~品質を確保する活動~ ファブレス小売業の品質保証(その5)

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品質マネジメント

 

特定分野を長期間に渡って学び・経験された方は多いと思います。しかし、同じ製造業でも業界が異なると、慣習や考え方の基準は変ります。ましてや作り手(製造業)と売り手(小売業)では視点やスタンスが大きく異なってきます。「業務委託先がなかなか思うように動いてくれない」と感じたことはありませんか。 電気製品、家具、アパレル、バッグ、スニーカー、食品など様々な工場で品質改善・業務改善に取り組む中で、その工場が知らない、他業界のちょっとした「コツ」や「ヒント」が問題を一気に解決することがあります。ファブレス小売業の品質保証について、今回は、第5回です。

【この連載の前回:ファブレス小売業の品質保証(その4)へのリンク】

 

【目次】
1.製造委託製品の品質を確保する活動
2.商社経由での取引

 

1.製造委託製品の品質を確保する活動

新商品開発時

・要求事項は十分に検討した上でインプットし、トップヘビー型の開発を心がける。
・試作評価では、複数の異なる視点(人員)で、要求仕様が実現できているかのレビューを行う。
・開発スケジュールを明確にするとともに、確認項目に抜け・モレの無いように管理する。
・製品の信頼性を保証する試験項目を明確にして、問題を未然に防止する。
・量産時のバラツキの確認を目的とした量産試作を実施する。

 

量産開始時

・部材のサプライチェーンと管理状況を確認する。
・製造委託工場の生産タイミングに合わせて立会いを実施して、品質状況を確認する。
・生産進捗や不良数など品質状況を現場に掲示、共有して問題の改善を迅速に図る。
・定期的に製造現場の工程パトロールを実施して、品質を改善する。

 

商品出荷後

・出荷品の抜取検査を実施して、受入時に品質をチェックする。(輸送品質の確保も含む)

 

定期的な取り組み

・市場不良に伴う品質情報を迅速にフィードバックし、改善する。
・定期的に品質会議を実施して、品質問題をフォーローアップする。
・定期工場監査を実施して、品質管理体制を維持向上させる。

 

2.商社経由での取引

商品によっては、商社を経由して製造委託先工場との取引を行うことがあります。その場合、注文や商品の納品、代金の支払いなどの商流・物流は、当然商社経由になりますが、情報流も商社を経由することになります。つまり、不具合情報のフィードバックや工場からの報告書なども商社経由になるということです。

 

商社は、資源(原材料)や工場を開拓し、得られた資源や商品を販売者と結ぶ「ソーシング」が主な機能となります。資源や商品によっては、商社が独占販売権を所有している場合があり、そのようなケースでは商社経由の取引が必須となりますし、様々な形で多くの企業がお世話になっています。

 

商社は、ソーシングの基本要素であるCost(コスト)とDelivery(数量・納期)については、ビジネスがスムーズに進むように支援をする役割を果たしてくれます。しかし、Quality(品質)については、十分なサポートができていない場合もありますので注意が必要です。

 

本来であれば、商社自身が資源や商品の提供者として品質にも責任を持ってもらいたいものです。ものづくりにこだわりをもつ商社の中には、品質に関して独自の社内部門をもっている場合もありますし、大手メーカーで品質を専門にしていたエキスパートを中途採用するなどして、品質を確保しているケースもあります。しかし、実際には、自ら工場の品質を指導する組織体制まで構築していないことが多いと思われます。

 

商社が品質保証機能を持たない場合には、問題が発生した際にも、商社は...

