合金工具鋼鋼材 耐衝撃工具鋼と冷間金型と熱間金型:金属材料基礎講座(その112)

投稿日

合金工具鋼鋼材 耐衝撃工具鋼と冷間金型と熱間金型:金属材料基礎講座(その112)

 

前回のJIS G4053 & JIS G4404:金属材料基礎講座(その111)に続けて、解説します。

【目次】

    1. JIS G4404 合金工具鋼鋼材 耐衝撃工具鋼

    耐衝撃工具鋼4種類の化学成分を下表に示します。たがねやポンチなどに使用されます。強い衝撃を受けても破壊しないように靭性が必要になります。SKS4、SKS41は炭素量が低いため靭性があります。そこにCr、Wを添加しています。場合によっては浸炭することもあります。反対にSKS43、SKS44は炭素量が高めでVを添加しています。VもCrやWと同様に炭化物を形成しますが、結晶粒を微細化する働きがあるため、焼入れ性が悪くなります。そのため、表面は硬く、内部は軟らかくなるため、靭性に優れます。ヘッディングダイスなどに使用されます。

     

    合金工具鋼鋼材 耐衝撃工具鋼と冷間金型と熱間金型:金属材料基礎講座(その112)

     

    2. JIS G4404 合金工具鋼鋼材 冷間金型

    冷間金型10種類の化学成分を下表に示します。冷間金型は大きくSKSとSKDに分かれます。SKDはダイス鋼とも呼ばれます。両者の違いはCやCr量に現れます。SKSのCは約1%、Crも1%以下の量ですが、SKDではCは2%、Ctは12%程度まで添加量が高くなります。冷間金型鋼としてはSKD11がよく使用されます。空冷で焼入れができるほど、焼入れ性が良く、耐摩耗性に優れます。これは粗大なクロム炭化物があるためです。また、焼入れの変形も少ないです。ゲージ、プレス型などに使用されます。

     

    合金工具鋼鋼材 耐衝撃工具鋼と冷間金型と熱間金型:金属材料基礎講座(その112)

     

    3. JIS G4404 合金工具鋼鋼材 熱間金型

     熱間金型10種類の化学成分を下表に示します。熱間金型は大きくSKDとSKTに分かれます。SKDがダイカスト鋼、SKTが鍛造型鋼です。そして、SKDとSKTではSKDの方が炭素量が少なめです。SKD4、SKD5はWが高く、SKD6、SKD61、SKD62はCrが高くMoも添加されています。熱間金型鋼としてはSKD61がよく使用されます。熱間金型はほかの合金工具鋼よりも炭素量が低めとなっています。これは加熱冷却によるヒートチェックを防止するためです。熱間金型では高温での硬さや耐摩耗性が必要で、ダイカストなどに使用されます。

     

    合金工具鋼鋼材 耐衝撃工具鋼と冷間金型と熱間金型:金属材料基礎講座(その112)

     

     

    次回に...

    合金工具鋼鋼材 耐衝撃工具鋼と冷間金型と熱間金型:金属材料基礎講座(その112)

     

    前回のJIS G4053 & JIS G4404:金属材料基礎講座(その111)に続けて、解説します。

    【目次】

      1. JIS G4404 合金工具鋼鋼材 耐衝撃工具鋼

      耐衝撃工具鋼4種類の化学成分を下表に示します。たがねやポンチなどに使用されます。強い衝撃を受けても破壊しないように靭性が必要になります。SKS4、SKS41は炭素量が低いため靭性があります。そこにCr、Wを添加しています。場合によっては浸炭することもあります。反対にSKS43、SKS44は炭素量が高めでVを添加しています。VもCrやWと同様に炭化物を形成しますが、結晶粒を微細化する働きがあるため、焼入れ性が悪くなります。そのため、表面は硬く、内部は軟らかくなるため、靭性に優れます。ヘッディングダイスなどに使用されます。

       

      合金工具鋼鋼材 耐衝撃工具鋼と冷間金型と熱間金型:金属材料基礎講座(その112)

       

      2. JIS G4404 合金工具鋼鋼材 冷間金型

      冷間金型10種類の化学成分を下表に示します。冷間金型は大きくSKSとSKDに分かれます。SKDはダイス鋼とも呼ばれます。両者の違いはCやCr量に現れます。SKSのCは約1%、Crも1%以下の量ですが、SKDではCは2%、Ctは12%程度まで添加量が高くなります。冷間金型鋼としてはSKD11がよく使用されます。空冷で焼入れができるほど、焼入れ性が良く、耐摩耗性に優れます。これは粗大なクロム炭化物があるためです。また、焼入れの変形も少ないです。ゲージ、プレス型などに使用されます。

       

      合金工具鋼鋼材 耐衝撃工具鋼と冷間金型と熱間金型:金属材料基礎講座(その112)

       

      3. JIS G4404 合金工具鋼鋼材 熱間金型

       熱間金型10種類の化学成分を下表に示します。熱間金型は大きくSKDとSKTに分かれます。SKDがダイカスト鋼、SKTが鍛造型鋼です。そして、SKDとSKTではSKDの方が炭素量が少なめです。SKD4、SKD5はWが高く、SKD6、SKD61、SKD62はCrが高くMoも添加されています。熱間金型鋼としてはSKD61がよく使用されます。熱間金型はほかの合金工具鋼よりも炭素量が低めとなっています。これは加熱冷却によるヒートチェックを防止するためです。熱間金型では高温での硬さや耐摩耗性が必要で、ダイカストなどに使用されます。

       

      合金工具鋼鋼材 耐衝撃工具鋼と冷間金型と熱間金型:金属材料基礎講座(その112)

       

       

      次回に続きます。

      関連解説記事:マランゴニ対流~宇宙でもきれいに混ざらない合金の不思議 

      関連解説記事:金属材料基礎講座 【連載記事紹介】

       

      連載記事紹介:ものづくりドットコムの人気連載記事をまとめたページはこちら!

       

      【ものづくり セミナーサーチ】 セミナー紹介:国内最大級のセミナー掲載数 〈ものづくりセミナーサーチ〉 はこちら!

       

         続きを読むには・・・


      この記事の著者

      福﨑 昌宏

      金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

      金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


      「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

      もっと見る
      残留オーステナイトとは:金属材料基礎講座(その98)

        ◆ 残留オーステナイト  オーステナイト[1]を急冷するとマルテンサイト組織ができますが、Ms点、Mf点は炭素量によって温度が変化し...

        ◆ 残留オーステナイト  オーステナイト[1]を急冷するとマルテンサイト組織ができますが、Ms点、Mf点は炭素量によって温度が変化し...


      焼結とは

        自動車産業などに燒結金属やセラミックスの利用拡大がなされていますが、セラミックスや金属の製造方法として、焼結は利用されています。セラミ...

        自動車産業などに燒結金属やセラミックスの利用拡大がなされていますが、セラミックスや金属の製造方法として、焼結は利用されています。セラミ...


      JIS G4051 機械構造用炭素鋼鋼材:金属材料基礎講座(その105) 

             機械構造用炭素鋼鋼材はS〇〇Cと呼びます。SとCはそれぞれSteel、Carbonです。SとC...

             機械構造用炭素鋼鋼材はS〇〇Cと呼びます。SとCはそれぞれSteel、Carbonです。SとC...


      「金属・無機材料技術」の活用事例

      もっと見る
      金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

       私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

       私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...


      ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

       15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

       15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...