ゴミを部品として考える レイアウトと物流(その7)

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生産マネジメント

 

1.ゴミを捨てるにも工数や費用がかかっている

部品を作る過程で哀れにも部品に至らなかった残りモノは、役目を終えたとたんにゴミと称されて廃棄処分になってしまいます。先ほどまでは付加価値を生む対象と一緒でしたが、切り離されるとすぐにお払い箱行になってしまいます。

 

まるで新聞のようであり、今日は新聞としての存在がありますが、翌朝には新聞紙となり廃棄対象に成り下がってしまいます。それでも古紙として再利用されると、再び使命を与えられるので何とか面目を保てますが、そのまま廃棄になれば1日の寿命で終わってしまいます。

 

工場の中でゴミと称されるものは、異物の混じった切削の切粉、焦げた成形部品、シール材の台紙、汚れて使えなくなった梱包材や空箱、保護シール、壊れたパレット、一回限りの緩衝剤、廃油、空になった各種容器や缶類、汚れた布きれ、破れた手袋、加工工程で不要になったものなど、数えきれないほど存在します。

 

これらは製品や部品と一緒に付帯して移動していけば、混入して悪影響を及ぼしますので、それぞれ発生した工程で区分や除去する必要があります。この区分したり除去したり、それを移動させるという行為も含めて、結局付加価値を生まないムダになっています。

 

ある工場で作業観察をしていた時に、シール材を貼り付けた後の台紙を一回ごとにゴミ箱まで移動して、さらにゴミ箱が低い位置にあったので、わざわざこごんでゴミを入れている一連の作業を発見しました。作業工数の項目には、シール材を貼るという項目だけですが、台紙を捨てるという行為も含まれています。シール材を貼るには3秒の工数ですが、台紙を捨てて元に戻るまでの5秒間も工数に組み込まれて合計8秒になっていることを指摘したわけです。この捨てるという作業を認めてしまっていたことで、彼らは見えなくなってしまったのです。そのため付加価値を生む作業と生まない作業(ムダ)にまず分けて、ムダはすぐに削減の対象にしたのです。

 

この台紙がなければお互いが接着してしまうので、それを作業の途中ではがすとなれば工数は非常にバラツキます。でも要らなくなった途端に台紙はゴミになってしまい、その場には必要でなくなり、作業の邪魔になるので少しでも早く撤去したいものです。

 

まさに区分すれば資源になり、混ぜてしまえばゴミに成り下がってしまいます。ゴミはそのまま放置しておけば、エントロピーの第二法則に則り次第に増えてきます。ゴミを捨てるにも回収するにも工数がかかり手間もかかりますので、取り扱いの考え方を変える必要があります。製品でも部品でもゴミでも、モノを移動させたり動かしたりすることは、必ず工数や費用が発生します。

 

2.ゴミを部品として考えてみると新しい発想が湧いてくる

発想の転換として、ゴミを部品として考えてみることを提案します。

 

今まではゴミとしてみなしていたので、その存在感を無視していましたが、ゴミも部品だと意識を変えるのです。先ほどの事例について、不要になった台紙の方に工数をかけて捨てていたことに疑問を投げかけることで、工場のメンバーも気づき始めました。組立や加工ばかりに焦点を合わせていたことを反省して、それらに付帯する作業も合わせて考えることで作業全体を見るようになりました。一連の作業の中をゴミも含めてトータルで工数を下げたり、作業性を向上させたり、ゴミ回収も部品や製品の搬送も併せて一つの流れに組み込んでいくことまで考えることになってきました。そうすると今まで気づかなかった周囲のことが一気に見えるようになります。

 

例えば、ゴミ箱が遠ければもっと近くに寄せて設置したり、手元に小さな箱を設置する。ゴミ箱の入り口が狭かったり小さかったりすれば、入れ口をラッパのように大きくする。また投入口が低ければ高くするために底上げしたり傾けたり、手元で離せば済むように長いガイド用の筒をつける。ゴミ箱に入れやすくするためにゴミ箱自体を加工したり、段ボールなどを組み合わせて改造を行う。

 