品質マネジメント

 

特定分野を長期間に渡って学び・経験された方は多いと思います。しかし、同じ製造業でも業界が異なると、慣習や考え方の基準は変ります。ましてや作り手(製造業)と売り手(小売業)では視点やスタンスが大きく異なってきます。「業務委託先がなかなか思うように動いてくれない」と感じたことはありませんか。 電気製品、家具、アパレル、バッグ、スニーカー、食品など様々な工場で品質改善・業務改善に取り組む中で、その工場が知らない、他業界のちょっとした「コツ」や「ヒント」が問題を一気に解決することがあります。ファブレス小売業の品質保証について、今回は、第5回です。

【この連載の前回:ファブレス小売業の品質保証(その4)へのリンク】

 

【目次】
1.製造委託製品の品質を確保する活動
2.商社経由での取引

 

1.製造委託製品の品質を確保する活動

新商品開発時

・要求事項は十分に検討した上でインプットし、トップヘビー型の開発を心がける。
・試作評価では、複数の異なる視点(人員)で、要求仕様が実現できているかのレビューを行う。
・開発スケジュールを明確にするとともに、確認項目に抜け・モレの無いように管理する。
・製品の信頼性を保証する試験項目を明確にして、問題を未然に防止する。
・量産時のバラツキの確認を目的とした量産試作を実施する。

 

量産開始時

・部材のサプライチェーンと管理状況を確認する。
・製造委託工場の生産タイミングに合わせて立会いを実施して、品質状況を確認する。
・生産進捗や不良数など品質状況を現場に掲示、共有して問題の改善を迅速に図る。
・定期的に製造現場の工程パトロールを実施して、品質を改善する。

 

商品出荷後

・出荷品の抜取検査を実施して、受入時に品質をチェックする。(輸送品質の確保も含む)

 

定期的な取り組み

・市場不良に伴う品質情報を迅速にフィードバックし、改善する。
・定期的に品質会議を実施して、品質問題をフォーローアップする。
・定期工場監査を実施して、品質管理体制を維持向上させる。

 

2.商社経由での取引

商品によっては、商社を経由して製造委託先工場との取引を行うことがあります。その場合、注文や商品の納品、代金の支払いなどの商流・物流は、当然商社経由になりますが、情報流も商社を経由することになります。つまり、不具合情報のフィードバックや工場からの報告書なども商社経由になるということです。

 

商社は、資源(原材料)や工場を開拓し、得られた資源や商品を販売者と結ぶ「ソーシング」が主な機能となります。資源や商品によっては、商社が独占販売権を所有している場合があり、そのようなケースでは商社経由の取引が必須となりますし、様々な形で多くの企業がお世話になっています。

 

商社は、ソーシングの基本要素であるCost(コスト)とDelivery(数量・納期)については、ビジネスがスムーズに進むように支援をする役割を果たしてくれます。しかし、Quality(品質)については、十分なサポートができていない場合もありますので注意が必要です。

 

本来であれば、商社自身が資源や商品の提供者として品質にも責任を持ってもらいたいものです。ものづくりにこだわりをもつ商社の中には、品質に関して独自の社内部門をもっている場合もありますし、大手メーカーで品質を専門にしていたエキスパートを中途採用するなどして、品質を確保しているケースもあります。しかし、実際には、自ら工場の品質を指導する組織体制まで構築していないことが多いと思われます。

 

商社が品質保証機能を持たない場合には、問題が発生した際にも、商社は不具合情報を工場に伝達し、工場から上がってきた報告書を転送するだけという場合もあります。工場で現場・現物を確認していない状態では、対策の効果も疑問ですし、同じ問題が再発する可能性もあります。この様な場合には、品質に対する経験や知見のあるアドバイザーに協力を仰ぐのも一つの方法です。

 

いずれにしても商社を介した取引の場合は、介在する商社には「商社としての付加価値は、コストや納期、数量だけではなく、供給者として品質にも責任があること」をしっかり認識してもらうことが必要です。取引に関わる商社自身の品質マインドも高めて、協業して品質を向上させていきたいものです。

 

次回に続きます。

 

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この記事の著者

今澤 尚久

「商品を買う側(小売業)」と「商品を作る側(製造業)」の両方の業界経験をベースに実効性のある経営戦略を策定します。現場・現物・現実の三現主義で現状把握から施策立案・課題解決までの全工程を支援します。

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