クリーン化の効果を考える(第1回) クリーン化について(その11)

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クリーン化

 

♦ クリーン化で品質と歩留まり向上、利益もアップ!

 クリーン化活動を進める上で、その成果や効果は欲しいものです。それが具体的に数字などで見えると、活動も継続していきます。今回は、クリーン化の効果について解説します。

 

 ある半導体製造の前工程(クリーンルーム工程)事例からクリーン化の成果、効果について考えてみます。

 例えばその工場で仮に、月25億円の売り上げがあったとします(これはイメージしやすい数字にしました。現在ではこんな数字ではないでしょう)。この時歩留まりが1%上がると月に2,500万円の純利益が得られます。しかもあまりお金をかけないでできることが沢山あります。

 会社が社員を集めて、或(ある)いは上司が部下に対し「品質向上に努めましょう。すると利益が増えます」と言うだけでは、社員は“聞いただけ、人ごと、よそ事”で終わってしまうかも知れません。

 そこで、これらで得られた効果(利益)をどのように使うか考えてみると良いと思います。つまり、自社や自分の問題として捉えてみることです。

 

 具体的な項目ごとに解説します。

1. 注文が多い場合、稼ぎ続ければ余分に儲(もう)かることになります

2. 注文数に変化がない場合、その利益相当分の原料投入が減らせる

 原料投入を減らしても生産量は確保できるわけです。それに付随して薬品、エネルギー(設備の稼働などの電気、ガスなど)、人工数も削減できます。この項以降は多少ですが理論、理屈の部分もあります。

3. 注文数に変化がなければ、その歩留まり向上分を次の製品開発や試作に充てることができます

 これは、量産品と試作品を同じラインで製造する場合です。規模の大きな会社では、量産と試作のラインは別々に保有している場合もありますが、規模が小さいところでは、試作のために別ラインを持つ余裕はないと思います。

 このようなラインで、実際にあった事例を紹介します。

 開発担当が試作品の投入を依頼しようとしたところ、現場責任者から「この忙しい時に試作品なんか流動できるか」と言って断わられてしまいました。現場が強かった例です。ところが、流動していた製品のピークが過ぎ、段々ラインに余裕が出て来ました。

 そこで、現場責任者が「次に作る製品はないのか」と聞いたのですが、開発担当は「あの時断られてしまって次に投入する製品は準備できていません」との回答…。

 製品開発と量産流動は生産管理が統括するので、このようなことにならないでしょうが、日頃から製品の品質、歩留まりを向上させ、そこでできた隙間に試作品を流動させ、次のお客様の仕事も繋(つな)いでおく努力をしたいものです。

 品質が悪いと、やり直し、手直し、不良分の補填投入などで設備に余裕がなくなったり、時間や原材料のロスなどで忙しくなります。儲からない仕事をこなすことに追われ、忙しくなっているのかも知れません。しかしこれでは、本当の生産活動にはならない上、結果的にお客様を逃がしてしまうのです。

4.注文に変化がなければ、その分作業者を減らせる

 歩留まり向上分は投入数が減らせるので、少人数でも従来通りの生産量が得られます。人が減れば固定費が減るなどのメリットも出てきますので、その分を作業者の教育などに活用できます。

5.歩留まりが向上すると不良が減少し、不良の分析、解析をする要員が減らせる

 歩留まり向上などの活動をしないと、次から次へと品質問題が発生...

クリーン化

 

♦ クリーン化で品質と歩留まり向上、利益もアップ!

 クリーン化活動を進める上で、その成果や効果は欲しいものです。それが具体的に数字などで見えると、活動も継続していきます。今回は、クリーン化の効果について解説します。

 

 ある半導体製造の前工程(クリーンルーム工程)事例からクリーン化の成果、効果について考えてみます。

 例えばその工場で仮に、月25億円の売り上げがあったとします(これはイメージしやすい数字にしました。現在ではこんな数字ではないでしょう)。この時歩留まりが1%上がると月に2,500万円の純利益が得られます。しかもあまりお金をかけないでできることが沢山あります。

 会社が社員を集めて、或(ある)いは上司が部下に対し「品質向上に努めましょう。すると利益が増えます」と言うだけでは、社員は“聞いただけ、人ごと、よそ事”で終わってしまうかも知れません。

 そこで、これらで得られた効果(利益)をどのように使うか考えてみると良いと思います。つまり、自社や自分の問題として捉えてみることです。

 

 具体的な項目ごとに解説します。

1. 注文が多い場合、稼ぎ続ければ余分に儲(もう)かることになります

2. 注文数に変化がない場合、その利益相当分の原料投入が減らせる

 原料投入を減らしても生産量は確保できるわけです。それに付随して薬品、エネルギー(設備の稼働などの電気、ガスなど)、人工数も削減できます。この項以降は多少ですが理論、理屈の部分もあります。

3. 注文数に変化がなければ、その歩留まり向上分を次の製品開発や試作に充てることができます

 これは、量産品と試作品を同じラインで製造する場合です。規模の大きな会社では、量産と試作のラインは別々に保有している場合もありますが、規模が小さいところでは、試作のために別ラインを持つ余裕はないと思います。

 このようなラインで、実際にあった事例を紹介します。

 開発担当が試作品の投入を依頼しようとしたところ、現場責任者から「この忙しい時に試作品なんか流動できるか」と言って断わられてしまいました。現場が強かった例です。ところが、流動していた製品のピークが過ぎ、段々ラインに余裕が出て来ました。

 そこで、現場責任者が「次に作る製品はないのか」と聞いたのですが、開発担当は「あの時断られてしまって次に投入する製品は準備できていません」との回答…。

 製品開発と量産流動は生産管理が統括するので、このようなことにならないでしょうが、日頃から製品の品質、歩留まりを向上させ、そこでできた隙間に試作品を流動させ、次のお客様の仕事も繋(つな)いでおく努力をしたいものです。

 品質が悪いと、やり直し、手直し、不良分の補填投入などで設備に余裕がなくなったり、時間や原材料のロスなどで忙しくなります。儲からない仕事をこなすことに追われ、忙しくなっているのかも知れません。しかしこれでは、本当の生産活動にはならない上、結果的にお客様を逃がしてしまうのです。

4.注文に変化がなければ、その分作業者を減らせる

 歩留まり向上分は投入数が減らせるので、少人数でも従来通りの生産量が得られます。人が減れば固定費が減るなどのメリットも出てきますので、その分を作業者の教育などに活用できます。

5.歩留まりが向上すると不良が減少し、不良の分析、解析をする要員が減らせる

 歩留まり向上などの活動をしないと、次から次へと品質問題が発生し、そのため分析や解析作業が多忙になります。

  現場からは「早く分析してください。結果が出ないと本体が流動できないのです」と突かれます。工程中のあちこちに分析結果待ちの在庫がたまり、ラインの流動を阻害します。そのような状況下、急いで分析をしたら「なんだこれは毎日清掃をきちんとしていれば、このような問題は起きないよ」ということになるかも知れません。

 日頃から現場をきちんと清掃をすることで、このような問題が少なくなれば分析、解析の仕事が減り、そのための人や仕事を減らすことができます。分析、解析担当は、その余力でもっとレベルの高い分析、解析に取り組むことができます。

 次回はクリーン化の効果を考える(第2回)です。

◆関連解説『環境マネジメント』

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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