機能安全とは?機能安全の基本的な考え方

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機能安全とは

 

機能安全は工場事故対策など現場の安全性確保が始まりで、ハードウェアに的を絞って作られてきたものです。ハードウェアの故障は確率的に予測することができるため、機能安全はこの考え方・確率論がベースです。その一方、ソフトウェア的な機能安全問題も指摘されています。

 

機能安全は認証機関が中身を検査してお墨付きを与えるというスキームになっていて、TUV(ドイツ)、SGS(スイス)、DNV(ノルウェー)などが知られています。これはあくまでも専門機関としての認証なのですが、事故などで訴訟問題となった時に備えた保険的な意味があります。

 

近年の傾向としてサイバーセキュリティ対策もクローズアップされるようになってきています。セキュリティ対策は場合によっては安全機能に影響を与える可能性もあるため、その取り扱いに関しては今後も注視する必要があるでしょう。

 

今回は、このような背景を踏まえて、機能安全の概要を解説します。

 

1.  機能安全:Functional Safetyとは

監視装置や防護装置などの付加機能によるリスク低減策が機能安全です。安全確保の考え方の1つです。機能安全規格という言葉がありますが、安全な製品を開発するために必要と考えられる管理や手法を定めたものが機能安全規格です。安全関係事項を網羅的に検討して、安全な製品の開発を促すために考えられています。

 

この規格は1990年代末に欧州を中心に策定されました。この規格は国際規格であるIEC 61508をベースとしており、製品カテゴリごとに専用規格が策定されています。

 

機能安全規格は、環境、財産、人間などに危害を及ぼすリスクを、機能・装置の働きにより、許容可能な程度に低減するというアプローチです。機能安全は、国内産業ではあまりなじみのないコトバだったのですが、欧州市場での自動車、鉄道などの事業展開を図る際に重要視され、この考え方でのものづくりをすることが要請されるようになりました。

 

2. 機能安全の基本

機能安全は、企業の責任義務で経済合理性があると考えるべきでしょう。法律規制、規格への適合であると理解すべきではありません。事実、設計開発業務での手戻りの減少、市場導入時の初期故障率の低下など、機能安全を重要視している企業では、製品の信頼性向上の点で成果が出ています。

 

機能安全の推進、達成はその企業の安全と安心に対する文化の育成とイコールです。これには企業トップの安全と安心に対する強いリーダーシップが必要です。また機能安全達成には組織内のコミュニケーション、共通認識そして機能安全の推進・達成のために用いられる技法と方策が必要になります。これらが機能安全の基本です。

 

3. 機能安全と信頼性

安全性と信頼性はそれぞれ異なる点がありますが、安全性と信頼性双方の要求を満たさないと使用者にとって便利なシステムは成り立ちません。安全性と信頼性は対象事象が異なり、その意味も異なりますが、当然のことながら製品開発には安全性も信頼性もともに必要です。

 

国内メーカーの開発機器は、安全性も信頼性も有していますが、機能安全規格はこの安全性と信頼性への対応が正確に実施されているかを判断する基準を定めているのです。規格要求の観点は、すでにメーカーで実施されていることですから、後は実施内容を正確に示し、安全な製品を開発しているということを証明できればよいことになります。

 

4. 日本における機能安全

日本の産業界は、品質、信頼性、安全性の実力は世界でもトップレベルの実力があるといって差し支えないでしょう。国際的な問題発生の原因は文化の違い、思想の相違というところにあり、機能安全規格の認証取得を行っている企業はそのギャップに悩まされてきました。第一にリスクに対する考え方が根本的に違うということです。

 

 欧米は、リスクをゼロにはできないので、許容できる程度に低減させることが重要と考えます。日本は、リスクはゼロにはならないので、品質活動によりリスクを限りなくゼロに近づけることが重要と考えます。

 

日本の製造業はQC活動や、TQMなどに力を注いできましたので、安全性が何を意味しているかは理解していますが、機能安全を理解する機会が少なく、それよりも建前と本音・以心伝心・性善説などの日本固有の特質に依存していました。リスクを論理的に討議して数値化...

