プラスチック加工の基礎

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プラスチック

 

欧米では、合成ゴム、合成繊維、接着剤なども広く樹脂・プラスチックの仲間として取り扱われるのが一般的です。一方日本では、樹脂・プラスチックは熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂のことを言い、弾性材料である合成ゴム、接着剤などは樹脂・プラスチックとして扱わないことになっています。ゴムのような弾性材料をエラストマーといいますが、ゴムのような弾性をもつ樹脂・プラスチックもつくられるようになってきて、分類が複雑です。

プラスチックは金属、セラミクスと肩を並べる3大材料の一つと言われています。プラスチックは他の材料と比べて、軽量でかつ比較的低い温度で成形できるために様々な成形加工法が開発され、日用品から加工機械・機械器具・輸送機器に至るまで広域な関連分野で使用されています。

プラスチックは低コストで様々な特性を付与することができるため、設計者にとって非常に魅力的な材料です。そのため、身の回りの多くの製品でプラスチックが使われています。一方、不適切な設計が原因で、製造業ではプラスチック製品のトラブルが数多く発生しています。特に強度に関わるトラブルは、重大事故につながる可能性もあり、事前にしっかりとした強度設計を行うことが不可欠です。

プラスチック製品の強度設計は思ったほど簡単ではありません。材料力学の知識に加えて、材料特性や成形・加工の影響に関する知識、製品設計上の実務的ノウハウなど、幅広い知識・ノウハウが要求されるからです。このような背景を踏まえて、今回は、プラスチック加工(樹脂加工)の基礎を解説します。

◆関連解説『高分子・樹脂・有機化学とは』

 

1.  プラスチックとは

プラスチックにはさまざまな種類があり、また、それぞれの種類によって樹脂特性、成形品の用途が異なるので、製品の設計法・製造工程・金型などにもそれに応じた特徴があります。適切な対策を施していないプラスチックは紫外線で容易に劣化し、物性低下や外観変化を生じます。屋外のプラスチック製品が変色、脆化している様子を見たことがあるでしょう。

 

2.  プラスチックの種類と特徴

5大汎用プラスチックと呼ばれるPVC(ポリ塩化ビニル)・PE(ポリエチレン)・PS(ポリスチレン)・PP(ポリプロピレン)・ABSや、「5大エンプラ」と呼ばれるPA(ポリアミド)・PC(ポリカーボネート)・ポリエステル(PBT,PET)・POM(ポリアセタール)・変性PPE(変性ポリフェニレンエーテル)など、一般に広く使われている合成樹脂ですが、上手に使いこなすためには、合成樹脂材料の性質と基礎知識をよく理解することが重要です。合成樹脂材料は、環境条件に対する安定性も低いため、製品の使われ方の見極めが非常に重要です。合成樹脂材料が原因の製品不具合は非常に多く発生していますが、その多くが使われ方の抽出不足と、合成樹脂材料の環境条件に対する不安定性に起因します。合成樹脂材料を使った製品において、製品の使われ方を見極めることの重要性を理解して下さい。

応力とひずみの関係は、最も基本的かつ重要な性質の一つです。材料力学は基本的に材料が弾性変形することを前提にしていますが、合成樹脂材料の弾性変形範囲は非常に狭いので、設計を行う上では注意を要します。弾性変形以外の部分も含めて、材料の性質を分かりやすく示すために用いられるのが応力-ひずみ曲線です。

プラスチックはさらに、熱可塑樹脂と熱硬化樹脂の2つの種類に分けられますが、流通しているプラスチックの90%を占めているのが熱可塑性樹脂です。これは、強度・耐熱性によってさらに3つに分類さます。すなわち、汎用プラスチック・汎用エンジニアリングプラスチック・スーパーエンジニアプラスチックの3分類です。

スーパーエンジニアリング樹脂:汎用エンジニア樹脂よりも、特に強度、耐熱性、耐薬品性などに優れているもので、150℃以上の高温でも長時間使用できます。これらはスーパー・エンプラまたは特殊エンプラとも呼ばれ、主に金属の代替部品として使用されます。

 

