社内コミュニケーションの国際性 トヨタとサムスンの違い(その1)

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コミニュケーション論

【トヨタとサムスンの違い 連載目次】

1. 社内コミュニケーションの国際性

2. 企業集団と業態

3. 組織形態と運用について

4. 博士号保有率

 

♦社内公用語も企業によって様々

 今回は、トヨタとサムスンの違いについて、事例解説します。第1回は、社内コミュニケーションの国際性についてです。

 

 トヨタ本社での業務は当たり前のように日本語です。海外と関連する場合は英語、ないし現地語となりますが、基本、日々は日本語です。

 一方のサムスン。こちらも韓国人同士が本社でコミュニケーションする場合は、韓国語です。ただし、ひとたび外国人が参加するとなると、きわめて柔軟に対応します。我々日本人が参加する際、同時通訳対応です。社内に通訳さんが何人か待機していて、電話一本ですぐに来てくれます。

 かなりの割合で韓国人は日本語を理解しますので、極小規模な打ち合わせの場合は、通訳なしの日本語のケースも多かったようです。日本語ができる世代は、役員級の年配の方と、若手に二分していたような印象がありました。

 年配の方は、日本からの各種導入のために日本語が必要であり、一方の若手の方々は、第二外国語が日本語で、中学時代から学習しているということで、簡単な意思疎通は可能でした。もちろん、どなたも英語が堪能ですので、日本語で意思疎通ができなくなると英語に切り替えるというようなコミュニケーションでした。もちろん、日本語が理解できない方とは始めから英語での会話です。

 サムスンでは、社内で韓国語のレッスンがありました。英語のできない日本人の方は社内でのコミュニケーションに韓国語を活用していました。通訳はいつでも来てくれますが、日常的なちょっとした会話に韓国語を使っていました。例えば「成形機の予約を代理で入力してほしんだけど・・」などです。

 私は中途半場に英語で意思疎通できたので、韓国語を使う機会がなく、さっぱり上達しませんでした。今にして思えば、もったいないことをしました。

 日本の大手通信機器メーカからサムスンに移った方がいました。元の会社では、一人でも外国人が参加する打ち合わせは英語で実施しないといけないというルールがあったそうです。

 

 ゴーンさんが来てからの日産では、公用語が英語になったとのことで、会議や議事録は英語です。かつて日産に勤務していた方が、仕事の能力よりも英語の能力が高い人間のほうが優遇されると愚痴っていました。意思疎通しやすい人を重宝したということなのでしょう。

 これらと比べてみると、トヨタの社内コミュニケーションでの日本語率はかなり高いものでした。

 もちろん時代とともにどんどんと状況は変化しています。サムスンの日本語率は急激に下がってます。中国語にシフトしています。終業後に社内で外国語レッスンがありますが、既に、7、8年前に日本語・中国語の受講者数が逆転したそうです。

 一方のトヨタ、最近の状況は分かりませんが、こちらは急激に国際化していると思われます。

 

 【コラム:従業員の評価】

 在宅勤務の評価をどうするかが話題となっていますが、成果の客観的な評価指標を明確にする必要があるといわれています。トヨタもサムスンも従業員の評価プロセスや指標は明確となっていて、期初にコミットし、期末に上司と自分で査定し交渉するというところも同じです。

 しかし定量化度合いはだいぶ異なります。トヨタは100%定量評価できない目標も許容しますが、サムスンはすべて数字目標です。会社の違いではなく、国民性の違いかもしれません。

 以前、日本のある学会を聴講した折、韓国の大手企業Xの方が立て続けに3人ほど発表していました。そのセッションのテーマとは、ずれた内容の発表で違和感がありましたが、どうも確信犯と思われる発表のようでした。これって「海外の学会で発表する」というコミットメントの成果を上げるためではなかったのかと勘ぐっています。

 次回は、トヨタとサムスンの違い(その2)企業集団と業態 を解説します。

 

 【出典】技術オフィスTech-T  HPより、筆者のご承諾により編集して掲載


この記事の著者

高原 忠良

トヨタ式の ” ち密さ ” をサムスン流の ” スピード ” で! 自動車業界 × 樹脂部品を中心に開発から製造までのコンサルティング

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