ゴミが予め出ないように事前に除去しておくなどと、視点が変わることで多くの気づきが見えるようになります。廃棄するゴミも部品と同じだけ考えることで、部品の供給とは反対に「捨てる」という作業の定位置定方向を決めるとか、バッチではなく1個ずつ排出するとか、カンバン部品のようになくなれば供給するのではなく回収して新しいゴミ箱と交換するなどとアイデアが湧いてきます。

 

ゴミ箱を部品供給箱に置き換えてみますと、さらに発想が変わってきます。ゴミ箱置き場のマーキングもアイデアが出てきます。ゴミ箱の置場にラインテープで周囲をマーキングして表示しますが、一般的なゴミ箱の直径が30cmであると、その周囲を覆うラインテープの長さは{30+5(余裕)}×4=140cmにもなります。テープ代も費用です。そこでテープに▼マークをつけて、ゴミ箱と床に貼り付けます。

 

▼と▲が向き合うことで、人間の心理として頂点と頂点を合わせたくなり、周囲を□のマーキングで覆うよりもきちんとゴミ箱を置くようになるのですから不思議です。この方法ですとテープの長さは10分の1で済みます。貼り付ける工数もテープ代も節約できます。まさに目からウロコです!このアイデアは多くの工場で採用してもらっています。

 

3.ゴミも資源として考えるとさらに発想は広がる

ゴミも部品と同様に移動するにも作業するにも工数がかかっているのならば、部品と一緒に扱うことを考えればよいと思います。

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生産マネジメント

 

1.ゴミを捨てるにも工数や費用がかかっている

部品を作る過程で哀れにも部品に至らなかった残りモノは、役目を終えたとたんにゴミと称されて廃棄処分になってしまいます。先ほどまでは付加価値を生む対象と一緒でしたが、切り離されるとすぐにお払い箱行になってしまいます。

 

まるで新聞のようであり、今日は新聞としての存在がありますが、翌朝には新聞紙となり廃棄対象に成り下がってしまいます。それでも古紙として再利用されると、再び使命を与えられるので何とか面目を保てますが、そのまま廃棄になれば1日の寿命で終わってしまいます。

 

工場の中でゴミと称されるものは、異物の混じった切削の切粉、焦げた成形部品、シール材の台紙、汚れて使えなくなった梱包材や空箱、保護シール、壊れたパレット、一回限りの緩衝剤、廃油、空になった各種容器や缶類、汚れた布きれ、破れた手袋、加工工程で不要になったものなど、数えきれないほど存在します。

 

これらは製品や部品と一緒に付帯して移動していけば、混入して悪影響を及ぼしますので、それぞれ発生した工程で区分や除去する必要があります。この区分したり除去したり、それを移動させるという行為も含めて、結局付加価値を生まないムダになっています。

 

ある工場で作業観察をしていた時に、シール材を貼り付けた後の台紙を一回ごとにゴミ箱まで移動して、さらにゴミ箱が低い位置にあったので、わざわざこごんでゴミを入れている一連の作業を発見しました。作業工数の項目には、シール材を貼るという項目だけですが、台紙を捨てるという行為も含まれています。シール材を貼るには3秒の工数ですが、台紙を捨てて元に戻るまでの5秒間も工数に組み込まれて合計8秒になっていることを指摘したわけです。この捨てるという作業を認めてしまっていたことで、彼らは見えなくなってしまったのです。そのため付加価値を生む作業と生まない作業(ムダ)にまず分けて、ムダはすぐに削減の対象にしたのです。

 

この台紙がなければお互いが接着してしまうので、それを作業の途中ではがすとなれば工数は非常にバラツキます。でも要らなくなった途端に台紙はゴミになってしまい、その場には必要でなくなり、作業の邪魔になるので少しでも早く撤去したいものです。

 

まさに区分すれば資源になり、混ぜてしまえばゴミに成り下がってしまいます。ゴミはそのまま放置しておけば、エントロピーの第二法則に則り次第に増えてきます。ゴミを捨てるにも回収するにも工数がかかり手間もかかりますので、取り扱いの考え方を変える必要があります。製品でも部品でもゴミでも、モノを移動させたり動かしたりすることは、必ず工数や費用が発生します。

