直交表の線点図とその使い方

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 直交表は多くの因子を効率的に評価できる優れた実験計画ツールです。特に主効果のみを割り付けて実験するとその効率は極めて高くなりますが、どうしても因子間の交互作用を評価したい場合があるものです。

 因子間の交互作用が直交表のどの列に現れるかを知る方法の一つは、ここで示したような二列間の交互作用表ですが、一つの実験で複数の交互作用を評価する場合の割り付けを考えるには使いにくく、もっと直感的に判断するために作られたのが線点図と呼ばれるものです。

 例えば直交表L8には下図1の2つの線点図が示されます。図中の点(○)は主効果、点と点をつなぐ線は交互作用効果を現し、それらに添えられた数値は直交表の列を示します。例えば(1)図を「1列と2列に配置された2つの因子間の交互作用は3列に現れる」と読み、同様に「2列と4列に配置された2つの因子間の交互作用は6列に現れ」、「1列と4列に配置された2つの因子間の交互作用は5列に現れ」ます。つまり1,2,4列に因子を割り付ければ、それらすべての一次交互作用を評価できるのに加えて、7列で別の因子をもうひとつ評価できます。一方重要な因子が一つあり、この因子と他の3つの因子との交互作用を知りたい場合は(2)の線点図を使うと良いことが分かります。

図1 L8(27)直交表の線点図


 他の直交表にも線点図が用意されており、私の知る限り最も充実して掲載されているのは、田口玄一「第3版実験計画法下」(丸善,1977)の巻末付表12です。

 ここに掲載される興味深い線点図をもう一つだけ紹介します。下図2は4水準因子を21個評価できるL64(421)という直交表の線点図です。(1)の線点図はL8で示した(2)と同様に、重要な因子ひとつと他の5つの因子間の交互作用を求めるときに利用し、(2)の線点図はL8(1)と同様3つの因子相互の交互作用を評価することが可能で、それに加えて9つの4水準因子も評価が可能です。

図2 L64(421)直交表の線点図

 4水準2因子間の交互作用に3列が必要な理由を、自由度の点から考えてみます。4水準を評価できる列の自由度は3ですから、4水準因子同士の交互作用の自由度は3×3=9です。自由度9の交互作用を評価するには自由度3の列が9÷...

 直交表は多くの因子を効率的に評価できる優れた実験計画ツールです。特に主効果のみを割り付けて実験するとその効率は極めて高くなりますが、どうしても因子間の交互作用を評価したい場合があるものです。

 因子間の交互作用が直交表のどの列に現れるかを知る方法の一つは、ここで示したような二列間の交互作用表ですが、一つの実験で複数の交互作用を評価する場合の割り付けを考えるには使いにくく、もっと直感的に判断するために作られたのが線点図と呼ばれるものです。

 例えば直交表L8には下図1の2つの線点図が示されます。図中の点(○)は主効果、点と点をつなぐ線は交互作用効果を現し、それらに添えられた数値は直交表の列を示します。例えば(1)図を「1列と2列に配置された2つの因子間の交互作用は3列に現れる」と読み、同様に「2列と4列に配置された2つの因子間の交互作用は6列に現れ」、「1列と4列に配置された2つの因子間の交互作用は5列に現れ」ます。つまり1,2,4列に因子を割り付ければ、それらすべての一次交互作用を評価できるのに加えて、7列で別の因子をもうひとつ評価できます。一方重要な因子が一つあり、この因子と他の3つの因子との交互作用を知りたい場合は(2)の線点図を使うと良いことが分かります。

図1 L8(27)直交表の線点図


 他の直交表にも線点図が用意されており、私の知る限り最も充実して掲載されているのは、田口玄一「第3版実験計画法下」(丸善,1977)の巻末付表12です。

 ここに掲載される興味深い線点図をもう一つだけ紹介します。下図2は4水準因子を21個評価できるL64(421)という直交表の線点図です。(1)の線点図はL8で示した(2)と同様に、重要な因子ひとつと他の5つの因子間の交互作用を求めるときに利用し、(2)の線点図はL8(1)と同様3つの因子相互の交互作用を評価することが可能で、それに加えて9つの4水準因子も評価が可能です。

図2 L64(421)直交表の線点図

 4水準2因子間の交互作用に3列が必要な理由を、自由度の点から考えてみます。4水準を評価できる列の自由度は3ですから、4水準因子同士の交互作用の自由度は3×3=9です。自由度9の交互作用を評価するには自由度3の列が9÷3=3だけ必要になるというわけです。

 この線点図を使って、目的にそった交互作用を評価するわけですが、考えてみるとL64(421)の場合、一つの交互作用を評価するのに本来なら別の因子を評価できる3つの列をいわば「犠牲」にするわけです。もしいくつかの交互作用が重要でないと仮定するだけで、L32(4921)やL16(45)が使えて、実験が大幅に楽になります。本当にその交互作用を知る必要があるのか、代替の実験方法はないのか、しっかり考えてから実行することが重要です。

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この記事の著者

熊坂 治

ものづくり革新のナレッジを広く共有、活用する場を提供することで、製造業の課題を解決し、生産性を向上します。

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