3.  プラスチックの使用例

プラスチックは、家具、台所用品、電化製品などの日用品から乗り物まで、プラスチックは私たちの生活に広く普及しており、様々な役割を果たしています。もはやプラスチックのない生活を想像することは不可能でしょう。プラスチック漬けの生活と言っても過言ではないと思います。

これらのプラスチックは、素の状態で製品として利用されることは滅多にありません。樹脂をやわらかくするための可塑剤、火災を予防するための難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、安定剤など、なんらかの化学物質が添加されています。これらを添加剤といいますが、中には長期的に触れることで、健康の質が下がる物質もあるようです。

前述したようにプラスチックにはたくさんの種類がありますが、飲み物などのリサイクルできるペットボトルにはPETマークが、それ以外のプラスチックでてきた容器や包装にはプラの識別マークが付けられています。

身の回りのプラスチック製品は熱可塑性樹脂と考えてよいでしょう。食品用フィルムやペットボトルは、この性質を利用してリサイクルされています。一方、熱を加えると硬くなるのは熱硬化性樹脂ですが、温度変化による影響を受けにくいのが特徴で、電機部品や飛行機の構造材料、化粧板、浴槽など、機械的強度や耐熱性が必要なプラスチック製品への使用例が多くみられます。

 

4.  プラスチック加工とは

プラスチックは、石油から加工され高分子のうち、任意の形に成形できるもののことです。天然樹脂と...

プラスチック

 

欧米では、合成ゴム、合成繊維、接着剤なども広く樹脂・プラスチックの仲間として取り扱われるのが一般的です。一方日本では、樹脂・プラスチックは熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂のことを言い、弾性材料である合成ゴム、接着剤などは樹脂・プラスチックとして扱わないことになっています。ゴムのような弾性材料をエラストマーといいますが、ゴムのような弾性をもつ樹脂・プラスチックもつくられるようになってきて、分類が複雑です。

プラスチックは金属、セラミクスと肩を並べる3大材料の一つと言われています。プラスチックは他の材料と比べて、軽量でかつ比較的低い温度で成形できるために様々な成形加工法が開発され、日用品から加工機械・機械器具・輸送機器に至るまで広域な関連分野で使用されています。

プラスチックは低コストで様々な特性を付与することができるため、設計者にとって非常に魅力的な材料です。そのため、身の回りの多くの製品でプラスチックが使われています。一方、不適切な設計が原因で、製造業ではプラスチック製品のトラブルが数多く発生しています。特に強度に関わるトラブルは、重大事故につながる可能性もあり、事前にしっかりとした強度設計を行うことが不可欠です。

プラスチック製品の強度設計は思ったほど簡単ではありません。材料力学の知識に加えて、材料特性や成形・加工の影響に関する知識、製品設計上の実務的ノウハウなど、幅広い知識・ノウハウが要求されるからです。このような背景を踏まえて、今回は、プラスチック加工(樹脂加工)の基礎を解説します。

◆関連解説『高分子・樹脂・有機化学とは』

 

1.  プラスチックとは

プラスチックにはさまざまな種類があり、また、それぞれの種類によって樹脂特性、成形品の用途が異なるので、製品の設計法・製造工程・金型などにもそれに応じた特徴があります。適切な対策を施していないプラスチックは紫外線で容易に劣化し、物性低下や外観変化を生じます。屋外のプラスチック製品が変色、脆化している様子を見たことがあるでしょう。

 

2.  プラスチックの種類と特徴

5大汎用プラスチックと呼ばれるPVC(ポリ塩化ビニル)・PE(ポリエチレン)・PS(ポリスチレン)・PP(ポリプロピレン)・ABSや、「5大エンプラ」と呼ばれるPA(ポリアミド)・PC(ポリカーボネート)・ポリエステル(PBT,PET)・POM(ポリアセタール)・変性PPE(変性ポリフェニレンエーテル)など、一般に広く使われている合成樹脂ですが、上手に使いこなすためには、合成樹脂材料の性質と基礎知識をよく理解することが重要です。合成樹脂材料は、環境条件に対する安定性も低いため、製品の使われ方の見極めが非常に重要です。合成樹脂材料が原因の製品不具合は非常に多く発生していますが、その多くが使われ方の抽出不足と、合成樹脂材料の環境条件に対する不安定性に起因します。合成樹脂材料を使った製品において、製品の使われ方を見極めることの重要性を理解して下さい。

