油圧の仕組みとは?

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油圧

 

設備・機械の自動化が進めば進むほど、一度トラブルが発生してシステムがダウンしたときには、その損害は大きく、また、正常な状態に復帰させるにも長い時間が必要になります。 そこで、トラブルを未然に防ぎ、たとえトラブルが生じてもすぐに復帰できるというメンテナンス体制や オペレータの一人ひとりがメンテナンス技術を備えておくことが、生産現場ではますます重要な課題になってきました。メンテナンス技術に直結したさまざまな装置、機械で利用されている油圧は、加圧した油を介して動力の伝達を行う技術で、小さな力を大きな力に変えることができます。今回は、設備・機械をメンテナンスする上でも重要な油圧の仕組みの基礎知識を解説します。

 

1.油圧とは

油圧は密閉された液体の一部に加わった圧力は全体に等しく伝わる、パスカルの原理を利用して力を変換するので、多くの機器に使用されています。油の特性を利用することで、粘性があるため漏れが少ない、沸騰しない、潤滑性があるなどの機能上のメリットがあります。

 

2.油圧の原理とパスカルの原理

空気や油は、力を加えると変形する性質がありますが、空気や油を容器に閉じ込め、一部に圧力を加えると同じ強さで容器の各面に垂直な力として作用します。これはパスカルの原理そのもので、空圧・油圧技術の基本原理です。具体的には、タイヤ空気圧は、どこを測定しても同じで、かかる圧力は物体に垂直です。静止流体では、圧力が同じに全てに伝わります。動いている流体は、ベルヌーイの定理で説明できます。

2.4kgf/cm2の圧力がタイヤにかかっている場合、タイヤ壁面に、1cm2あたり2.4kgfの力がかかることになります。

 

パスカルの原理を応用した道具に油圧ジャッキがあります。シリンダ面積の大きい方は、小さい方の面積の2倍とした場合、小さい方のシリンダ10kgの重りは、大きい方のシリンダの20kgと釣り合います。小さな力がシリンダ面積に比例して増大します。

 

ここで、小さいのピストンを20mm押したときに、大きな方のピストンは10mmしか上昇しません。小さい方のシリンダから供給された油の量だけ上昇するのですから、上がり方は面積と逆比例します。

 

3.油圧装置の短所と長所

油圧装置の短所・長所を次に整理して油圧の仕組みと共に考えましょう。

 

【短所】作動油は温度によって機械効率が変わる。配管が複雑である。作動油の油漏れが生じて、さびやゴミに弱い。

 

【長所】作動油や配管の分流が自由にできる。力の方向・大きさ・速度を容易に変えられる。小型の単純構造で装置化できる。遠隔操作や無段変速を行なうことができる。装置の破壊を防ぐ。

 

4.油圧駆動装置とは

油圧ポンプから送り出された油圧を機械的な動力に変える油圧駆動装置は、回転運動を行なう油圧モータと直線運動を行なう油圧シリンダがあります。

【油圧モータ】
油圧モータには歯車モータ、ベーンモータなどがあります。油圧モータの構造は油圧ポンプとほとんど同じで、相違点は作動の方法です。油圧モータは油圧によって駆動軸を回転させますが油圧ポンプは原動機の動力で駆動軸を回転させます。作動油の流体エネルギーをトルクに変えるのが油圧モータです。

 

【油圧シリンダ】
複動形、単動形の種類がある油圧シリンダは油圧によってシリンダを往復運動させる装置です。

 

5.エアハイドロシステムとは

圧縮エアをエアピストンと油圧ピストンの面積比により高圧油...

