シリコーンフォーム/スポンジの成形方法と特徴(その2)

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 前回のその1に続いて解説を続けます。

5、エマルジョンを利用する方法

 シリコーンスポンジを得る手段として一般に有機発泡剤が用いられていますが、有機発泡剤は環境面に与える影響が懸念されます。エマルジョンを利用してシリコーンスポンジを得る方法は、有機発泡剤を用いないため環境に優しく、安全性のある方法として提案されたものです。この方法は、液状シリコーンと水を乳化してW/O型エマルジョンを作り、成形・硬化後に水と空気を置換して気泡を形成し、多孔質シリコーンを得る方法です。図4にエマルジョンによるシリコーンスポンジの成形プロセスを示します。

シリコーンフォーム

図4.エマルジョンを利用したシリコーンスポンジの成形プロセス

 この方法で得られたスポンジは、微細で球状の気泡を持ち、繰り返し圧縮されても気泡が破壊しないためへたりにくいという特徴があります。このスポンジは、ミニセルⓇという名称が付けられ、オフィスに用いられるレーザー複合機の定着部に採用されています。今後、他の分野への用途展開が期待されます。(図5)

シリコーンフォーム

6、バルーン材をシリコーンゴム中に充填する方法

 樹脂バルーン、ガラスバルーンなどの中空体を液状シリコーン中に分散させ、疑似スポンジを作る方法です。断熱性や低熱容量、低比重などスポンジの特徴を得ることが可能です。厳密にはスポンジではないので、クッション性や気泡中に他の物質を取り込む機能は保持していません。

7、シリコーンコンパウンドに練り込んだ溶出物を溶解させる方法

 シリコーンコンパウンドに食塩などの塩類を練り込んでおき、成型硬化後に水などで洗って塩類を溶出させ空隙を得る方法です。ウレタンフォームなど一部の高分子材料のスポンジ作成に用いられていますが、シリコーンでもスポンジを得ることが可能です。気泡の構造は基本的に連続気泡になります。

8、超臨界状態を利用した物理発泡スポンジ

 この方法は、二酸化炭素などの気体に圧力、温度をかけて超臨界状態にしてシリコーンコンパウンド中に溶解させ、その後減圧することで気泡を形成する方法です。熱可塑性樹脂を中心に用いられている方法ですが、シリコーンでも発泡体を得ることが可能です。図6にこの方法で作成したシリコーンスポンジの構造を示しました。二酸化炭素の溶解条件によって気泡の状態が大きく変化します。図6では、左右の写真で気泡径が大きく異なりますが、これは二酸化酸素の溶解条件が異なっているためです。この方法は、条件により微細な気泡を得ることが可能ですが、生産性や発泡の安定性などに課題があり、実用化はされていないようです。

シリコーンフォーム

9、さまざまな構造・性質のシリコーンスポンジ

 シリコーンスポンジの成形方法と特...

 

 前回のその1に続いて解説を続けます。

5、エマルジョンを利用する方法

 シリコーンスポンジを得る手段として一般に有機発泡剤が用いられていますが、有機発泡剤は環境面に与える影響が懸念されます。エマルジョンを利用してシリコーンスポンジを得る方法は、有機発泡剤を用いないため環境に優しく、安全性のある方法として提案されたものです。この方法は、液状シリコーンと水を乳化してW/O型エマルジョンを作り、成形・硬化後に水と空気を置換して気泡を形成し、多孔質シリコーンを得る方法です。図4にエマルジョンによるシリコーンスポンジの成形プロセスを示します。

シリコーンフォーム

図4.エマルジョンを利用したシリコーンスポンジの成形プロセス

 この方法で得られたスポンジは、微細で球状の気泡を持ち、繰り返し圧縮されても気泡が破壊しないためへたりにくいという特徴があります。このスポンジは、ミニセルⓇという名称が付けられ、オフィスに用いられるレーザー複合機の定着部に採用されています。今後、他の分野への用途展開が期待されます。(図5)

シリコーンフォーム

6、バルーン材をシリコーンゴム中に充填する方法

 樹脂バルーン、ガラスバルーンなどの中空体を液状シリコーン中に分散させ、疑似スポンジを作る方法です。断熱性や低熱容量、低比重などスポンジの特徴を得ることが可能です。厳密にはスポンジではないので、クッション性や気泡中に他の物質を取り込む機能は保持していません。

7、シリコーンコンパウンドに練り込んだ溶出物を溶解させる方法

 シリコーンコンパウンドに食塩などの塩類を練り込んでおき、成型硬化後に水などで洗って塩類を溶出させ空隙を得る方法です。ウレタンフォームなど一部の高分子材料のスポンジ作成に用いられていますが、シリコーンでもスポンジを得ることが可能です。気泡の構造は基本的に連続気泡になります。

8、超臨界状態を利用した物理発泡スポンジ

 この方法は、二酸化炭素などの気体に圧力、温度をかけて超臨界状態にしてシリコーンコンパウンド中に溶解させ、その後減圧することで気泡を形成する方法です。熱可塑性樹脂を中心に用いられている方法ですが、シリコーンでも発泡体を得ることが可能です。図6にこの方法で作成したシリコーンスポンジの構造を示しました。二酸化炭素の溶解条件によって気泡の状態が大きく変化します。図6では、左右の写真で気泡径が大きく異なりますが、これは二酸化酸素の溶解条件が異なっているためです。この方法は、条件により微細な気泡を得ることが可能ですが、生産性や発泡の安定性などに課題があり、実用化はされていないようです。

シリコーンフォーム

9、さまざまな構造・性質のシリコーンスポンジ

 シリコーンスポンジの成形方法と特徴について説明しました。一口にシリコーンスポンジ(フォーム)といっても、製造方法や加工条件によってさまざまな構造、性質のものができることがご理解いただけたと思います。本文がシリコーンスポンジを使用される際の一助となれば幸いです。

【参考文献】
・スリーボンド・テクニカルニュース35(1991)
・平山中“カラー電子写真装置の省エネ化と定着部品”,NOK TECHNICAL REPORT, 23(2011)
・石川日東株式会社, シリコーンスポンジゴムローラの製造方法及びシリコーンゴムスポンジゴムローラ, 特開2005-153516(2005)

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この記事の著者

平山 中

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