不良をさらけ出す勇気を持とう 品質を考える(その9)

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品質マネジメント

 

◆ 不良をさらけ出す勇気を持とう

1.品質を考える:発生した不良を見えるようにして、恥さらしにする

 不良は出したくないが、生産の途中に何らかの要因で不良が発生してしまうものです。それをどう扱うかで、その後の結果は大きな違いが出てくるものです。不良の多い職場だと、不良が発生しても手直しをしてしまえばよいと考えてしまい、また同じことを繰り返してしまいます。でも手直しをしている時間に、設備を稼働するための動力費や光熱費、人件費など多くのムダが発生するばかりです。

 不良をそのまま不良箱に入れて、次のワークを取り出して加工していては、結局は原価を押し上げるばかりでまったく儲かりません。でも意識の薄い社員は、その職場にいれば給料はもらえると考えているので、不良の痛みを感じることはありません。彼らの意識を変えることも必要です。

 これらのことは不良が見えないから、これらのムダを発生させてしまうのです。これらを是正するためにも、まず不良を見えるようにしなければなりません。発生したら不良をすぐに関係者が確認できるようにします。不良を発見した人が、その不良の発生した部位はどこか、どうして(なぜ)不良になったのかなど、発生状況を第三者に分かるように簡素に記述します。これを逆にあまり詳しく書こうとすると、面倒になってオペレータは書こうとしなくなりますので、オペレータの合意のもとにどれくらい書けばよいかを事前に整合を取っておくことも大切です。できるだけシンプルにします。

 

 もっと大切なことは、不良が発生した時にそのオペレータを責めないことです。なんでミスをしたのか!ボケ!なんて怒鳴り声で言うと、次回からオペレータは絶対に不良を公にしなくなり、不良を良品のように扱ったり、どこかに隠したりするようになっていくのです。不良が出てもオペレータを責めるのではなく、逆に不良を発見したり、すぐに報告してくれたことに感謝するくらいの気持ちを持って接することです。

 そうすることで、次に不良が発生しても正直に報告してくれたり、不良が出そうになった時にはすぐに作業を止めて事前に教えてくれるようになります。素直にミスやトラブルを報告できるような雰囲気作りも上司の大切な業務になると考えます。

 

 不良が発生したことはもう仕方のないことであり、次に発生させないようにすることが重要になります。不良が出たことは、「不安定要素が明確になったぞ!これはラッキー!」と思うようにしたいものです。そのためにも不良品を多くの人で共有して、再発防止策を皆で考え、皆で実施できるように仕向けます。失敗を成功糧にしてしまうのです。そして、同じミスや失敗を繰り返さないようにして不良をなくしていけば良いのです。

 その不良を共有化するためにも、誰でも見える工夫が必要になります。その事例として、さらし首とか品質パレート机など色々な呼び方はありますが、不良が多くの人に見えるようにやりやすい方法を工夫すればよいのです。オペレータには少々恥さらしのようになりますが、その人を責めるわけではなく、さらけ出すのは不良そのものです。

 

2.品質を考える:不良を見えるようにして関心をもっと持ってもらう

 あえて多くの人に不良をさらけ出してみることで、自分の工程での不良にも気づくきっかけになっていきます。この気づきが大切なのです。そのためにも皆さんが関心を持ってみる仕掛けが必要になります。このように手間を掛けてわざわざ不良を見せるのは、大きな意味があることを伝えることです。それは現物を見て気づきを促し、再発防止や未然防止を実施して、不良や手直しをなくしていくことに結び付けるのです。

 その仕掛けとして、毎日決まった時間に、決まった関係者で、短時間で行い、すぐに関係者にフィードバックします。その取り組みよる不良の件数や廃棄金額などを、目に見える成果を合わせて見えるようにすることです。やったことが結果に結び付くと、俄然とやる気が出てくるものです。このような簡単な仕掛けをセットにして行うことです。この不良を置く場所をワザと社員が集まる食堂の近くにしたり、コンピューターの立ち上げ画面に情報が必ず出るようにしたり、関心を持たせる工夫はいくらでもあります。