機能安全とは

 

機能安全は工場事故対策など現場の安全性確保が始まりで、ハードウェアに的を絞って作られてきたものです。ハードウェアの故障は確率的に予測することができるため、機能安全はこの考え方・確率論がベースです。その一方、ソフトウェア的な機能安全問題も指摘されています。

 

機能安全は認証機関が中身を検査してお墨付きを与えるというスキームになっていて、TUV(ドイツ)、SGS(スイス)、DNV(ノルウェー)などが知られています。これはあくまでも専門機関としての認証なのですが、事故などで訴訟問題となった時に備えた保険的な意味があります。

 

近年の傾向としてサイバーセキュリティ対策もクローズアップされるようになってきています。セキュリティ対策は場合によっては安全機能に影響を与える可能性もあるため、その取り扱いに関しては今後も注視する必要があるでしょう。

 

今回は、このような背景を踏まえて、機能安全の概要を解説します。

 

1.  機能安全:Functional Safetyとは

監視装置や防護装置などの付加機能によるリスク低減策が機能安全です。安全確保の考え方の1つです。機能安全規格という言葉がありますが、安全な製品を開発するために必要と考えられる管理や手法を定めたものが機能安全規格です。安全関係事項を網羅的に検討して、安全な製品の開発を促すために考えられています。

 

この規格は1990年代末に欧州を中心に策定されました。この規格は国際規格であるIEC 61508をベースとしており、製品カテゴリごとに専用規格が策定されています。

 

機能安全規格は、環境、財産、人間などに危害を及ぼすリスクを、機能・装置の働きにより、許容可能な程度に低減するというアプローチです。機能安全は、国内産業ではあまりなじみのないコトバだったのですが、欧州市場での自動車、鉄道などの事業展開を図る際に重要視され、この考え方でのものづくりをすることが要請されるようになりました。

 

2. 機能安全の基本

機能安全は、企業の責任義務で経済合理性があると考えるべきでしょう。法律規制、規格への適合であると理解すべきではありません。事実、設計開発業務での手戻りの減少、市場導入時の初期故障率の低下など、機能安全を重要視している企業では、製品の信頼性向上の点で成果が出ています。

 

機能安全の推進、達成はその企業の安全と安心に対する文化の育成とイコールです。これには企業トップの安全と安心に対する強いリーダーシップが必要です。また機能安全達成には組織内のコミュニケーション、共通認識そして機能安全の推進・達成のために用いられる技法と方策が必要になります。これらが機能安全の基本です。

 

3. 機能安全と信頼性

安全性と信頼性はそれぞれ異なる点がありますが、安全性と信頼性双方の要求を満たさないと使用者にとって便利なシステムは成り立ちません。安全性と信頼性は対象事象が異なり、その意味も異なりますが、当然のことながら製品開発には安全性も信頼性もともに必要です。

 

国内メーカーの開発機器は、安全性も信頼性も有していますが、機能安全規格はこの安全性と信頼性への対応が正確に実施されているかを判断する基準を定めているのです。規格要求の観点は、すでにメーカーで実施されていることですから、後は実施内容を正確に示し、安全な製品を開発しているということを証明できればよいことになります。

 

4. 日本における機能安全

日本の産業界は、品質、信頼性、安全性の実力は世界でもトップレベルの実力があるといって差し支えないでしょう。国際的な問題発生の原因は文化の違い、思想の相違というところにあり、機能安全規格の認証取得を行っている企業はそのギャップに悩まされてきました。第一にリスクに対する考え方が根本的に違うということです。

 

 欧米は、リスクをゼロにはできないので、許容できる程度に低減させることが重要と考えます。日本は、リスクはゼロにはならないので、品質活動によりリスクを限りなくゼロに近づけることが重要と考えます。

 

日本の製造業はQC活動や、TQMなどに力を注いできましたので、安全性が何を意味しているかは理解していますが、機能安全を理解する機会が少なく、それよりも建前と本音・以心伝心・性善説などの日本固有の特質に依存していました。リスクを論理的に討議して数値化するというやり方は過去の日本の製造業にはなじまなかったのです。

 

5. 機能安全規格の体系

ここまで述べてきた機能安全の国際規格ですが、1990年代末に欧州を中心に策定されたIEC61508がそのベースとなる規格です。これを受けて、各産業・製品領域ごとにより具体的な内容の規格を制定しています。自動車業界ではISO26262への対応が急速に進められており、メーカおよび1次サプライヤーは新たなビジネスチャンスを念頭にISO26262の認証取得を行っています。この背景には、世界的に取り組みが行われている自動運転の実用化が背景にあることはいうまでもありません。ISO2626以外では、医療、鉄道、原子力やプロセス制御用の電気・電子制御システム、機械の機能安全の規格がそれぞれ制定されています。

 

 【関連解説:安全工学】

 

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この記事の著者

嶋村 良太

商品企画・デザインとエンジニアリングの両方の視点を統合し、顧客満足度の高い商品開発を実現していきます。

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