、品質上不可能な場合がほとんどです。ましてや裸のままでトラックに載せ、輸送できるような製品は少数派なのではないでしょうか。

 

つまり物を保管、輸送する際、包装機能は無くてはならないのです。それゆえ、に物流5機能の中で最も重要といわれるわけです。さらに必要最小限の包装は場所を取ることもなく、トラックの荷台にも多く積載できるため、非常にエリア効率に貢献するのです。

 

一方で物流をなりわいとしている事業者の中で、最重要機能の包装についてどこまで取り組まれているでしょうか。よく見受けられるのは「輸出梱包」です。特に船舶で長時間輸送を行う場合は、中身が傷まないようにそれ相応の梱包が求められます。

 

それこそプロの領域ですから専業者に任せたいという荷主が多いのではないでしょうか。そのような意味からも、輸出梱包を請け負っている事業者には「梱包技術」、すなわちパッケージングエンジニアリングのスキルが求められるのです。

 

それ以外ではどうでしょうか。小物製品のポリ袋詰めや段ボール梱包などに取り組んでいる会社もあるかもしれません。また通信販売の製品について、段ボール梱包を出荷準備の段階で実施している会社もあることでしょう。

 

ではその梱包仕様は誰がどのように定めているのでしょうか。もしかしたら現場サイドの勘やコツに頼っているのではないでしょうか。

 

物流事業者、荷主ともに実はこのパッケージングエンジニアリングのプロが必要なのです。プロを育てて効率的な包装を通して、効率的な物流を実現していくための重要な視点について考えていきましょう。

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2.パッケージング設計

メーカーではパッケージング専門の部署を設けている会社もあります。欧米では一般的のようですが、日本ではそこまで行っている会社は少数派のようです。

 

その原因の一つとして、まだまだ物流に対する関心度が低いことが挙げられます。例えば、容器を工夫することで物流効率がまったく違ってくるのですが、容器を改善して物流を効率化しようという発想にいたらないのです。仕事としてパッケージング設計が必要となることは分かってはいるものの、その仕事に会社の中のスーパーエリートをつけないということも、パッケージングエンジニアリング(技術)、効率的なサプライチェーンが進歩しない要因と考えられます。

 

これも当たり前のことですが「製品設計」そのものに、優秀な人材を充てる会社がほとんどで物流は二の次です。ここが欧米企業と異なるところです。

 

しかし近年、食料品容器などは明らかに変わってきています。ビール瓶(びん)や缶の容器の肉厚を薄くし軽量化することで、物流効率を圧倒的に向上させている会社もあります。消費者の使いやすさとコストを両立させるような調味料用容器も開発されています。つまりすでに包装機能の重要性に気づき、注力している会社もあるのです。ここまで来れば物流業務に対する人材の充て方も変わってくることでしょう。その会社の容器そのものがバリュー(価値)になっているからです。

 

一般的に物流はコストと認識されます。しかし物流が付加価値を生むこともあり得るのです。その典型が包装機能で、それを支えるのがパッケージングエンジニアリングなのです。物流事業者にもこの包装機能の大切さについて、もっと認識してほしいと思います。物流事業者はパッケージングを「荷主の仕事だ」と言い切ることがありますが、これは物流のプロとしてはいかがなものかと思います。

 

「いかに保管効率が良くなるために包装をどの様にしたらよいのか」「輸送効率を向上させるためにはどうしたらよいのか」など、このような観点でアドバイスできない物流事業者であれば、物流のプロとはいえません。顧客から頼られ、事業を拡大していく物流事業者はこの包装機能に着目し、的確な方策を立案して実現していかなければならないのです。

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3.荷姿は物流技術

顧客の荷物を日々取り扱っている物流事業者は、顧客のパッケージングについて「もっと、こうしたらよいのに」という気づきが必ずあるはずです。もし何も気づきが無いのであれば、それはパーフェクトなパッケージングというよりも、物流事業者の認識の方に問題があるといえるかもしれません。

 

物流の現場は常に改善すべき点が転がっています。まったく隙が無いほど改善されている現場は皆無といってもよいでしょう。

 

輸送に際し、トラックの荷台に隙間ができるようなパッケージングは問題があると考えましょう。本来であれば、荷台にきっちりと納まる荷を設計することが必要です。つまり「荷台の輪切りでパッケージングモジュールを作っていくことが輸送効率の決め手になる」ということです。これに一番気づいていると思われるのが物流事業者なのです。繰り返しになりますが、気づいていなければ、それは物流のプロとして問題ありということになります。

 

一方で輸送効率を向上させると売り上げが落ちてしまう、保管効率を向上させてしまうと倉庫収入が減るという理由で、パッケージング改善の提案をしない事業者であれば、それなりのレベルの会社だといわざるを得ません。

 

これからの物流事業者は、物流のプロとして顧客に提案・アドバイスできるスキルが求められます。顧客の立場から本当に「頼れる物流会社」であってほしいわけです。パッケージング改善を行うことで輸送効率が向上し、トラック台数を減らすことができます。その結果としてドライバー不足に対する対応とCO2削減への貢献が可能となります。

 

パッケージングエンジニアリングという名の通り、この業務は「技術」なのです。いわゆる物流技術の中心的存在なわけです。皆さんは物流を技術としてとらえているでしょうか。それとも単純な物の移動と考えているのでしょうか。実はこの認識が、物流の地位を向上できるかどうかに懸かってるといっても過言ではないのです。

 

物流業界が直面している問題点の解消は、パッケージングエンジニアリングを駆使することです。上述のパッケージング改善には本気で取り組む必要があると思います。繰り返しになりますが、パッケージングエンジニアリングは物流の中で最重要業務です。同業他社のパッケージングを研究し、その上を行く荷姿を作り上げていきましょう。同時にこの業務ができる人材を育成していきましょう。意識的にこの取り組みを実行できる会社こそが、効率的サプライチェーンを実現でき、業界として生き残っていくことが可能となるでしょう。

 

 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人...


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