 

 発生した不良や前工程から流出した不良、さらには仕入れ先からの部品などを、決った場所に、どの工程で発生したかなどの情報を、記入した荷札などを現物に取り付けて展示します。毎日処置と対策を取ることにより、少しずつ不良も減少していきます。不良をなくす事例ができると、その紹介したオペレータも大いに関心を持つようになります。不良をさらけ出した分のご褒美として、これだけよくなったという良い評価も見えるようにすることで、両者のバランスを取りたいものです。

 また不良の原因は、半分以上が設計に起因しているものなので、設計者にも見えるようにします。不良の展示個所を巡回するメンバーに設計者も組み込むことは、設計者自身が多くの気づきを得る良い機会です。最近は3Dによる設計が多くなり、現物を触っての設計になっていないことがあり、画面と現物の違いがあることを知ることになります。一気に不良をゼロにするには時間も努力も必要です。やはり不良の撲滅には奇策はなく、毎日コツコツという地道な活動の積み重ねと、見せる勇気が必要です。

 

3.品質を考える:前工程にフィードバックして確実に不良を減らす

 品質は損失そのものであり、品質が良いということは安く生産できることになります。その工程で発見さ...

品質マネジメント

 

◆ 不良をさらけ出す勇気を持とう

1.品質を考える:発生した不良を見えるようにして、恥さらしにする

 不良は出したくないが、生産の途中に何らかの要因で不良が発生してしまうものです。それをどう扱うかで、その後の結果は大きな違いが出てくるものです。不良の多い職場だと、不良が発生しても手直しをしてしまえばよいと考えてしまい、また同じことを繰り返してしまいます。でも手直しをしている時間に、設備を稼働するための動力費や光熱費、人件費など多くのムダが発生するばかりです。

 不良をそのまま不良箱に入れて、次のワークを取り出して加工していては、結局は原価を押し上げるばかりでまったく儲かりません。でも意識の薄い社員は、その職場にいれば給料はもらえると考えているので、不良の痛みを感じることはありません。彼らの意識を変えることも必要です。

 これらのことは不良が見えないから、これらのムダを発生させてしまうのです。これらを是正するためにも、まず不良を見えるようにしなければなりません。発生したら不良をすぐに関係者が確認できるようにします。不良を発見した人が、その不良の発生した部位はどこか、どうして(なぜ)不良になったのかなど、発生状況を第三者に分かるように簡素に記述します。これを逆にあまり詳しく書こうとすると、面倒になってオペレータは書こうとしなくなりますので、オペレータの合意のもとにどれくらい書けばよいかを事前に整合を取っておくことも大切です。できるだけシンプルにします。

 

 もっと大切なことは、不良が発生した時にそのオペレータを責めないことです。なんでミスをしたのか!ボケ!なんて怒鳴り声で言うと、次回からオペレータは絶対に不良を公にしなくなり、不良を良品のように扱ったり、どこかに隠したりするようになっていくのです。不良が出てもオペレータを責めるのではなく、逆に不良を発見したり、すぐに報告してくれたことに感謝するくらいの気持ちを持って接することです。

 そうすることで、次に不良が発生しても正直に報告してくれたり、不良が出そうになった時にはすぐに作業を止めて事前に教えてくれるようになります。素直にミスやトラブルを報告できるような雰囲気作りも上司の大切な業務になると考えます。

 

 不良が発生したことはもう仕方のないことであり、次に発生させないようにすることが重要になります。不良が出たことは、「不安定要素が明確になったぞ!これはラッキー!」と思うようにしたいものです。そのためにも不良品を多くの人で共有して、再発防止策を皆で考え、皆で実施できるように仕向けます。失敗を成功糧にしてしまうのです。そして、同じミスや失敗を繰り返さないようにして不良をなくしていけば良いのです。