応力とひずみの関係は、最も基本的かつ重要な性質の一つです。材料力学は基本的に材料が弾性変形することを前提にしていますが、合成樹脂材料の弾性変形範囲は非常に狭いので、設計を行う上では注意を要します。弾性変形以外の部分も含めて、材料の性質を分かりやすく示すために用いられるのが応力-ひずみ曲線です。

プラスチックはさらに、熱可塑樹脂と熱硬化樹脂の2つの種類に分けられますが、流通しているプラスチックの90%を占めているのが熱可塑性樹脂です。これは、強度・耐熱性によってさらに3つに分類さます。すなわち、汎用プラスチック・汎用エンジニアリングプラスチック・スーパーエンジニアプラスチックの3分類です。

スーパーエンジニアリング樹脂:汎用エンジニア樹脂よりも、特に強度、耐熱性、耐薬品性などに優れているもので、150℃以上の高温でも長時間使用できます。これらはスーパー・エンプラまたは特殊エンプラとも呼ばれ、主に金属の代替部品として使用されます。

 

3.  プラスチックの使用例

プラスチックは、家具、台所用品、電化製品などの日用品から乗り物まで、プラスチックは私たちの生活に広く普及しており、様々な役割を果たしています。もはやプラスチックのない生活を想像することは不可能でしょう。プラスチック漬けの生活と言っても過言ではないと思います。

これらのプラスチックは、素の状態で製品として利用されることは滅多にありません。樹脂をやわらかくするための可塑剤、火災を予防するための難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、安定剤など、なんらかの化学物質が添加されています。これらを添加剤といいますが、中には長期的に触れることで、健康の質が下がる物質もあるようです。

前述したようにプラスチックにはたくさんの種類がありますが、飲み物などのリサイクルできるペットボトルにはPETマークが、それ以外のプラスチックでてきた容器や包装にはプラの識別マークが付けられています。

身の回りのプラスチック製品は熱可塑性樹脂と考えてよいでしょう。食品用フィルムやペットボトルは、この性質を利用してリサイクルされています。一方、熱を加えると硬くなるのは熱硬化性樹脂ですが、温度変化による影響を受けにくいのが特徴で、電機部品や飛行機の構造材料、化粧板、浴槽など、機械的強度や耐熱性が必要なプラスチック製品への使用例が多くみられます。

 

4.  プラスチック加工とは

プラスチックは、石油から加工され高分子のうち、任意の形に成形できるもののことです。天然樹脂と同じような性質を持つ物質を石油から加工するようになりました。これがプラスチック(合成樹脂)です。主に次のような3種類の加工方法があります。

 

3Dプリンタ:パソコンでつくった立体データを使用する加工方法。樹脂溶液をレーザーなどで硬化させたり、溶かした樹脂を吐出しながら積層したりすることで、樹脂を成形加工します。中空などの構造をつくることも可能です。

切削加工:固めた樹脂を機械で削る加工方法。特殊な加工が必要な場合や試作が必要な場合に用いられます。刃物を回転させながら樹脂を削り取るフライス加工や、回転している樹脂に刃物を当てて削る旋盤加工があります。

成形加工:溶かした樹脂を金型に注入し、冷却や圧縮により固める加工方法。同じ金型を使い、大量生産出来ます。射出成形(インジェクション成形)が代表的で幅広く使われていますが、他にも押し出し成形、ブロー成形、圧縮成形などの方法があります。またプラスチックとガラス繊維や炭素繊維などの強化基材を組み合わせたFRP、CFRPなどの複合材料では、型に強化基材をセットしたうえでプラスチックを浸み込ませて成形するハンドレイアップ成形も用いられます。

 

 

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この記事の著者

嶋村 良太

商品企画・デザインとエンジニアリングの両方の視点を統合し、顧客満足度の高い商品開発を実現していきます。

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