技術戦略 研究テーマの多様な情報源(その31)

更新日

投稿日

 
st3
 
 

1.『価値づくり』というイノベーションの創出のメカニズム

 
 経済学者でありイノベーションの研究者であるシュンペーターは、「イノベーションとは新結合である」と唱えています。つまり、イノベーションは天から降ってくるものではなく、既存の知識の新しい組み合わせ(新結合)で生まれるということです。私は、『価値づくり』、すなわち顧客に対して大きな価値は、何らかの既存の知識の新結合が起こることにより生まれると考えています。
 

2.『スパーク』の原料としての『市場知識』と『技術知識』

 
 それでは、何の新結合によって顧客への大きな価値が生まれるのでしょうか、それについては、私は市場知識と技術知識の新結合(スパーク)によるものと考えています。なぜなら、顧客価値創出をするためには、何に対して顧客は価値を認識するかについての知識を持っていなければなりません。
 
 顧客ニーズに関するマーケティングの研究から明らかにされている点に、顧客に「何が欲しいですか?何に困っていますか?」と聞いても、顧客ニーズは得られるものではないことがあります。なぜそうなのかと言うと、顧客は、顧客自身のことを十分理解しているわけではないからです。
 
 したがって、顧客が認識する価値を理解するためには、様々な市場(顧客の集合体)に関する断片的知識を広くかつ深く集め、蓄積することが重要となります。そして、そこに基づき、顧客が何に『潜在的』に価値を認識するかを想像力豊にし「想定」しなければなりません。
 
 しかし、いくら市場の知識を豊富に持ち、そこから『潜在的な顧客価値』を認識したとしても、それを実現するにはその実現の方法、すなわち技術についての知識がなければなりません。この技術知識は、必ずしも自社が知っている、もしくは保有している技術であるとは限りません。なぜなら、顧客価値の創出の機会は、自社の都合(その技術を知っている、保有している)とは全く独立して存在するからです。そのため、実際には現実的には不可能ですが、世の中の技術についてのすべての知識を知っていることが理想です。
 
 三位一体のモデルにおいては、この市場知識を収集する活動が「市場起点の思考と活動」で、技術知識を集め深化させる活動が「オープン・イノベーションの徹底」と「コア技術戦略の追求」となっています。
 

3.三位一体の三つの要素間での3つの『スパーク』

 
 このようなメカニズムがあるので、三位一体のモデルにおいては、「市場起点の思考と活動」の結果の『市場知識』と、「オープン・イノベーションの徹底」と「コア技術戦略の追求」の結果の『技術知識』がスパークを起こし、『価値づくり』すなわち、顧客にとっての大きな価値が創出されます。
 
 以上に加えて、顧客価値創出に向けては、技術同士、すなわち、『社内の...
 
st3
 
 

1.『価値づくり』というイノベーションの創出のメカニズム

 
 経済学者でありイノベーションの研究者であるシュンペーターは、「イノベーションとは新結合である」と唱えています。つまり、イノベーションは天から降ってくるものではなく、既存の知識の新しい組み合わせ(新結合)で生まれるということです。私は、『価値づくり』、すなわち顧客に対して大きな価値は、何らかの既存の知識の新結合が起こることにより生まれると考えています。
 

2.『スパーク』の原料としての『市場知識』と『技術知識』

 
 それでは、何の新結合によって顧客への大きな価値が生まれるのでしょうか、それについては、私は市場知識と技術知識の新結合(スパーク)によるものと考えています。なぜなら、顧客価値創出をするためには、何に対して顧客は価値を認識するかについての知識を持っていなければなりません。
 
 顧客ニーズに関するマーケティングの研究から明らかにされている点に、顧客に「何が欲しいですか?何に困っていますか?」と聞いても、顧客ニーズは得られるものではないことがあります。なぜそうなのかと言うと、顧客は、顧客自身のことを十分理解しているわけではないからです。
 