油圧

 

設備・機械の自動化が進めば進むほど、一度トラブルが発生してシステムがダウンしたときには、その損害は大きく、また、正常な状態に復帰させるにも長い時間が必要になります。 そこで、トラブルを未然に防ぎ、たとえトラブルが生じてもすぐに復帰できるというメンテナンス体制や オペレータの一人ひとりがメンテナンス技術を備えておくことが、生産現場ではますます重要な課題になってきました。メンテナンス技術に直結したさまざまな装置、機械で利用されている油圧は、加圧した油を介して動力の伝達を行う技術で、小さな力を大きな力に変えることができます。今回は、設備・機械をメンテナンスする上でも重要な油圧の仕組みの基礎知識を解説します。

 

1.油圧とは

油圧は密閉された液体の一部に加わった圧力は全体に等しく伝わる、パスカルの原理を利用して力を変換するので、多くの機器に使用されています。油の特性を利用することで、粘性があるため漏れが少ない、沸騰しない、潤滑性があるなどの機能上のメリットがあります。

 

2.油圧の原理とパスカルの原理

空気や油は、力を加えると変形する性質がありますが、空気や油を容器に閉じ込め、一部に圧力を加えると同じ強さで容器の各面に垂直な力として作用します。これはパスカルの原理そのもので、空圧・油圧技術の基本原理です。具体的には、タイヤ空気圧は、どこを測定しても同じで、かかる圧力は物体に垂直です。静止流体では、圧力が同じに全てに伝わります。動いている流体は、ベルヌーイの定理で説明できます。

2.4kgf/cm2の圧力がタイヤにかかっている場合、タイヤ壁面に、1cm2あたり2.4kgfの力がかかることになります。

 

パスカルの原理を応用した道具に油圧ジャッキがあります。シリンダ面積の大きい方は、小さい方の面積の2倍とした場合、小さい方のシリンダ10kgの重りは、大きい方のシリンダの20kgと釣り合います。小さな力がシリンダ面積に比例して増大します。

 

ここで、小さいのピストンを20mm押したときに、大きな方のピストンは10mmしか上昇しません。小さい方のシリンダから供給された油の量だけ上昇するのですから、上がり方は面積と逆比例します。

 

3.油圧装置の短所と長所

油圧装置の短所・長所を次に整理して油圧の仕組みと共に考えましょう。

 

【短所】作動油は温度によって機械効率が変わる。配管が複雑である。作動油の油漏れが生じて、さびやゴミに弱い。

 

【長所】作動油や配管の分流が自由にできる。力の方向・大きさ・速度を容易に変えられる。小型の単純構造で装置化できる。遠隔操作や無段変速を行なうことができる。装置の破壊を防ぐ。

 

4.油圧駆動装置とは

油圧ポンプから送り出された油圧を機械的な動力に変える油圧駆動装置は、回転運動を行なう油圧モータと直線運動を行なう油圧シリンダがあります。

【油圧モータ】
油圧モータには歯車モータ、ベーンモータなどがあります。油圧モータの構造は油圧ポンプとほとんど同じで、相違点は作動の方法です。油圧モータは油圧によって駆動軸を回転させますが油圧ポンプは原動機の動力で駆動軸を回転させます。作動油の流体エネルギーをトルクに変えるのが油圧モータです。

 

【油圧シリンダ】
複動形、単動形の種類がある油圧シリンダは油圧によってシリンダを往復運動させる装置です。

 

5.エアハイドロシステムとは

圧縮エアをエアピストンと油圧ピストンの面積比により高圧油に変換する連続吐出型の油圧ポンプが、エアハイドロシステムです。

 

エアポンプの作動は油圧力とエア圧力がバランス停止しエア消費量はゼロになり動力損失、油温上昇がない省エネ化システムです。圧縮エアにより油圧ピストンとエアピストンの面積比にから高圧油に変換する連続吐出型の油圧ポンプです。油圧・エアピストンのレシプロ運動から油圧の連続吐出を行ない、設定に近づくとレシプロ運動は低サイクルに制御され、設定到達時点でエアポンプ運動は油圧力・エア圧力がバランスしてエアポンプの作動が自動停止するため、動力損失、油温上昇が少ない省エネ化システムです。

 

 

 【関連解説:安全工学】

 

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この記事の著者

嶋村 良太

商品企画・デザインとエンジニアリングの両方の視点を統合し、顧客満足度の高い商品開発を実現していきます。

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