‐技術開発の目標について 第2回‐ 製品・技術開発力強化策の事例(その16)

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 info964技術開発の目標を解説する以下の項目4点について、前回は、1と2を解説しましたので、今回は、第2回として、3と4を記述します。
 
       1.開発のための情報収集目標件数の設定
    2.開発製品の特性
    3.多品種少量製品における開発上の留意点
    4.開発活動の時間配分
 

3.多品種少量製品における開発上の留意点

 研究開発を主体に事業を展開している企業では、経営者は、開発が得意なため顧客の要求する開発を次々に引き受けて開発に取り組んでいる場合が多いようです。これらの中で始めての設計の場合、実際に組み立てる過程や試運転の段階で問題点が判り、設計の修正が行われることは珍しくありません。顧客の要求に応えて開発することで顧客の満足は得られますが、全てを最初から設計すると生産に入ってから判る設計上の問題点、組み立て過程で判る図面修正の必要性等の手数が多くかかり、利益が確保できないで収支トントンまたは、赤字になる場合があります。始めて作成した図面では製作する段階になって判る問題点が多く潜在しています。
 
 設計者に、問題を発生させないような図面を書くように要求することは無理があります。実際にやってみないと判らない問題が存在するからです。一般的に、生産段階で手直しが必要になって、修正に要した費用まで含めた見積り額で受注することはないので、このような修正の作業に手数を多くかけると、余程特徴のある技術でない限り赤字になります。また、設計段階で試行錯誤の研究的な作業が多くなると、赤字になる場合があります。これらの問題を回避して、利益を確保できるような受注体制を確立しなければなりません。その対策としては、次のようなことが行われています。
 
 第一に、単一部品、幾つかの部品を組み合せたモジュ-ル及びユニットの標準化を図り、その再利用率を高めていくようにします。具体的な方法としては、設計者に再利用の可能性のある部品などをデ-タベ-スに登録させます。そして、その利用率の高い設計を行う事を奨励します。登録件数が多い設計者には別途褒賞制度により評価します。この方法はソフトウエアの業務でも同じようなことが行われている事例があります。
 
 第二に、過去に受注した製品を分類評価して、類似の製品別に括り、寸法形状などの標準化を図り、標準品を採用した場合納期、品質、価格で顧客が得をする事を販売に際して強調します。その中で、特別仕様の受注では割高になることを明確に示す事で、標準品の販売高を上げるようにします。
 
 第三に、得意分野を明確にし、その分野に集中して事業展開を図り、特定した分野ではNo1企業になることを目指す。このような取り組み方をすると、上述した標準化が進め易くなるだけでなく、他社では出来ない技術の場合に、価格交渉で主導できます。
 
 第四に、構想段階、詳細設計着手前、試作品設計完了段階等の段階で設計図検討会議を各工程の代表者を参加させて検討会を開き、問題を事前に捉えて解決する様にします。
 

4.開発活動の時間配分

 小規模の企業では、研究開発の業務に専念することが出来がたく、日常業務との兼務で仕事が処理される場合が多いです。兼務の形で開発に従事していると、開発のような困難な業務よりも日常の繰り返しのある苦しみの少ない業務の方に流れがちで、その方に時間を多く費やすようになり易いです。加えて、開発担当者に開発以外の仕事を急ぐ必要があるとの理由でやらせると、開発作業は確実に中断したままになる事が多いです。
 
 このようなことの繰り返しでは、開発が進展せず何時まで経っても成果が現れないことが起こります。最も好ましいのは、兼務をやめさせて、開発専業にして、それが困難な場合には、開発に従事する時間帯を決めてその時間には日常業務をさせないことです。どのような理由があってもそれを守るように周囲が応援する。特に経営者はこの問題に最大の配慮をすることです。経営者は、開発は重要な先行投資であり、次の飯の種になる大切な手段であると強調して、全社上げての協力体制を整えるようにします。
 
 一般的に開発に関する業務は形になって現れにくく、成果が見えてこないから、「扶養家族」の意識で社内から見られる場合が少なくありません。ややもすると孤立しそうになる開発担当者を勇気付け、励ますのは経営者の大切な仕事です。
 
事例:ある機械メ-カで次のような対策を...
 info964技術開発の目標を解説する以下の項目4点について、前回は、1と2を解説しましたので、今回は、第2回として、3と4を記述します。
 