 その不良を共有化するためにも、誰でも見える工夫が必要になります。その事例として、さらし首とか品質パレート机など色々な呼び方はありますが、不良が多くの人に見えるようにやりやすい方法を工夫すればよいのです。オペレータには少々恥さらしのようになりますが、その人を責めるわけではなく、さらけ出すのは不良そのものです。

 

2.品質を考える:不良を見えるようにして関心をもっと持ってもらう

 あえて多くの人に不良をさらけ出してみることで、自分の工程での不良にも気づくきっかけになっていきます。この気づきが大切なのです。そのためにも皆さんが関心を持ってみる仕掛けが必要になります。このように手間を掛けてわざわざ不良を見せるのは、大きな意味があることを伝えることです。それは現物を見て気づきを促し、再発防止や未然防止を実施して、不良や手直しをなくしていくことに結び付けるのです。

 その仕掛けとして、毎日決まった時間に、決まった関係者で、短時間で行い、すぐに関係者にフィードバックします。その取り組みよる不良の件数や廃棄金額などを、目に見える成果を合わせて見えるようにすることです。やったことが結果に結び付くと、俄然とやる気が出てくるものです。このような簡単な仕掛けをセットにして行うことです。この不良を置く場所をワザと社員が集まる食堂の近くにしたり、コンピューターの立ち上げ画面に情報が必ず出るようにしたり、関心を持たせる工夫はいくらでもあります。

 

 発生した不良や前工程から流出した不良、さらには仕入れ先からの部品などを、決った場所に、どの工程で発生したかなどの情報を、記入した荷札などを現物に取り付けて展示します。毎日処置と対策を取ることにより、少しずつ不良も減少していきます。不良をなくす事例ができると、その紹介したオペレータも大いに関心を持つようになります。不良をさらけ出した分のご褒美として、これだけよくなったという良い評価も見えるようにすることで、両者のバランスを取りたいものです。

 また不良の原因は、半分以上が設計に起因しているものなので、設計者にも見えるようにします。不良の展示個所を巡回するメンバーに設計者も組み込むことは、設計者自身が多くの気づきを得る良い機会です。最近は3Dによる設計が多くなり、現物を触っての設計になっていないことがあり、画面と現物の違いがあることを知ることになります。一気に不良をゼロにするには時間も努力も必要です。やはり不良の撲滅には奇策はなく、毎日コツコツという地道な活動の積み重ねと、見せる勇気が必要です。

 

3.品質を考える:前工程にフィードバックして確実に不良を減らす

 品質は損失そのものであり、品質が良いということは安く生産できることになります。その工程で発見される不良の原因は、実は半分だけなのです。そのため、いくら頑張って不良削減に取り組んでも半分しか不良は減りません。あとの半分は前工程の悪さによるものです。前工程からのワークの不良、そして設計の不良によるものです。ですから自分の工程をしっかりと管理することも当然ですが、前工程からの協力がなければ不良ゼロを達成できません。前工程に押し付けるのではなく、巻き込む感じです。

 この不良が発生したことの情報を的確に自工程はもちろん、前工程にも正確に素早くフィードバック出来る仕組みも作る必要があります。そのためにも前工程の人も現物を一緒に確認したり、作業のやりにくさ、作業安全などの情報も積極的に受け入れる姿勢に変えていきます。受け入れると仕事が辛くなるから聞きたくないのではなく、貴重な情報を聞かせてもらえるのだと考え方を変えてみることです。どう受け取るかで次の行動の素早さが違ってきます。まず相手が良くならないと自分も良くならないのですから、まず手を差し出してみようという姿勢で不良を正面から向き合うことです。

 

 今回で、品質を考えるの連載を終了します。

 

【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載 

 

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この記事の著者

松田 龍太郎

見えないコトを見えるようにする現場改善コンサルタント。ユーモアと笑顔をセットにして、元氣一杯に現地現物での指導を心がける。難しいことはわかりやすく、例え話や事例を用いながら解説し、納得してもらえるように楽しく動機付けを行います。

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