 したがって、顧客が認識する価値を理解するためには、様々な市場(顧客の集合体)に関する断片的知識を広くかつ深く集め、蓄積することが重要となります。そして、そこに基づき、顧客が何に『潜在的』に価値を認識するかを想像力豊にし「想定」しなければなりません。
 
 しかし、いくら市場の知識を豊富に持ち、そこから『潜在的な顧客価値』を認識したとしても、それを実現するにはその実現の方法、すなわち技術についての知識がなければなりません。この技術知識は、必ずしも自社が知っている、もしくは保有している技術であるとは限りません。なぜなら、顧客価値の創出の機会は、自社の都合(その技術を知っている、保有している)とは全く独立して存在するからです。そのため、実際には現実的には不可能ですが、世の中の技術についてのすべての知識を知っていることが理想です。
 
 三位一体のモデルにおいては、この市場知識を収集する活動が「市場起点の思考と活動」で、技術知識を集め深化させる活動が「オープン・イノベーションの徹底」と「コア技術戦略の追求」となっています。
 

3.三位一体の三つの要素間での3つの『スパーク』

 
 このようなメカニズムがあるので、三位一体のモデルにおいては、「市場起点の思考と活動」の結果の『市場知識』と、「オープン・イノベーションの徹底」と「コア技術戦略の追求」の結果の『技術知識』がスパークを起こし、『価値づくり』すなわち、顧客にとっての大きな価値が創出されます。
 
 以上に加えて、顧客価値創出に向けては、技術同士、すなわち、『社内の技術知識』と『外部の技術知識』との間でもスパークが起こります。自社のこの技術と外部のこの技術を組み合わせることで、大きな顧客の価値を実現できるという考え方です。
 
◆顧客価値を創出する『スパーク』は、三位一体モデルの、次の三つの要素の間で発生するのです。
 
(1)「市場起点の思考と活動」と「オープン・イノベーションの徹底」
(2)「市場起点の思考と活動」と「コア技術戦略の追求」
(3)「コア技術戦略の追求」と「オープン・イノベーションの徹底」
 
     

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
国内の現状 オープンイノベーションとは(その2)

         【オープンイノベーションとは 連載目次】 1. オープンイノベーショ...

         【オープンイノベーションとは 連載目次】 1. オープンイノベーショ...


設計標準の必要性と作り方(その2)

1.設計標準はベストコストのガイドライン  前回のその1に続いて解説します。一部の大手製造業では、コスト意識を高めてベストコストでの製品設計を実現す...

1.設計標準はベストコストのガイドライン  前回のその1に続いて解説します。一部の大手製造業では、コスト意識を高めてベストコストでの製品設計を実現す...


関係性の種類、協調とは 普通の組織をイノベーティブにする処方箋(その99)

 現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」をテーマに解説しています。今回は前回に続き「協調」について考えてみます。 ◆関連解説記...

 現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」をテーマに解説しています。今回は前回に続き「協調」について考えてみます。 ◆関連解説記...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
コアコンピタンスを生かした開発と販売の発展とは

        今回は、次のような想定企業の状況で、自社の独自技術を生かした製品開発と販売方法について解説します。   1. 想定企業の経営状況...

        今回は、次のような想定企業の状況で、自社の独自技術を生かした製品開発と販売方法について解説します。   1. 想定企業の経営状況...


スケールド・アジャイル・フレームワーク (SAFe) の導入開始

        はたして僕が勤める企業はスケールド・アジャイル・フレームワーク (SAFe) を上手く導入で...

        はたして僕が勤める企業はスケールド・アジャイル・フレームワーク (SAFe) を上手く導入で...


技術プラットフォームの重要性

【ものづくり企業のR&Dと経営機能 記事目次】 管理力より技術力を磨け 技術プラットフォームの重要性 手段としてのオープンイノベーション...

【ものづくり企業のR&Dと経営機能 記事目次】 管理力より技術力を磨け 技術プラットフォームの重要性 手段としてのオープンイノベーション...