経営戦略とIT戦略の関係性とは

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事業戦略

 IT戦略では経営戦略のサブセット(※1)の一つとみなす意見(営業戦略、人事戦略等と同等)、サブセットではあるが「別格」のサブセット(他のサブセットに影響を及ぼす大きなカテゴリ)、経営戦略を策定する上でも経営戦略の中核的存在として一体的に位置づけられるなど、色々な考え方があります。

1. 経営戦略

 戦略については、寡占市場で競争する大手企業とスタートアップ企業とでは捉え方に差があるでしょうし、どれが正解ということはありませんが成長戦略策定には技術革新やイノベーションが不可欠であり、IT技術として最近ではAI、ビッグデータ、IoT等が大きなイノベーションのイネーブラー(※2)となっていることは確かです。

 元々、経営理念を実現するための戦略を経営戦略、IT戦略、営業戦略等というように分ける必要もないのかもしれません。たまたま組織の構造に合わせて組織ごとの戦略に名前をつけているに過ぎないケースも多々あるでしょう。むしろ、将来に渡って成長を加速させるためには組織や階層の垣根を越えた視点から目標と、それを実現させるための道筋を作成し、様々な角度から実行結果をチェックし日々改善に取り組む方が現代のスピード感には合っていると思います。

 その為に一番重要になるのは情報であり、その使い方です。現在では、外部環境と内部資源をより正確に知るために存在しているデータ量は膨大です。しかし、入手できる(存在している)データに比べて効果的に使用している量は極めて少ないのです。大量のデータが日々作り出されているが生かされずに蓄積されていくだけです。その結果、欲しい情報が他のデータに埋もれていき、どこにどのような情報があるか分からなくなります。

2. IT戦略と情報

 情報をうまく使うことで様々な効用があります。

 その一つとしてビッグデータを上手く使うことにより今まで気がつかなかった事象が見えてきます。例えば寡占市場で競争する大手企業の場合、経営戦略は競合の戦略に大きく影響され、コモディティ商品であれば、出荷数量とその価格が重要となると考えられていますが現在では、そうでない要因もあることが分ったりします。

 一つの例として、私が依頼されたデータ解析があります。ある業界で売上1位だった商品のパッケージを改良して商品容量を減らしたら売上が下がったという企業から「容量減分の値下げをしなかったことが商品売上に影響していると思うが、消費者はどのような感情変化で買わなくなったか知りたい」との依頼を受けました。

 ネット上のクチコミを調べた結果「価格のことよりも実質的値下げをハッキリと伝えないメーカーへの不信感(潔くない)というイメージが購買意欲を低下させている」という消費者がかなり多くいることが分かりました。誰でも知っているような超一流企業でも先入観からみえなくなっていることについて情報を整理整頓して解析していくと“気づき”としてみえてくるわけです。

 このような気づきは企業組織全体で共有し、様々な戦略に生かしていくべきで、各組織の取り組みの状況を正確にフィードバックできる情報活用の方法を組み込み、戦略を焼き直していくべきなのです。

 情報をうまく使えば、更にターゲッ...

事業戦略

 IT戦略では経営戦略のサブセット(※1)の一つとみなす意見(営業戦略、人事戦略等と同等)、サブセットではあるが「別格」のサブセット(他のサブセットに影響を及ぼす大きなカテゴリ)、経営戦略を策定する上でも経営戦略の中核的存在として一体的に位置づけられるなど、色々な考え方があります。

1. 経営戦略

 戦略については、寡占市場で競争する大手企業とスタートアップ企業とでは捉え方に差があるでしょうし、どれが正解ということはありませんが成長戦略策定には技術革新やイノベーションが不可欠であり、IT技術として最近ではAI、ビッグデータ、IoT等が大きなイノベーションのイネーブラー(※2)となっていることは確かです。

 元々、経営理念を実現するための戦略を経営戦略、IT戦略、営業戦略等というように分ける必要もないのかもしれません。たまたま組織の構造に合わせて組織ごとの戦略に名前をつけているに過ぎないケースも多々あるでしょう。むしろ、将来に渡って成長を加速させるためには組織や階層の垣根を越えた視点から目標と、それを実現させるための道筋を作成し、様々な角度から実行結果をチェックし日々改善に取り組む方が現代のスピード感には合っていると思います。

 その為に一番重要になるのは情報であり、その使い方です。現在では、外部環境と内部資源をより正確に知るために存在しているデータ量は膨大です。しかし、入手できる(存在している)データに比べて効果的に使用している量は極めて少ないのです。大量のデータが日々作り出されているが生かされずに蓄積されていくだけです。その結果、欲しい情報が他のデータに埋もれていき、どこにどのような情報があるか分からなくなります。

2. IT戦略と情報

 情報をうまく使うことで様々な効用があります。

 その一つとしてビッグデータを上手く使うことにより今まで気がつかなかった事象が見えてきます。例えば寡占市場で競争する大手企業の場合、経営戦略は競合の戦略に大きく影響され、コモディティ商品であれば、出荷数量とその価格が重要となると考えられていますが現在では、そうでない要因もあることが分ったりします。

 一つの例として、私が依頼されたデータ解析があります。ある業界で売上1位だった商品のパッケージを改良して商品容量を減らしたら売上が下がったという企業から「容量減分の値下げをしなかったことが商品売上に影響していると思うが、消費者はどのような感情変化で買わなくなったか知りたい」との依頼を受けました。

 ネット上のクチコミを調べた結果「価格のことよりも実質的値下げをハッキリと伝えないメーカーへの不信感(潔くない)というイメージが購買意欲を低下させている」という消費者がかなり多くいることが分かりました。誰でも知っているような超一流企業でも先入観からみえなくなっていることについて情報を整理整頓して解析していくと“気づき”としてみえてくるわけです。

 このような気づきは企業組織全体で共有し、様々な戦略に生かしていくべきで、各組織の取り組みの状況を正確にフィードバックできる情報活用の方法を組み込み、戦略を焼き直していくべきなのです。

 情報をうまく使えば、更にターゲット市場の新しいニーズやウオンツを発見したり、ベンチマーク企業がなぜ市場から大きな評価を得ているかを知ることもできます。別の例として、今まで手をつけていなかった人事情報の解析を行えばその企業の新しい強み・弱み、それをもとに将来にわたっての育成方針もみえてきます。

 戦略が「組織が将来にわたって何らかの目的を達成するための道筋」とするなら、ゴールに到達するため暗く曲がりくねったその道程を照らし進度をチェックするには、事実をもとにした情報の解析が不可欠となり、そこに企業のIT戦略が必要になります。

※1「サブセット」・全体に対する一部分のこと。部分集合。
※2「イネーブラー」・支え手。コア技術やデバイスを持ち、新たな社会システムを構築する上で不可欠な企業。

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この記事の著者

木村 礼壮

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