 

2.ゴミを部品として考えてみると新しい発想が湧いてくる

発想の転換として、ゴミを部品として考えてみることを提案します。

 

今まではゴミとしてみなしていたので、その存在感を無視していましたが、ゴミも部品だと意識を変えるのです。先ほどの事例について、不要になった台紙の方に工数をかけて捨てていたことに疑問を投げかけることで、工場のメンバーも気づき始めました。組立や加工ばかりに焦点を合わせていたことを反省して、それらに付帯する作業も合わせて考えることで作業全体を見るようになりました。一連の作業の中をゴミも含めてトータルで工数を下げたり、作業性を向上させたり、ゴミ回収も部品や製品の搬送も併せて一つの流れに組み込んでいくことまで考えることになってきました。そうすると今まで気づかなかった周囲のことが一気に見えるようになります。

 

例えば、ゴミ箱が遠ければもっと近くに寄せて設置したり、手元に小さな箱を設置する。ゴミ箱の入り口が狭かったり小さかったりすれば、入れ口をラッパのように大きくする。また投入口が低ければ高くするために底上げしたり傾けたり、手元で離せば済むように長いガイド用の筒をつける。ゴミ箱に入れやすくするためにゴミ箱自体を加工したり、段ボールなどを組み合わせて改造を行う。

 

ゴミが予め出ないように事前に除去しておくなどと、視点が変わることで多くの気づきが見えるようになります。廃棄するゴミも部品と同じだけ考えることで、部品の供給とは反対に「捨てる」という作業の定位置定方向を決めるとか、バッチではなく1個ずつ排出するとか、カンバン部品のようになくなれば供給するのではなく回収して新しいゴミ箱と交換するなどとアイデアが湧いてきます。

 

ゴミ箱を部品供給箱に置き換えてみますと、さらに発想が変わってきます。ゴミ箱置き場のマーキングもアイデアが出てきます。ゴミ箱の置場にラインテープで周囲をマーキングして表示しますが、一般的なゴミ箱の直径が30cmであると、その周囲を覆うラインテープの長さは{30+5(余裕)}×4=140cmにもなります。テープ代も費用です。そこでテープに▼マークをつけて、ゴミ箱と床に貼り付けます。

 

▼と▲が向き合うことで、人間の心理として頂点と頂点を合わせたくなり、周囲を□のマーキングで覆うよりもきちんとゴミ箱を置くようになるのですから不思議です。この方法ですとテープの長さは10分の1で済みます。貼り付ける工数もテープ代も節約できます。まさに目からウロコです!このアイデアは多くの工場で採用してもらっています。

 

3.ゴミも資源として考えるとさらに発想は広がる

ゴミも部品と同様に移動するにも作業するにも工数がかかっているのならば、部品と一緒に扱うことを考えればよいと思います。

 

ゴミ箱も色々あれば色区分したり、表示標識をして簡単に区分ができるようにしたりすると分別回収も楽にできます。ゴミ箱の大きいものにはキャスターを付けて簡単に移動できるようにして、部品供給や空箱回収の流れに組み込んでしまうことで工数を大幅に削減可能になります。意識を変えるためにゴミ箱も部品箱のようにいつも綺麗にしておきたいものです。これはトイレの清掃と同じ考えです。最初は辛いですが習慣化すると慣れてできるようになります。

 

切削時の切粉は異種を混ぜてしまうと価値がなくなってすぐにゴミになってしまいます。ゴミを混ぜてしまえば廃棄するだけの単なるクズになってしまいますが、きちんと簡単に区分すると資源として再利用できて費用の捻出も可能になります。ちょっとの手間が資源か廃棄かの分岐点になりますので意識をさせる教育は大切になってきます。上司からの毎日の朝礼や終業時の一言や普段の指摘が効いてきます。

 

次回に続きます。

 

【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載 

 

 

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この記事の著者

松田 龍太郎

見えないコトを見えるようにする現場改善コンサルタント。ユーモアと笑顔をセットにして、元氣一杯に現地現物での指導を心がける。難しいことはわかりやすく、例え話や事例を用いながら解説し、納得してもらえるように楽しく動機付けを行います。

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