       1.開発のための情報収集目標件数の設定
    2.開発製品の特性
    3.多品種少量製品における開発上の留意点
    4.開発活動の時間配分
 

3.多品種少量製品における開発上の留意点

 研究開発を主体に事業を展開している企業では、経営者は、開発が得意なため顧客の要求する開発を次々に引き受けて開発に取り組んでいる場合が多いようです。これらの中で始めての設計の場合、実際に組み立てる過程や試運転の段階で問題点が判り、設計の修正が行われることは珍しくありません。顧客の要求に応えて開発することで顧客の満足は得られますが、全てを最初から設計すると生産に入ってから判る設計上の問題点、組み立て過程で判る図面修正の必要性等の手数が多くかかり、利益が確保できないで収支トントンまたは、赤字になる場合があります。始めて作成した図面では製作する段階になって判る問題点が多く潜在しています。
 
 設計者に、問題を発生させないような図面を書くように要求することは無理があります。実際にやってみないと判らない問題が存在するからです。一般的に、生産段階で手直しが必要になって、修正に要した費用まで含めた見積り額で受注することはないので、このような修正の作業に手数を多くかけると、余程特徴のある技術でない限り赤字になります。また、設計段階で試行錯誤の研究的な作業が多くなると、赤字になる場合があります。これらの問題を回避して、利益を確保できるような受注体制を確立しなければなりません。その対策としては、次のようなことが行われています。
 
 第一に、単一部品、幾つかの部品を組み合せたモジュ-ル及びユニットの標準化を図り、その再利用率を高めていくようにします。具体的な方法としては、設計者に再利用の可能性のある部品などをデ-タベ-スに登録させます。そして、その利用率の高い設計を行う事を奨励します。登録件数が多い設計者には別途褒賞制度により評価します。この方法はソフトウエアの業務でも同じようなことが行われている事例があります。
 
 第二に、過去に受注した製品を分類評価して、類似の製品別に括り、寸法形状などの標準化を図り、標準品を採用した場合納期、品質、価格で顧客が得をする事を販売に際して強調します。その中で、特別仕様の受注では割高になることを明確に示す事で、標準品の販売高を上げるようにします。
 
 第三に、得意分野を明確にし、その分野に集中して事業展開を図り、特定した分野ではNo1企業になることを目指す。このような取り組み方をすると、上述した標準化が進め易くなるだけでなく、他社では出来ない技術の場合に、価格交渉で主導できます。
 
 第四に、構想段階、詳細設計着手前、試作品設計完了段階等の段階で設計図検討会議を各工程の代表者を参加させて検討会を開き、問題を事前に捉えて解決する様にします。
 

4.開発活動の時間配分

 小規模の企業では、研究開発の業務に専念することが出来がたく、日常業務との兼務で仕事が処理される場合が多いです。兼務の形で開発に従事していると、開発のような困難な業務よりも日常の繰り返しのある苦しみの少ない業務の方に流れがちで、その方に時間を多く費やすようになり易いです。加えて、開発担当者に開発以外の仕事を急ぐ必要があるとの理由でやらせると、開発作業は確実に中断したままになる事が多いです。
 
 このようなことの繰り返しでは、開発が進展せず何時まで経っても成果が現れないことが起こります。最も好ましいのは、兼務をやめさせて、開発専業にして、それが困難な場合には、開発に従事する時間帯を決めてその時間には日常業務をさせないことです。どのような理由があってもそれを守るように周囲が応援する。特に経営者はこの問題に最大の配慮をすることです。経営者は、開発は重要な先行投資であり、次の飯の種になる大切な手段であると強調して、全社上げての協力体制を整えるようにします。
 
 一般的に開発に関する業務は形になって現れにくく、成果が見えてこないから、「扶養家族」の意識で社内から見られる場合が少なくありません。ややもすると孤立しそうになる開発担当者を勇気付け、励ますのは経営者の大切な仕事です。
 
事例:ある機械メ-カで次のような対策を講じて「 設計者が雑用に追われる事を回避 」しました。
 
 設計課では営業や客先から問い合わせに応じるため、設計技術者がその対応に追われて設計業務が中断し業務効率が悪く困っていました。設計部門の生産性を上げるために検討会を開き次の様な結論を得ました。設計課への問い合わせが多い時間帯を調べたところ、昼食前の頃にそれが多くなっている事がわかりこの傾向を利用して11:00~12:00(課外への対応時間)の間に様々な問い合わせに対応することにして、営業課を始め社内に協力要請をしました。ただし、緊急を要する場合はこれに限らない事とし、緊急性がない業務処理については、窓口になった事務員が用件を聞き、課外への対応時間帯に担当者に返答させる事について、社長の承認を得て実行に移しました。最初の間は決められた通りにはなりにくく、営業の反発もかなりのものでした。しかし、実施状況について月末に経過報告を行い、協力を要請していく中から、習慣付けが行われる様になり、ほぼ、目的が果たされて設計業務に集中できる時間が増え生産性が大きく向上しました。
 

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この記事の著者

新庄 秀光

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